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小説「よりそう~手帳と万年筆のちょっといいはなし~」第80話

マスターからのご褒美なのか、カウンターの中に入れてもらえて、コーヒーも自分で入れさせてもらった。マスターは簡単に入れていると思ったのだが、コーヒー一杯入れるために気を付けないポイントがたくさんあり、マスターの動きは効率的な作業段取りの上に成り立っていることが分かった。

「あとは時間までゆっくりしていってくれ」

そういって、いつものトーストを持ってきてくれた。

まだ時間は七時前。お客さんはまだ来ていない。

「それでは」と、いつもの席にカップとトーストを運び、手帳を開いた。

「あ、今日全然、お金払ってない、おいくらでしょう。」ちょっと遠くから声をかける。

「今日は朝一のサービスだ。明後日からはちゃんともらうよ」

「お言葉にあまえさせてもらいます。いただきます。やっぱりおいしい。」

最後の方はもうひとりごと。マスターもいつもの作業に戻ったみたいだ。


手帳にはいつものように

『今日絶対にしたいことは』 と、少し赤みが買った文字で書いてある。

いつものペンと手帳からのメッセージ。昨日はいろいろ考えて夜も手帳を開いていなかったので、昨日のメモも書きつつ

『昨日はありがとう。ナイスアドバイス』とお礼のメッセージを添える。

今日絶対やりたいことには、、『今日は、隆史さんの最高の手帳を買う』 と書いた。

そのあと、本を読んだりして9時過ぎまで(2時間以上もいた。。。)ゆっくりさせてもらい、その間徐々にお客さんが入ってきたり出ていったり。

いい時間になったので、「ごちそうさまでした。」とカップとお皿を片付け、

「おう、ありがとな。」いつも通りの挨拶で、カフェ「キムン」を出た。

電車で移動して、有楽町駅で、隆史さんをまつ。昨日のスーツとは違い私服に小さいスーツケースにビジネスバッグをもってやってきた。

「ありがとうございます。今日はこのまま、まっすぐ空港に向かう感じですか?」

「えー、そうですね。一応、夜の18時くらいの一番込みそうな時間に変更はしたんですけど、時間とか変更可能なチケットなので、適当にしようかなと思っています。」

「なるほどです。もうすぐ結城さんのお店がオープンするので早速行ってみましょう。」

「雲川さん、改めて今日はありがとうございます。」

「え、あ、お、いや、こちらこそ強引に誘っちゃってごめんなさい。でも、きっと楽しいので、楽しみましょう」

動揺して何を言っているかわからない。途中、伽藍堂の前を通るが全く人の気配はない。今度一度お礼に行かなくちゃいけない

開店後5分くらいたったタイミングでお店についた。

エスカレーターでシステム手帳売り場へ向かう。

「いらっしゃいませ。」いつもの見慣れた結城さんがそこにいた。


また、過去の内容を取りまとめ加筆修正したフルバージョンを作りました。ご興味があればちょっと覗いてみてください。(大分本編と開いてしまったけど、不思議な手帳と万年筆の出会いがわかります)


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