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【妄想話】太郎・25話

「太郎・第25話」

「えっ?ここって…」
少年は目を丸くして見つめます。
それもそのはず、そこには竜宮城には絶対見えない一軒の古びた家がありました。
「これって普通の家だよね?」
「ちょっと汚いけど、竜宮城みたいなものやって。」
龍太郎はおもむろに扉を叩きます。
「おーい。誰かいるかー。ドンドンドン。」
すると、扉が開きました。
ガラガラガラ
家の中から、おヒョイさんそっくりな老人が出てきました。
「…。おっ、龍太郎か?久しぶりじゃの。どうしたのじゃ?」
老人は目を細めて話しかけました。
「この子が踊り見ながらご馳走食べたいって言うから。」
「い、いや、竜宮城で食べたいけど、普通の家では…。急には迷惑やろうし。」
少年はモジモジしながら話します。
すると、老人は少年の方を向いて話します。
「わしは全然いいよ。入りんさい。」
「えっ?いいの。」
「なっ!」
龍太郎は先に扉をくぐり家の中に入っていきます。
少年も龍太郎に続き扉をくぐります。
「おじゃましまーす。」
家の中は竜宮城を全く想像すらさせない普通の造りです。
龍太郎が座りながら口を開きます。
「あれっ?おばあちゃんまだ帰ってきてないの?」
棚をゴソゴソしてたおじいさんが哀しげな表情で応えます。
「そうなんじゃ。鬼ヶ島からまだ帰ってこないのじゃ…とりあえずこれでも食べておけ。」
「それな〜に?」
「ポップコーンじゃ。」
「もう一つは?」
「麩菓子じゃ。」
「…。じゃ、ポップコーン。」
「龍太郎は踊り見ながらご馳走食べたいのじゃろ?」
「この子がな。」
少年の方を向きます。
「いやいや、急に押しかけてそんなご無理…」
おじいさんは話を遮って食い気味に話します。
「そんなこと簡単じゃ。」
「すぐできるんかい!」
少年は転がり、その拍子でポップコーンが散乱しました。


つづく

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