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スパイシーと経済力とは反比例?

インドといえば激辛料理、そう思っている人は多いだろう。実際その通り、大体の食べ物は辛い。カレーはもちろん、スープも揚げ物も、ハンバーガーやチップスも、だいたい辛い。

レストランの名前に採用しちゃうくらい、チリが大好きなインド人。インド人にとって辛さが必要不可欠であることは、ほぼ間違いない。

だけど気がついたことがある。

経済力の豊かな人ほど、辛さを必要としていないのではないか?【仮説】


というのも、先日息子が入院した富裕層向けの立派な病院で出た食事は、まったくもって辛味はなかった。グラタン、サンドイッチ、焼きそばにチャーハン。日本で食べる食事と変わらない。

ブリティッシュスクールの(裕福なインド人の)お友達はよく和食のお店に寿司を食べにに行くらしいし、パスタ好きな子も多い。むしろ長男の仲良しアレフ君は、辛いものは食べられないという。インド人なのに!8歳なのに!

我が家で働くお手伝いさんは、今は我が家のためにカレーの辛さを控えめにしてくれているが、ことあるごとにチリとスパイスをかけたがる。

「ちょっとだけちょっとだけ!」といってポテトにターメリックとコリアンダーをふりかけるし、マッカーナと呼ばれる子どもが好きなスナックを炒めて、とお願いすれば「ちょっとだけね」といってスパイスまみれにして、上の子達は結局食べない。(ちなみにレンチビはそれを美味しそうに食べる)

ハンバーグをお願いすると、半分は大人用にチリ入れていいよね?といってチリまみれのハンバーグが出来上がるし、我が家用の辛さ控えめカレーを食べるときはチリを生のままかじりながら食べる。ちなみにそのかわりというかなんというか、米はジョーダンかと思うくらい山盛り食べる。でも別に太っていない。

ちょっと話はそれるが、スパイスというか植物の効能を利用するのは食べ物だけではない。ある日台所で得体の知れない葉っぱが煮詰められていて、これなに?とお手伝いさんに聞くと、家の前に生えてたニームの木の葉っぱを煮詰めてマスタードオイルを作るのよ、頭皮にいいのよ〜と笑っていた。風邪には生姜とはちみつ、と同レベルで植物の効能を説くウンチクが山ほど披露される。


ここからは推測だ。

貧しい人はおかずにいろいろなものを食べられないから、ご飯をとにかく沢山食べるために辛さが必要なのではないだろうか。特に肉や魚は高級品だ。野菜を野菜のみでご飯のおかずに美味しく食べるにはスパイスや辛味が必要なのだ。

日本にいたときには野菜料理だけだと物足りないと思っていたけれど、インドでは私もベジタリアンになれるな、と思わせてくれたのは、スパイスの力だと思う。豆料理も野菜料理も、スパイスとチリが加わるとそれだけで十分満足できる美味しさ。基本的にインド料理ではスパイスの他に使う調味料は塩のみだ。それで十分に美味しい。というかそれが本来の美味しさなのかもしれない。日本人は案外化学調味料を沢山使っていることに気づかされた。

ベジの食べ物に多用されているのはスパイスの他に、ナッツ類だ。カシューナッツやピーナッツ、アーモンドなど、料理に応じてナッツを上手に組み合わせて満足度を高めてくれる。ナッツなら肉や魚と違って保存にも困らないし、保冷技術が十分でない場所でも利用しやすいのだろう。

外でご飯を食べようと思うと、だいたいベジかノンベジかと聞かれる。サモサもパスタもモモスも、全てメニューは2つに分かれていて、値段もノンベジのほうが少し高い。

植物をボディケアに使ったり体の不調に様々なオイルや植物を利用するのも、もしかすると高価な薬を買わなくても済むようにする知恵なのかもしれない。

真意のほどはわからないのだけれど、例えば先日長男長女が通う学校のインターナショナルデーでは、もちろんベジとノンベジがわかれていたけれど、肉料理は沢山出ていた。ハンバーガーに焼き鳥、海苔巻きに唐揚げ、豚グリルにポテト、スイーツも、各国の料理がずらりと並ぶ様子は壮観だった。

ひるがえってハルが通うタマンナでは、基本的にすべてノンベジでなければならない。クリスマス会で持ち寄りパーティーをしたときも、卵も使ってはいけないと言われた。

先日タマンナでハルの誕生日をお祝いする日、ケーキを用意してみんなにハルの誕生日であることをわかるようにしてね、と言われたので、パミさんにバナナケーキを作ってもらった。このバナナケーキは絶品で、我が家では何度も作ってもらっているお気に入りなのだ。みんな美味しく食べてくれるといいな、と思っていた。

ところがケーキを持っていって準備していると、「もちろんこれ、エッグレスよね?」と聞かれて、はっとした。そうだった!エッグ!ごめんなさい!これ、エッグイーン!!!

明らかに残念そうな顔をする先生。しょんぼりする私。「大丈夫大丈夫、私太ってるからケーキ食べなくていいの」と励ましてくれるOTの先生。なかなか難しいもんだ。

タマンナのクラスメイトのお母さんによると、インドではだいたい50%ぐらいの人が卵さえも食べないベジタリアンなのだとか。もちろん宗教上の理由だ。ミルクやヨーグルトなどの乳製品は全く問題ないらしい。だからインドにはエッグレスのお菓子が山程売っている。美味しそうだな、と買った焼き菓子も、よく見てみるとエッグレスであることはよくある。

教えてくれたお母さんも、旦那さんがジャイナ教で、ジャイナ教では卵もだけれど、にんにくと玉ねぎも食べてはいけないらしい。けれど、彼女はにんにくと玉ねぎなしには生きていけないから、それだけは食べるようになって!と結婚時の条件にして、今では食べてくれるらしい。

宗教上飲み食いしてはいけないものがある人は沢山いるけれど、それにどれくらい忠実に従うかはその人次第だ。

日本ではほとんど感じることのなかった「宗教の違い」。食文化はもちろん、政治や経済とも、それは深く深く結びついている。

そんな我が家の今夜のメニューはタンドリーチキン。昨日はテールスープを夫が仕込んだし、朝ごはんには目玉焼きを食べた。主に肉と魚中心に、豆も乳製品も、時々辛いものも、もちろんお出汁の効いた和食も、雑食日本人の代表格として今日も楽しくご飯を食べるのみである。




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