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ニューデリーの買い物事情

今回は、私がこちらで日々の買い物をしている場所をご紹介してみようと思う。

インドで買い物をする場所として、日本でいういわゆるスーパーのようなところを想像していると、そのギャップに驚くことになる。

日本でいわゆるスーパーというと、清潔感のある店内、ツルツルの床、明るすぎるほどの照明、ずらりと並ぶ美しい商品と、効きすぎているほどのクーラー、そんなイメージだ。たとえば私が以前住んでいた長野県佐久地域には、ツルヤという素晴らしいスーパーがあって、店員さんは丁寧だし、品揃えも品質もよく、だいたいの雑貨もそこで手に入った。

ところがインドで私が日常的に買い物をする場所は、そういった場所とは程遠い。道は凸凹、店内と呼べる場所はほとんどなく、屋外または半屋外である。野菜は野菜屋、果物は果物屋、肉は肉屋、牛乳は牛乳屋、文房具は文房具屋、食器は食器屋、掃除用具は掃除用具屋、といった具合だ。そして基本的にどの店も開店時間が遅く(お昼前後)、開店していても午前中は入荷していないものが多い。そして品揃えはその日によって様々。当たり前といえば当たり前なのかもしれない。日本も少し前まではそんな風だったのではないだろうか。(想像)

上の写真は、よく行く野菜屋のお茶目なおじさん。言葉はあまり喋れないらしい。一度行くと顔を覚えてくれて、一生懸命コミュニケーションしてくれる。野菜を買うと唐辛子とコリアンダーを毎回無料で付けてくれる。辛すぎるのでそんなにいらないとお断りするのだけれど、毎回ついてくる。

そのとなりの果物屋。どんな商品もそうだが、状態や品質を自分でチェックして、必要があれば勝手に袋を漁る。値段も必ず聞いて、相応かどうかを確認する。だいたいのものは量り売り。

今の季節はぶどうやマンゴー、いちごなどがインドの旬らしい。果物はどれもとても美味しくて、我が家のキッズたちのおやつに欠かせない。(学校にも保育園にもおやつタイムが必ずあって、お弁当箱に必ずおやつを持っていかなくてはならないのである。)

写真にも写っている緑のぶどうはとても甘くて皮も癖がなく、いわゆるシャインマスカットによく似ている。ここの果物屋は1パック100ルピーと格安なので見つけたらいつも買う。そして柑橘類がどれもとても美味しい。オレンジとよんでいるけれど、日本のデコポンのような形をした柑橘があって、皮も向きやすく、水分量も甘みも酸味もとてもバランスがよい。


こちらは本屋。基本的にお店というお店は商品が所狭しで天井までぎっしりである。

文房具屋には大抵のものが揃っているが、紙製品は他の物価と比較すると割高感がある。11月にあるDiwaliというインドのお正月のような大きなお祭りの時期には、お祝い用の美しい模様の封筒がたくさん出回り、Diwali後にはディスカウントになる。

下の写真は肉屋。基本的にマトンとチキンである。時々魚もおいている。これは少し離れた場所にある小さなスーパーの中の一角だが、普通マーケットにはあまり肉を売っている場所がない。

そして売っていたとしても、おじさんがひとり大きな台にデン!と座り、まるごとの鶏肉と包丁をもって「お前は何グラムほしいんだ」と聞いてくるようなところが多い。まるで私の首を切られそうな雰囲気・・・。もちろん冷蔵管理などはされていないので、ものすごいハエがたかっていて、私はそういうところでは肉を買ったことはない。写真をとる勇気もなくてすいません。


こちらは私がよく使うグローサリーストア。小さいお店に見えるが、どっこい店内には地下から天井までぎっしりと商品が並び、店員さんはだいたいどこに何があっていくらか把握している。調味料やパスタ、小麦粉に豆、お菓子やパン、乳製品に卵、洗剤や清潔用品、掃除用品までだいたいなんでも揃う。ここでもやはり、店先においてあるものは日にあたって悪くなっていないか、製造年月日はいつかなど、値段や品質を自分でガサゴソ確認する必要がある。

