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【妄想話】太郎・24話

「太郎・第24話」

「ていうか亀じゃなくて大きな桃かぁ…」
少年は桃の中をまじまじと覗きます。
「なんか残念そうやな。ケンちゃんが先やけど桃の中に入るか?それやったら暇になるやろうし、このチョコレートでも食べといてや。フニャフニャやけど。」
「いやそれは絶対いいから。桃の中にはケンちゃん入れてあげて。」
「チェ。このチョコレート、フニャフニャやしいらんわ。」
龍太郎はフニャフニャになったチョコレートを浜辺に投げました。そして少年を桃の中から再び見ます。
「じゃ、そんなに何が残念なん?」
少年は桃から手を離して真顔になります。
「…本来ならここで亀を助けて、お返しに竜宮城へ連れて行ってもらい、乙姫さまの踊り見ながらご馳走食べるはずやったのに。」
龍太郎は少年の話を真剣に聞きました。桃の中で。
「なんや。そんな事がしたかったんや。」
「そんな事って。…あぁ、したいさ。したかったさ!」
龍太郎は腕組みをします。桃の中で。
「よし、わかった。ケンちゃんも帰って暇やし…
俺についてきな。」
「えっ?桃の中に入るの?」
「違う違う!今から出るから。ちょっと待って。ヨイショっと。」
こうして桃から出た龍太郎は少年と一緒に歩き出しました。
「ちょっと龍太郎お兄ちゃん、どこまで歩くの?
たしか竜宮城は海の中にあるはず。」
「竜宮城に行きたいんやろ。こっちこっち。」
サザエさんのエンディングみたいに手招きします。
「だから竜宮城は海の中に…」
少年の言葉を遮ります。
「ほら、着いたで。ここが竜宮城だ。」
少年は目をまん丸にします。
「…えっ?ここ?」


つづく

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