見出し画像

小説「よりそう~手帳と万年筆のちょっといいはなし~」第71話

始まったカンファレンス。でも全く頭に入ってこなかった。ちゃんと聞いててもわからなかったんだけど。。

会社の先輩に会ってしまって席がなくなりそうなカンファレンスが始まる直時、先ほどランチの時に席を譲った人に誘われて隣に座った。座る時に交換した名刺、それが俺の頭を独占してしまったから。

その名刺には、

若林隆史

と書いてあった。マスターの別れたお子さんの名前苗字は元奥様のと一緒だった。

あれ、この人、一緒に来ていた人もたかしさんってよんでいたはず。じぶんもたかしなのに?
わざとだったのか?

若林さんはまじめにカンファレンスの話を聞いている。メモを取る手には、さっき言っていた緑縞のペリカンのボールペンを持っている。

あ、もしかして、このペン、マスターからのプレゼントなんじゃ。

やっぱりこのひとなんじゃないのか、俺たちが探していたのは。だんだんと自信が湧いてくるが。

なんか色々考えていたらカンファレンスは半分以上が終わっている。結城さんに連絡もしていない。

さてここからどうしようか。やっぱり、早く連絡しないと。

「たぶん、発見。」それだけをLINEで結城さんに送る。

さて、これが終わったら、隆史さん説明しないとな。全然違う人の可能性もないわけではないし。

さて、と手帳を開く

「Go for it」

いつものように不思議な赤字で書いてある。英語で、頑張れって意味だったっけ?

英語で書いてあるの始めただな。もともとこのペン使ってたのはドイツの人って言ってたけど、なんか普通の『がんばれ』よりやる気が出る気がする。

Danke. ダンケ。ドイツ語のありがとうってこうだったような。大学時代に取っていたはずのドイツ語の知識を呼び戻して答えた。

いつも、気持ちが弱くなりそうなときに、よりそってくれる手帳と万年筆。欲しい言葉を投げかけてくれる。

さぁ、Go for itであたってくだけろだ。

「それでは質問がなければこれで終了します。ご静聴ありがとうございました。」
スピーカーの締めの言葉に、観客の拍手が起こり会が終わる。聴衆の人たちも持ち物をカバンにしまったり席を立ち始めた。

「あの、若林さん。少しお時間ありませんか」
相手が女性なら間違いなくナンパに間違われるだろう。だけど、ゴーフォーイットで直接質問した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。すこしでも気に入っていただけたら、続編を書くモチベーションになりますので、スキをお願いします。

また、過去の内容を取りまとめ加筆修正したフルバージョンを作りました。ご興味があればちょっと覗いてみてください。(大分本編と開いてしまったけど)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?