肉の入手がなかなか難しい一方、卵と豆類はだいたいどこでも手に入る。インドでは本当によく豆類を調理する。実際肉がないときは私も、豆でも浸すか、という感じになる。日本にいたときは難しそうなイメージが合って敬遠していたが、案外豆の調理が簡単なことがわかり、手軽に豆を使うようになった。

買い物時のお会計は、たいてい下の写真のように紙に手書きで値段を書いていき、合計金額を手書きで渡される。写真のお兄さんは電卓を使っているが、野菜スタンドのお兄さんなどはいつも野菜を図りながら値段を計算し、書き終わると同時にほぼ合計金額を電卓を使うことなくはじき出す。

どこのお店の人も、だいたい商品の値段が頭にはいっているらしく、スラスラと値段を書き出していく。すべての商品の値段が頭に入っているのだとしたら恐ろしい記憶力だ。日本での物価に比べるとすごく安いのでとりあえず疑うことなく言われた金額を払っている。(例えば野菜をカゴいっぱいに買っても100ルピー;日本円で150円程度だし、食パン一斤買うと30ルピー;日本円で45円だ。)

入手が難しいのは酒類だ。宗教上あまりお酒を売っている場所が少なく、なんでも売っているような大きなマーケットにも、酒屋はない場合が多い。酒屋がいくつかのマーケットにあるので、酒を買いたいときは場所を選ぶ。上の写真のマーケットにも、雑貨屋の裏手に小さな酒屋がある。そこまでして酒を飲まなくてもいいのでは、という気もしたが、なんせインド、予想外のことが次々に起こる。飲まずにはいられないので、案外必至である。

こちら、インドでよく見かけるビア。

というわけで、お気づきだと思うが、私が普段買い物をするマーケットは、道はガタガタ、店内もとても狭く、とてもではないが車椅子のはるかと一緒に行くのは困難である。休日にいつも私が一人またはレンチビと買い物をしている場所を、はじめて家族とともに回ってみたところ、夫も子どもたちも、「かーちゃん、買い物大変なんだな・・・」とわかってくれた様子であった。そうなのだ。大変なのだ。


もちろんショッピングモールだってあるにはある。日本で言う百貨店のような綺麗なモールもあって、広いフードコートやLoftのような綺麗なホームセンター、高級アパレル店、そして大型スーパーも入っている。ところが必ずしもそういった大型スーパーが便利かというとそうでもなく、肉はおいてある場所とない場所があるし、基本的にお酒は売っていない。ある程度自宅から距離もあるので、渋滞していて当たり前のニューデリーの道路ではではしょっちゅう行くには時間がかかるし、何よりも広すぎて目当てのものを見つけるのに時間がかかりすぎて疲れてしまう。4人の子供の送り迎えの合間をぬっていくにはハードルが高い。

道路事情についてここで少し言及しておくと、とにかく道路は混乱している。通学や通勤の時間にはひどい渋滞となり、道路は4車線から6車線、というかそもそも車線なんてなくてみんな割り込みしまくりである。右左折時に反対車線が空いていると反対車線から入り込むこともあり、スリル満点だ。カーブミラーというものは存在せず、みんなクラクションを鳴らしまくりなのは存在を知らせるためだという。

インドに到着した日に空港から自宅にたくさんの荷物を運んだときには、大量のダンボールを車の上に乗っけていった。特に紐などで縛ることはしなかった。家にすべてのダンボールが到着したのが奇跡としか思えなかった。

実際に交通事故はそこらじゅうで起こっていて、しょっちゅう路上でトラブルが見受けられる。年間の交通事故死亡者数が日本では4000人なのに対し、インドでは実に15万人だそうだ(8歳長男談)。人口がおよそ10倍であることを考えても恐ろしい数字である。統計にあがってこないような事故もたくさんあるだろう。我が家のメイドさんのお兄さんも事故で亡くなったそうだ。

何をするにも渋滞で移動が大変困難なニューデリーでは、買い物もひと仕事だ。他にもINAマーケットというデリーの台所とも呼ばれているような場所や、日本人御用達のデリバリーやショップなどもあるが、それはまた別の機会に。

インドの買い物では、品質の良いものを確保するのは買い手の責任である。生活すること、売り買いすることの原点を日々目の当たりにする毎日に、どことなく胸が躍る私。インドに来てよかった。

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