新春の学生ラグビーから感じた美しさ
RUGGERSオリジナルコラム
筆:廣瀬俊朗
1981年生まれ、大阪府吹田市出身
元ラグビー日本代表キャプテン
株式会社HiRAKU 代表取締役
NPO法人 Doooooooo 理事
新型コロナウイルスの感染が再度拡大するにつれ、家にいることが多くなっていて、ふと感じたことがある。子どもはよく笑う。一方で怒っているときも、ストレートに感情を出す。
大人になっていくにつれ、このシーンで笑ってはダメだとか、笑いたくない時に笑うフリをすることが出てくる。納得できないことを、やらざるを得ないことがある。そのちょっとした積み重ねで、自分自身の感情を出さないことを認知的にも覚えていくのではないかと思った。
いつの間にか笑う回数が減っていく。「不健康だなぁ」と感じる。その点から考えると、ご機嫌だと笑うことが多くなるのでご機嫌でいようと思うことは良いことだが、逆に笑うからご機嫌になるのも正解だと思った。笑いに溢れた1日を送っていくことはとても素敵だな、と改めて感じた。
そんなことを考えていた時に、ラグビー大学選手権の決勝戦を観た。天理大学のキャプテンの松岡大和選手。めちゃくちゃ感情をストレートに出す。試合中にも一人で雄叫びを上げていた。自らを鼓舞している。勝利が確定して、自分自身が退場する時には、やり切った想いが滲み出てきて涙を流す。試合後のインタビューでは、心の奥底から思っていることを発する。そこに人々は共感していく。発する内容だけではなくて、その姿や声から滲み出る質的な何かを感じるのだと思う。その清々しさに癒された。
決勝戦の解説からの帰り道。どんな1年になるのかと考えた。これからもコロナ禍は続く。まだまだ先が見えない中で、不安になることも多い。不機嫌になることもあるかもしれない。そこで無理に自分の感情を押し殺すことなく、一度吐き出してみることが大事なんじゃないかなと思った。
「やってられへーん!!」
「不安だー」
逆に、
「ワクワクする!!」
「めっちゃご機嫌やん!俺って!!」
なんでも良いから発していく。そうすることで、自分の感情に気付いていく。その積み重ねが自分らしく、しなやかに生きていくには大事なのではないかと思った。
ラグビーから感じたことがもう一つある。年末年始に開催された全国高校ラグビー大会(通称:「花園」)である。例年以上に高校生の戦っている姿が美しく見えた。本当に大会が開催されるのか不安も大きかったのだろう。開催が決まっても、常に、新型コロナ感染拡大での大会中止や出場停止の可能性に、不安を感じていたのではないか。そんな彼らがようやく表舞台に立って、試合ができるとなった瞬間に、これまで我慢していた色々な感情が爆発したのではないかと思う。だからこそ美しかった。その姿は試合中だけではない。試合後に自分たちだけが喜ぶのではなく、自然と相手と触れ合い、ゲームが出来た喜びを分かち合い、相手がいることに感謝していた。とても心を打たれた。高校生の時にこんな経験をできた彼らは、制約もあって大変な1年になったけれど、得られるもの大きかったのだな、と感じた。
高校生、大学生を観て、このコロナ禍で無事に最後まで大会が開催できたことは、本当に多くの方の準備や支援もあるが、やはり学生の我慢が素晴らしかったし、運を引き寄せたのだと思う。一方で、同志社大学は棄権をした(注1)。彼らにも何かしらの形でこれまで頑張ってきたことに対して報われるモノ・コトがあって然るべきだ。そんな想いもあって「スポーツを止めるな」という団体として、先日オンラインのイベントをやらせていただいた。同志社大学ラグビー部の佐藤貴志コーチに出席してもらい、現場感を色々と共有してもらえる良い機会になった(注2)。僕としては、彼らと共に何かしらのアクションに繋げられないかな、と考えている。本当の試合ができなかったとしても、何か良い思い出を!!と考えている。大人にしかできないことを学生のためにやっていきたいという想いは、コロナ禍が終わるまでは少なくとも大事にしていきたい。
(注1)…同志社大学は全国大学選手権に出場予定だったが、複数の部員に新型コロナウイルス感染者が出たとして、大会直前に出場を辞退した。
(注2)…コロナ禍における学生スポーツと学生や学校の実態についてオンラインディスカッションを実施しました。詳しくはコチラをご覧ください。
日本ラグビー選手会公式
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