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How are you?

How are you?というフレーズになかなか慣れることができない。

当たり前かもしれないが、知人や友人に会うとまず、「Hi, how are you?」と言われる。ヒンディー語では、「アープ カーセー ヘーン?」だ。

「How are you?」と聞かれたら「I’m fine, thank you. And you?」と答える、ということは中学1年で習うのでもちろん知っている。しかし日本語的には、「こんにちは〜調子はどう?」って聞くことってあんまりない。(たまにあるけど)

例えばお友達のお家にお邪魔するときは「こんにちは〜お招きありがとう!お邪魔しまーす」だし、外で会ったら「こんにちは!こないだはどうも。」とか「こんにちは!ご無沙汰です〜」とかが普通だ。

だから例えば知り合いに会って、「Hi, how are you?」とハグをされると(ハグも未だにドキドキする)、「thank you〜」とか無駄にお礼を言いながらどぎまぎして、そうだそうだ、聞かれてるんだった、と思い出して「I’m fine, and you?」とワンテンポ遅れて慌てて返す。ワンテンポ遅れてるので相手はどうでもよくなって、あんまりちゃんと答えてくれなかったりたまに優しく答えてくれたり、である。

大富豪だった息子のお友達

そんなHow are you?の試練に今日も出会った。子供達の学校が冬休みになって、息子がインド人のお友達のお家に遊びにおいでよと誘われたのだ。私は送って行っただけなのだが、クラスに日本人もいるのに初めて遊びに行くのがインド人のお家であることにむしろ私がドキドキしていた。息子、来印1ヶ月半、たいして英語も喋れないのにどうやってインド人のお友達と仲良くなったんだろう。私もお母さんとお友達になれるかしら!

ワクワクしながら言われた住所にたどり着くと、、、

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でーん!!

え………?ここで合ってる?合ってるの?

門を入ると高級車が何台も並び、門の周辺だけで5、6人の使用人の方達がうろうろ。校庭みたいな広さの庭に息子の友達とその妹、お世話係らしき女の人が2、3人とお父さんではなさそうな男の人。

「アレフ君!こんにちは!お招きありがとう!あれはお父さん?」ときくと、

「ハアイ!あれはただのテニスの先生だよ!」

どうやらお家にテニスの先生が来てレッスンをしてくれていた模様。ただのって何よ、ただのって。専属コーチかよ!!

もはや私も息子も興奮しきりである。平静を装って「お母さんどこ?」と聞くと、ただのテニスの先生に別れを告げ、颯爽とお家の重厚な門を開けてくれた。すると出てくる出てくる、使用人の方々。案内してくれようとする人、掃除してる人、甥っ子ちゃんを追いかけてついてる人、奥にはレストランのような大きな厨房があり、料理人らしき男性が数人、フライパンを磨いている。天上にはシャンデリア。わーもう、アレフ君のお母さんが出てくる前に写真撮っちゃうぞ!

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インド人の美人ママとお友達になれるかも

しばらくすると一度だけ学校でお会いしたことのある、スタイル抜群でとても美人なお母さん、カニカ登場。

「Hi, how are you?」

でた!そしてハグ!女優さんみたいなカニカとハグ!ここはハリウッドか何かか?場違い感半端ない。

びっくりしきりの私は、とにかく家がビューティホーでヒュージで素敵ね!こんなにステキなお家に招いてもらっちゃって本当に嬉しいけど本当恐縮!という気持ちをめいっぱい伝えた。

そしてまた忘れたのだ、あの定型句を。「I’m fine, thank you. And you?」そんなこと言ってられなかったんだもん。

でも特に気にしてない様子のカニカ。

ピッカピカに磨かれた床を私のズタボロな靴で恐る恐る歩き、ふかふかの何かの動物の皮らしきカーペットとキリン並みに首が伸びてもオーケーな背の高いふかふかのソファがあるリビングに通された。そして何を飲みたい?と聞かれたので、コーヒーがいいな、とやっぱり恐る恐る言うと、カニカはおもむろにそばにいた使用人さんを呼び止め、華麗にコーヒーとスナックを持って来いとオーダー。すいませんすいません!

しかし、とくに最初の挨拶がうまくいかなかったことについてはあんまり気にしてないようだ。インド人の美人ママと友達になれるかもしれないチャンス、失敗するわけには行かない。そして思い至った。そもそも「How are you?」と声をかけられるとき、相手はたいしてこちらに答えを期待していないのではないか?あの中学1年で習った定型句は本当に正解なのか?ぐるぐる頭を巡る謎の思考。

息子はというと既に隣の部屋でアレフ君と仲良さげに遊んでいる。息子〜!!!お母さんを一人にしないでぇ。そもそもお前さん、英語喋れないのにアレフ君と何喋ってんの?何して遊んでんの?

そんな私のぐるぐる脳みそなどカニカはつゆ知らず、ひとしきりコーヒーを飲みながらの談話が始まった。とても綺麗な英語を喋り、座る時の姿勢もとても美しい。お互いの国のこと、学校のこと、息子たちの様子や仕事のことなど、、、まるでインタビュー番組を撮影しているかのような完璧なセットでの美しい談話。私はたいしてよく理解できないカニカの英語に「アーハー」とかいいながら適当にうなづく。そんな風にうなづいている自分が恥ずかくなってコーヒーをすする。むず痒すぎる。英語、私たいして聞き取れないしたいして喋れないのよ…本当ごめんね。

しかし話しているとカニカもアレフ君もとてもいい人だった。息子のアレフ君は学校に色んな国の子がいることから、興味を持って自分で色んなことを調べたり、異文化の食事を試したりするのが大好きで、特に日本が大好きなんだそう。ところが1年生の時にできた日本人の大好きなお友達が、事前に知ることなく日本に帰国してしまい、とても傷ついたのだとか。今回うちの息子がクラスにやってきてとても嬉しかったのだと。いつか日本に行ってみたいと。

そうか。そんな過去があったのか。よし!おばちゃん今度日本食作ってあげるからね!そしてもしよければ夏休みに息子と一緒に日本においきよ!こんなに大きいお家に住める君ならきっと飛行機代は問題ないよ!一緒に日本の小学校に通ったら楽しいだろうなぁ。

そんな夢を膨らませてお別れをした。果たして私がお土産に持って行った日本のお菓子(かりんとうと胡麻せんべい)を楽しんでくれたのかは謎だが、きっと近いうちに我が家に彼らをお招きして大好きだという寿司パーティーを開催するぞ。

息子、ありがとう。息子のお陰で母さんもインド人の、しかも美人なママさんのお友達ができるかも!

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次回はこっちから「How are you?」と声をかけようと心に誓った。

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