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【妄想話】太郎・21話

「太郎・第21話」

後編

ある日、1人の少年が浜辺を歩いてました。
浜辺には貝殻や見慣れないペットボトルやこれまた見慣れない緑色の袋に入ったお菓子が落ちていました。
そのお菓子を拾い上げようとした時に、声が頭上をかすめます。
「それ拾うのやめときんしゃい。」
そう聞こえ、拾う手が止まります。
顔を上げて、声がする方を見ます。
そこには笑みを浮かべる老婆が立ってました。
「そのお菓子はやめときんしゃい。」
「なんで?」
「辛いから。むしろ痛いぐらい。」
「食べたんかい!」
老婆は砂を蹴り上げ、お菓子を埋めます。
「なんで?…あっ、おばあさんは散歩ですか?」
「そう、そうじゃ。こんなところで油売ってる場合ちゃうわい。」
「どこかに行くところ?」
「イオンに行くところ。イオンで油買うのと違うぞ。」
「…。じゃなにを買いに?」
「バーモントじゃ。緑色の箱の中辛じゃ。緑色といえど、このお菓子とは違うぞ。」
おばあさんはまた砂を蹴り上げます。
「わ、わかったって。カレーを作るんだな?」
「そうじゃ。…もうかれこれ違う地でカレーを作って5年が経つな。じゃあな坊主。」
おばあさんは別れ際、もう一度砂を蹴り上げて颯爽と歩き出しました。


つづく

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