【妄想話】太郎・26話
「太郎・第26話」
「とりあえず、すぐに用意できるものは…」
おじいさんは棚をゴソゴソ探し始めます。
そして、それをテーブルの上に置きました。
「なにこれ?」
龍太郎が指を刺して聞きます。
「さっき買ったイカリングフライと唐揚げじゃ。」
「…。揚げ物ばっかりやん。おばあさんに煮物とか作ってもらいや。あっ、今は1人なんやった。」
おじいさんは淋しげな表情をして肩を落とします。
龍太郎は大きく手を叩きます。
「まっ、いいや。食べよう食べよう。」
イカリングフライを箸で取って食べます。
「っんま。」
少年も龍太郎に習ってイカリングフライを食べます。
「モグモグ…あっ、たしかに美味しい。この惣菜はドコで買ったのです?」
おじいさんは少年見て答えます。
「平和堂。」
それを聞いた途端、龍太郎は突然箸を置き、立ち上がります。そして、歌います。
「♪かけっこ とびっこ 元気っこ〜」
おじいさんも立ち上がり、そして続きを歌います。
「♪みんな集まれ 平和堂 ハイ!」
龍太郎とおじいさんは少年を無言で見ます。
少年は自分で自分を指差します。
「ぼ、ぼく?」
少年も渋々立ち上がり、そして歌います。
「♪わんぱく坊やも 仲良しも〜」
少年を暖かい目で見つめていたおじいさんがバトンを受け取ります。
「♪ママのあとからついていく〜」
そのバトンが龍太郎に。
「♪はずむ心の お買い物〜みんなイカリングを指にはめて!いくよ〜 せーの。」
「♪平和堂〜。」
もう一度みんなで。
「♪平和堂〜。」
3人は指にはめたイカリングを天井に向けてました。
そして無言で食べて座りなおします。
おじいさんがこの重苦しい空気の中、口を開きました。
「そうじゃそうじゃ。唐揚げに何かかけるか?レモンとか。」
2人は首を横に振ります。
「…。」
やっぱり重苦しい空気が部屋を包んだままでした。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?