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短歌・自由律短歌

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2023年6月の記事一覧

連作十首 ある現像

巻き貝のなかから一つの幻聴を抜き取り氷の標本とする

くらやみは水辺で生まれた生き物で 左の眼窩に白魚を飼う

春雷の近づく乾燥機のなかで胎児のごとく眠る子羊

白桃を揺らせば鈴の音がする 屈伸のごとく水門ひらく

水槽を両手に乗せてこの秋のもっともしずかな窪地へ向かう

凍蝶の翅を河原で焼く人の脳を揺らす教会の鐘

投げ上げた鍵束が花ひらくとき街上に散る銀のきらめき

夕照に両足浸す私の汀を過ぎ

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連作三十首 雪明りの観測

朝雨にけぶる彼方のビル群の間を泳ぐ巨大なアロワナ

振り向けば秋の舗道を駆け抜ける銀狼の散らす落葉のあと

しんしんと骨片のふる地下書庫で灯火にひらく菌類図鑑

頭部なき埴輪ばかりが並び立ち祈りへ向かう顔を知らない

布という声がして近づけばカーテンの芯にひらく果樹林

雨上がり飛び立つものにPapilioと呼びかけてみる虹彩のなか

音もなく栞紐を揺らし秋宵は通り過ぎゆく悪寒を置いて

くちばし

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