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Tamanaのスペシャルエデュケーション

先日の投稿で、OT ST PTなどの用語を使ったので、簡単に説明しようと思う。といっても私も専門家ではないので詳しくはわかっていないかもしれないのだが、今の私の理解で簡単にご紹介する。

OTは作業療法、または作業療法士さんのこと。ハルが日本にいたときは、療育園に来てくださる作業療法士さんに、遊びを通じた体操やコミュニケーションをを教わった。

STは言語聴覚療法、または言語聴覚士さんのこと。コミュニケーションやお話の練習をしたり、摂食訓練をしたりする。ハルはおしゃべりはできないので、主に摂食の訓練を受ける。

PTは理学療法または理学療法士さんのこと。体をほぐし、上手に動かす方法を教わったり、よりよい運動機能のために有効な体操を教わったりする。はるかが主に日本で受けていたリハビリは理学療法である。

TamanaにはOTもPTもいるが、ハルの担当のOTの先生はPTの役割も果たしてくれるようだ。ハルが通う早期教育の教室では、OT、ST、PTに加え、必要に応じてITの先生(iPadを使った授業をするらしい)がセッションを持ってくれたりもする。

Tamana早期支援教室のスケジュール

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ここでTamanaでのハルのスケジュールを紹介しよう。

月曜日 トレーニングデイ(OT、スペシャルエデュケーション、ST)

火曜日 お楽しみデイ(スポーツ、陶芸)

水曜日 トレーニグデイ(OT、スペシャルエデュケーション、ST)

木曜日 お楽しみデイ(スポーツ、お散歩)

金曜日 トレーニングデイ(OT、スペシャルエデュケーション、ST)

トレーニングの各セッションは30分ずつ。スペシャルデュケーションでは個々の子供に応じて必要な教育を1対1で行う。日本では1ヶ月に2回ほどリハビリを受けていたが、ここではなんと週3回もリハビリ訓練を受けることになる。贅沢なような、大変なような。とにかく訪問セラピストを探す必要はとりあえずなさそうだ。

ハルが通う早期教育の教室には担任の先生が2人いる。ジョティ先生とデンプル先生だ。こちらでは先生のことを女性なら「マム(ma'am)」男性なら「サー(sir)」という。いわゆる目上の人に対して使う言葉だと思っていたのだが、インドでは割といろんな場面で使われる。ハルの先生は、「ジョティ マム」と「デンプル マム」になる。ちなみに保育園の場合も先生は「マム」であり、先生とは別にお掃除や細々した仕事のお世話係みたいな人がいて、彼女たちは「ディディ」と呼ばれる。「ディディ」には「おねえさん」みたいな意味合いもあるようだ。

ハルに足りていないのは教育

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話がそれたが、ハルの1対1セッションを対応してくれるのはジョティ先生である。まずはハルがどれくらい見えているかの確認からだ。私は「太陽の下にいくと眩しそうにするし、夜は暗いところにいくと眠りやすいから、明るいと暗いはわかっていると思う」と伝え、それを聞いて彼女は白と黒の形が描かれたノートでハルの視覚を確認した。しばらく確認するとおもむろに口を開いた。

「彼女は全く見えていないわね。光や色を見せても意味がないわね。」

とはっきり言い切った。そうだよね、私もそう思ってた。生後10ヶ月くらいのとき既に、眼科の先生にはほぼまったく見えていないでしょうと言われたけれど、日本の盲学校では光や色を使った教育を行っていた。盲学校の先生は2歳から3歳の時点で光で視覚を刺激してあげると多少見えるようになったりすることがあると言っていた。

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ジョティ先生は続けた。

「ハルが持ってきた日本からの紹介状やレポートを全部読んだわ。リハビリや医学的サポートは十分にあったようだけれど、彼女に足りていないのは教育ね。もう3歳半だし、目が見えないハルに必要な教育をきちんとやっていきましょう。ハルに接するときは、すべてのものを触らせるの、いい?人も、色でさえも、全て。ママが話しかけるときも、“ハル、あなたのママよ”と言って顔や手を触らせるの。おもちゃを使うときは必ず形を触らせてあげてから、これはスティック、これはピアノ、これはボールと根気強く教えてあげるのよ。それから遊ぶの。色もそうよ、目は見えないけれど、これは緑、これは赤、これは黄色、触らせてあげるのよ、色には温度があるわ。食べ物を食べるときもそうよ、においをかがせてあげることはもちろんだけれど、これがあなたが食べている食べ物よ、と言って手で触らせてあげるのよ。どんなものを食べているか理解するようになるわ。もちろんゆっくりやっていきましょう。彼女がこの場所に慣れて、ここが楽しい場所だと理解してから、ゆっくり始めましょう。」

私は黙ってうなずきながら聞いた。ハルに足りていないのは教育、それは本当だと思った。そして先生が言っていることはとてもよく理解できた。目が見えないハルが少しずつでもコミュニケーションができるようになるためには、周りにいる私達がハルに教えていかなくてはいけないということ。

愛されるハル

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ジョティ先生はゆっくりハルにキスをして、自分の顔を触らせ、そして別の脳性麻痺の女の子のために作ったといういろいろな素材が貼られたノートで感触の違いをハルに教えたり、音の出るおもちゃを使ったりして、ハルの反応を見た。

「見て!ハルはこの音が嫌なのかしら、この音がすると目をパチパチするわよね?ほら!おもちゃを楽しんでいるわ。」

それからゆっくりとハルの両足を触り、曲げ伸ばしをして、ハルの首の起こす様子を見守り、そして最後に言った。

「She will stand, definitely...(ハルはきっと立てるようになるわ)」

ハルの首を起こす意欲、ハルの足の曲げ伸ばしや力を確認してそう思うのだと、ジョティ先生は言った。実際にハルがどうなるのかはわからないけれど、ここでもまた、ハルを愛してくれる人を見つけた気がした。

少しずつ始めましょう、少しずつ。食べ物も、おもちゃも、人も、色も、いろんなものをお母さんや周りの人たちが教えていくのよ。ハルのまばたきを見た?はるの体を動かす力強さも。ハルは表現したいのよ。大丈夫。きっとできるようになるわ。

私には4人の子供がいる。どの子も愛おしい。ハルにどれくらい力を注げるか正直わからないけれど、今は、ハルにたくさんのことを教えてあげるべきときなのかもしれない。

(つづく)


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