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はるるん、インドで薬を探す

さて、小児神経科医の受診で、ハルの薬を処方してもらい、処方に基づいて薬を買うことにした。

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いざ薬をゲットしようと、処方箋を持って近所の薬局に問い合わせた。すると、処方箋に書かれた6種類の薬をみて、ちょっとまって、確認して電話するから、と言われた。あるのかな?と思って待っていたが待てども待てども連絡がない。3日後にもう一度連絡すると、またちょっとまって、と言われた。多分スタッフ同士で情報共有ができていないのだろう、そして薬もないのだろう、その後連絡がくることはなく、結局その薬局で買うのは諦めた。

1週間後の土曜日、いよいよどこで薬をゲットしようか、と夫と相談し、詳しい人からの情報やインド人からのアドバイスをお守りに、薬探し行脚に出た。貴重なお休みに、子どもたちをメイドさんにお願いして、薬探しのデートである。

まずは最寄りの別の薬局に、たのもーっと突撃。丁寧にコンピューターで検索をかけてくれるも、1種類はあるけれど、他の5種類はコンピューター上にすら上がってこない、という答えだった。別のもっと大きな薬局をあたってみてくれ、と。これは想定内。まだ大丈夫。

次にあたったのは我が家の近所でおそらく最も大きいプリマスという私立の総合病院の中の薬局だ。土曜日といえど沢山の人が群がる病院の待合を通りぬけて、期待を込めて処方箋を見せるが、やはり答えはノーだった。こんなに大きな病院でもないのか、と、ここで不安がよぎる。

ねえ、じゃあどこに行ったらあるの?とプリマスの薬局のお姉さんに食い下がると、何かの紙切れにメモを書いて渡してくれた。

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どうやらエイムス(AIIMS;All India Institute of Medical Sience)という大きな国立病院の前が大規模な薬局街になっているらしく、そこにいってみろ、ということらしい。

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小雨が当たる中、車を走らせること15分。エイムスの前の薬局街に降り立つが、あまりの混沌とした様子に夫婦でたじろぐ。その様子は薬局と言うよりも、まるでたたき売りの市場のようだった。本当にここにあるのだろうか?

さて、沢山ある薬局のどこに聞けばいいのか。

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人だかりの隙間にカウンターが見える場所を選んで、処方箋を渡し、薬の有無を尋ねる。どうみてもタバコ屋にしか見えないが、薬のことはわかるらしい、ふんふんとばかりに処方箋を読む。が、しばらくして薬屋のおっちゃん、首を振って処方箋を突き返してきた。やっぱり。ここにもなかったのだ。

一体どこにいけば薬は手に入る?もはやインドでは薬は手に入らないんじゃないか・・・気持ちはほとんど諦めに入っていた。降り続ける小雨がまるで私たちの気持ちを代弁しているかのように、次第に私たちの気持ちも冷たくなっていった。

最後にマックスというもう一つ大きな私立病院の薬局に行ってみようとさらに車を20分走らせた。

渋滞を通り抜け、マックスにたどり着いて薬局のカウンターに処方箋を出す。期待半分、諦め半分。

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しかしやはりここでも、処方箋を見たお姉さん、首を振った。

「どこに行けば有ると思う?」とお姉さんに夫が食い下がる。「この病院の外の薬局街のほうが沢山薬があるわ」「本当に?」夫が訝しむが、お姉さんは自信たっぷりに頷いた。

最後の望みを託し、歩みを進めた。

エイムスの前の薬局街よりは多少整然として見える薬局街。いくつも連なる薬局の中から、ある程度建物がしっかりしていて在庫がありそうな薬局を選び、中に入る。

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きっとここでもないんだろうな、と思いながらキャップをかぶったカジュアルなお兄さんに処方箋を渡す。しばらくすると、ヒンディー語で別のお兄さんになにか指示を出しはじめた。「チザン、チザン、バリウム、ガバペンチン、」といった薬の名前が聞き取れて、おおっ?と思った。もしかしてもしかると、ある?

しばらくすると奥からガサゴソと、いくつかの薬を持ってきた。「あるけど何か?」といった様子だ。処方の分量とはだいぶ異なる分量のタブレットではあるけれど、なんと最後の最後にあったのだ。(ほぼ)全ての種類の薬が、この何でも無い薬局にあった!

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日本のように朝昼晩で分包してもらうとかそんなことはまったくもって不可能だけれど、まずは薬があったというだけで、もう満点だ。とりあえずのぶんを買って帰宅。

さあ、次は調剤だ。一日に必要分量の何倍もある大きなタブレットしかなかったり、必要な分量よりちょっとだけ欠けた分量のタブレットだったり、それぞれの薬の分量がまちまちである。

そこで夫が考えたのが、コーヒーミル。これにすべての薬を入れて、日数分でわけて、薬包紙で包んでいく。地道な作業である。ちなみに全部夫とその手下(息子)がやった。

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実は日本でずっと飲んでいた薬がなかったり多少の変更はあるけれど、ほぼほぼ手に入ったものでなんとかやっていくしか仕方ない。ここはインドで、ハルはインドに住んでいるのだから。この一見少しに思える変化がハルにとってどのくらい影響があるのかわからないけれど、様子を見ていくほかないのである。

今まで当たり前のように処方箋を持っていくと日数分きれいに分包してくれていた日本の薬局とはうってかわって、手に入れることすらままならないインドの薬事情に、あらためてため息が出た。そして同時に、薬がとても貴重でありがたいものなんだな、という気持ちにもなる。

綺麗に分包されて朝昼晩きちんと袋で準備をされている日本では、何をどのくらい飲んでいるかすら無自覚に渡されたものをただ飲んでいる、ということも起こりうるが、ここではきちんと必要な薬の種類と分量を把握して管理しなくてはならない。治療の手綱はすべて自分で、というのがインドの医療では基本のようだ。

ハルらこちらであるものでできる範囲でやっていくしかないし、その中でハルも一皮も二皮も剥けるのかもしれない。とりあえず今もまだ発作がない状況が続いているのだから、良いチャンスだと思って、インドの薬に慣れるのみである。

手綱を握って、今日もその行く先を見据える。

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(発作が止まってからというもの、とてもたくさんおしゃべりをして、じっとしていられないはるるん、ハチミツを使ったスピーチセラピーでスプーンを奪い取ってにこにこ)

つづく

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