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思うこと380

 先日、家族とリンチの映画の面白さについて漠然と語り合っていた際、「そういえば、”帰り道の途中で耳拾うやつ” 観た?」と言われ、そんな愉快なシーンに見覚えのない私は、ラッキーにも『ブルーベルベット』(1986年)を借りてほくほくと帰宅した。
 リンチの映画を観るのは、『ロストハイウェイ』以来なのでもう4年振りくらいになってしまった。

(『ロストハイウェイ』感想記事↓)


 あの時感じた、「なんかわけわからんけどおもしろい!」という体験がまたできるのだと思い、さあ混乱するぞ!!と謎の気合いで観始めた『ブルーベルベット』。序盤でなんか畦道みたいなところで一個だけ落ちていた耳を拾う主人公(マクラクラン)。この唐突な感じ、やっぱりたまりませんよね!耳にフォーカスしたシーン(?)みたいなところで、『イレイザーヘッド』(1976年)を感じた。
 あと、リンチ映画の「主に主人公が見せる怪訝な顔」ってもの凄く特徴的だと思う。この世の中、自分でもそういう場面に出くわすことは多いし、人間社会の「謎」あるいは「不可解」って、かなり重要なテーマというか、イメージなのではないだろうか。まあ単にそういうのが私の好みなだけってこともあるが。

 さて、実際は思ったより「わけのわかる」映画だった。耳を拾ったことで主人公は今まで知らなかった裏社会に足を踏み入れてしまい、そこでもがく一人の女性を助けようと奮闘し(ガールフレンドとの距離感も大事にしつつ)、最後はわりとハッピーに終わっているようでもある。
 どんな暗闇でもコマドリが来て終わりが来る、みたいにあたかも希望を見せているような感じではあるが、そのコマドリ自体がラストでなんか奇怪な様子。額面通り「希望はあるよ」と思ってもいいし、「果たしてそうかな?」と思うのもアリなのだろう。

 ところで『ブルーベルベット』は長編映画の四作目という比較的前半の作品であることに驚き。しかしここから本格的にリンチ感が強まっていくのだろう、的な「黎明」っぽさを感じた。(でもその前の作品『デューン』/1984年をまだ観てない汗)。
 主人公が訪れるドロシー(歌手だけど裏社会の連中から性的奉仕も強いられている)の赤い部屋、彼女が着る青い服。あと、机の上に置いてあるなんか変な置物とか、そういう「っぽさ」が、その後の作品でどんどん溢れ出して洗練されたのか…、とか勝手に納得。

 余談だが、デニス・ホッパーが演じる「とにかくヤバイおっさん」のフランクは、素行から何から「とにかくヤバイ」のだけど、そのヤバさの裏にある悲壮さが見え隠れしており、ヤバくてどうしようもないおっさんなのに、どこか憐憫を誘う感じがあって非常に印象的だった。だけど、現実世界にいたら絶対関わらないに限る。

 リンチ映画、未視聴は『デューン/砂の惑星』、『ワイルド・アット・ハート』、『インランド・エンパイア』。春の出産予定を目前に、全部観ることができるのだろうか?!(さっさと観ろよ)。

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