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作品集

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ネット物書き・御子柴流歌が書いたモノを集めてみました。
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2020年5月の記事一覧

Last Letter, Love Letter 【#短篇小説】

"Last Letter, Love Letter" 「それじゃあね」  そう言って彼女は涙も拭かずに背を向け、少しだけ高いヒールを鳴らしながら駆けていった。  果たして、封筒ひとつを手に持ったまま「うん」と頷いた僕は、彼女の視線に収まっていたのだろうか。きっと、ピントも合っていないだろうし、手ぶれだってひどいはずだ。もう彼女の中には、僕を収めておけるくらいの隙間なんてありやしないのだ。  もう一度だけでも話をしよう——。  そんな考えは、結局甘いのかもしれない。  せ

季語: 遠雷

ま、短歌は季語不要ですけど。     遠雷に おびえながらの テレワーク  狭い机を 黒く染めゆく あとがき オフィス街だとその手の設備がしっかりしてますけど、一般住宅街だとねえ……。  以前自宅近くの落雷の影響でいくつか問題発生したことがあるので、本当にこういうときは戦々恐々です。  ……ただでさえ金欠だし、この前壊れた冷蔵庫とか買い換えたばかりなので、このタイミングでPC壊れられたら、もう。  私、マジで、終わりますw

くちづけ27時 【超短篇】

『くちづけ27時』  夜目覚めの星も絶え果てた  アタマがムダに冴えてくる  月染めの雲が流れる様を見る  思い出すのは  思い出したくないことだらけ  カンナの花に くちづけを  だから言ったんだなんて  結果論なんか持ち出すな  達観したようなこと言えば  誤魔化せるなんて思わないで  イヤだと言っても受け容れて  だからその先にあるはずの  あの夏に往く あとがき 超短篇っていうか、詩っていうか。  なんかよくわかりません。  書いてる本人の意思とは別次元

すばらしきスパイラル 【超短篇】

『すばらしきスパイラル』  歯磨き粉と洗顔フォームを間違えた朝のこと  ふと、昨日の自分を殺そうと思った  毎日繰り返されるルーティーンめいた日常を  呼吸でもするみたいに壊された気分になった    特別なことがあるわけじゃない  特別なものに会うわけじゃない  ただ不意に横から殴られて、平気でいられるほどに  ニンゲンができちゃいないのだ  だからといって、そんなことが気安く出来るわけもなく  明日も夢から飛び降りる       あとがき 歯磨

特効薬 〜 好きな人に『好きだ』と言わずに『好きだ』と伝える短篇集〜

『特効薬』  あなたに会うと、どんなにイヤな思いも  消えて無くなると思ってたけど。  たったひとつだけ、  あなたにも治せないモノがあるみたい。    ――切ない気持ちだけは治してくれないのですね。         あとがき 会えば会っただけ、離れたときに切ないモノです。  密を避けなければいけないご時世ですが、がんばりすぎない程度にがんばりましょうね。

裏路地エスケープ 〜超短篇〜

『裏路地エスケープ』  雨上がりの交差点を右に折れると、大通り沿いとはまた違った風景。  ヒトの陰もクルマの通りも、別世界に入ったように居なくなる。  自分の足音だけが僅かに響いている。  見慣れているとはいえ、不思議な光景だった。 「ん?」  建物の影が途切れたところに、何かがある。  動いている。  最初は何かゴミでも捨てられているのかと思ったが、違う。 「猫か」  誰も来ないのをいいことに、往来の真ん真ん中を、ブラウンの猫が塞いでいた。  寝ている