〜産まれてからの環境〜母のヤキ、家族が欲しい

突然母が、

『今日ちょっとうちにきなさい。』

と祖父達の家へ言いに来た。

顔はかなり怒っている。睨みをきかせ、いつもの般若のような顔だ。

”やばい…やっぱりアキちゃんの作戦は上手くいかなかった…うわー怒られる。本当どうしよう”

今までにない位、不安と焦りでいっぱいだった。

それを見ていた祖母は、

『あんた、また怒られるのかい?かわいそうに。。』

と言った。

”助けて!!”

母への疑問は沢山あったが、結局自分は良い子じゃないから怒られると本気で思っていたため、そのセリフは誰にも言えなかった。

あの時誰かにもっとSOSが出せていたら、何かが違ったんじゃないかと今でも思ってしまう。


意を決して、母の家へ向かった。

『ただいま…』

母の家へ入ると、母はすぐに玄関へむかってきて、みあの頭を掴みながら

『このガキぃぃ!』

と言いリビングへ引きずっていった。

頭皮が取れるかもと感じた。

何で怒られているか分かっていたみあは、ひたすら

『お母さんごめんなさい…本当にごめんなさい。お母さんやめて…』

と言い続けた。

母は、

『お前パパの事アキちゃんに言ったよな?今日言われたんだよ!影でお母さんの悪口も言いやがって!お前が言う事聞かない事言っといたからな!全部お前のせいだろ!』

と言いひたすら殴ったあと、テーブルにあった木箱のティッシュケースで頭を殴ってきた。

”う…すごく痛い…”

後頭部は腫れ上がり、みあは頭を抱え倒れ込みひたすら泣き続けていた。

『お前次誰かに何か言ったら、ただじゃおかない。倒れ込んで演技なんてしちゃって!ふ!本当お前なんて産まなきゃ良かった。邪魔だ。産んでやったんだから言う事くらい聞け!』

とみあを見下し言ってきた。

『お母さんごめんなさい。』

こんな事をされても、なぜか母には嫌われたくなかった。良い子になろうと、努力した。

今思えば、きっと母はこんなみあにもっとイライラしていたんだと思う。

『早くどっか行って!』

母にそう言われ、みあは立ち上がり玄関へ向かった。

その時母が、

『あ!もうアキちゃんちも行ったらダメだから!』

と言ってきた。

みあは、

『うん、わかった。』

そう言い家を出た。

泣き腫らした顔で祖父達の家へ帰った。

『みあ、お母さんに何言われたの?サリのパパの事かい?』

祖母は、優しく迎えてくれ、みあに聞いてきた。

『そうだけど。もう大丈夫だから。』

みあはそっけなく祖母に伝えた。

”次何かあったら本当にやばい”

そう感じ、もう誰にも何も聞かれたくなかった。


明日も明後日も、ずっとずっとこれは続くんだ。

やりたいスポーツも、行きたい事も、話したい事も、何一つ出来ない。

とにかく我慢だ。

みあは五年生の時、バレーに凄く興味があり、とても挑戦したかった。

けれど、昔ピアノを辞めた事で許可は貰えなかった。

遊びたい友達も、母が嫌いな人とは遊べなかった。

遊ぶと、

『あの子の家は親が仕事してて、学童保育に行ってるからダメだから。』

『あの子の家は親が変だからダメだから。』

などよく人の家の悪口を言っていた。

その為遊んで良い友達は、二人しか居なかった。

けれどその二人は、習い事など忙しく、あまり遊べなかった。

凄く羨ましかったが、自分には無理だと感じていたので、唯一学校でみんなに会う時間がとても楽しかった。

昔から人を妬む気持ちなどがあまりなかったため、友達が楽しそうだと自分もそれだけで楽しかった。

唯一家での楽しみは、シル○ニアファミリーの人形達と、シル○ニアの大きな家で空想の家族を作る事だった。

祖父達が何でも買ってくれていたため、凄く大きなお家でいっぱいの家族の人形がいた。

”いつかこんな家族や兄弟が欲しいな…”

そう思った時、やっぱり本物が欲しくなった。

仲良くできる、生きている物が欲しくなった。

『そうだ!犬を飼おう!じじにお願いしよう!』

すぐに祖母に、

『じじ、次いつ帰ってくる!?』

と聞いた。

『今日夕方少し帰ってくるんじゃないかい?』

と祖母は答えた。

”よっしゃ!じじが帰ってきたら、すぐお願いしよう!”

そう思いながら、窓から駐車場を覗き込み、ずっと祖父の帰りを待っていた。






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