読書感想文~ようこそ紅葉坂萬年堂~
noteで実施されている秋の読書感想文企画に便乗して、最近読んで面白かった本を紹介します。
ご紹介したい本はこちら、
『ようこそ紅葉坂萬年堂』 神尾あるみさん 著 です。
どんな本?
紅葉の美しい坂の途中にある筆記具を専門に扱う「紅葉坂萬年堂」の店主、宗方志貴(むなかたしき)と新スタッフの綾瀬葵(あやせあおい)とお客さんの万年筆を通した交流と成長が描かれています。
「もしあなたが今の生活を変えたいとお思いなら、この万年筆はきっとあなたのお役にたちますよ」
一目ぼれした万年筆(表紙の一番中心に来ているペンで、プラチナ社のセンチュリー金魚、分かる人はわかってくれる有名な軸。ちなみに万年筆好きは万年筆のことを軸と呼びます。)に、宗方の上の発言で万年筆を購入するばかりか万年筆店のスタッフになった葵さんの万年筆沼にはまっていくストーリーです。もちろん、人間同士の感情的なストーリーも。
ここがおすすめ
万年筆を中心ストーリーは展開されていきますが、登場人物たちの物語としてのストーリーも展開していきます。こっちは基本的にはべタな進行。ただ、このベタなところが、より万年筆のほうに視点を集中させてくれる良いバランスになっているのではと思わせてくれる内容になっています。
小説の中に出てくる万年筆のチョイスも面白さの一つです。各メーカーの軸の特徴を作者なりの解釈で分類しています。
自分としては日本人の字を研究して生まれたという国産メーカーの万年筆は日本人らしいまじめさがあり、インクで書くことを楽しませてくれる海外の少し太めの万年筆は欧米のおおらかさがあるような感覚で、可能であれば、どちらのよさも楽しんでもらいたいと思っています。
こんな人に読んでほしい。
万年筆に興味があるなぁという人はさらっといろいろなペンの特徴を味わいつつ、万年筆の構造や歴史を知ることができる小説です。万年筆好きの人は、作者の万年筆好きが分かるペンのチョイスを味わいながら、次に買う軸を探すとよいのではと思います。読んだ後に筆記具店に行きたくなること間違いなしの一冊になっています。
自分の経験からも、万年筆を使って字を書くというのは一種のリラックス効果があると感じています。万年筆の文字は力を入れずに気持ちよく書き続けられる気持ちよさだけでなく、微妙なインクの濃淡、力の入れ具合にいよる太さの変化など、筆で文字を書くときに近い特徴が出せることが魅力だと思っています。そのあたりの良さを物語を通してちょいちょいと説明をしてくれます。
また、万年筆を始めたい人が気にするメンテナンスの大変さ、手が汚れたりすることの嫌悪感に対する作者なりの回答が書かれていたりと、万年筆に詳しくなく、興味を持っている人でも十分に楽しむことができる本です。
コロナ時代になりマインドフルネスや瞑想みたいなものがまた注目されるようになったのですが、ジャーナリングという書く瞑想と呼ばれる方法もあります。その際にも、ボールペンじゃなく万年筆で書くことでより自分の内面に気づきやすくなっている感じがしています。(日記を書くときなんかもおすすめ。)
自分は、宗方が使用しているファーバーカステルの伯爵シリーズがいつか欲しいなぁと思っている一品です。(野望としては、ドイツに旅行してドイツで買いたい。早く旅行できる時代が戻ってきてほしい。)
続編への期待
この本の終わりはその先があるように終わっています。ぜひ続編も読みたいと思っているので、作者の神尾さんには頑張っていただきたいと思います。
そんな中で、万年筆好きの私の期待としては、紙との相性についてもぜひ話に入れてほしいなぁと思うところ。
同じ万年筆でも紙によって書く時の印象が非常に変わります。自分のオススメはトモエリバーという紙。(まさに神)。ペンがスーと流れるように書き出され、薄いにもかかわらずペンが裏抜けすることもありません。ほぼ日手帳で使われて有名になった印象のあるトモエリバーですが、私が愛用しているシステム手帳のダヴィンチシリーズなどでもよいリフィルが販売されています。
また、自分愛用のペリカンは2回も壊れた状態で出てきてしまうあたりは、やや残念ではあったり、万年筆の王様と私が思っているモンブランなどもできていないので、そのあたりは次回以降活躍することを期待しています。
こちらもぜひ今後の、二人の展開に付け加わるといいなぁという感想でした。
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