見出し画像

冨岡鉄平さんに教わったタックル(後編)

小学校3年生の子どもたちを
勇気づける鉄平さんの自己紹介の後は、
タックルの指導についての話だった。

鉄平さんは、
正しいスキルを身につけることが、
とにかく大切なんだと言っていた。

正しいタックルは、
色んな技術の組み合わせから成り立っている。

しかし、
自分が子どもの時もそうだったが、

気合い、
根性、
仲間への思いなど、
メンタルの部分が強調され過ぎていて、

大切な技術の部分が、
ないがしろにされてしまっていることが多い。

正しい技術を教えることなく、

タックルが苦手な選手
イコール
気合い、根性、仲間への思いやりに欠ける選手

みたいな考え方で、
選手を評価し、
メンタル面の改善を促すだけ、、

鉄平さんは、
メンタルの重要性も認めながら、
それよりも大切なのは、
正しいスキルを身につけることであり、

その身につけたスキルを、
より効果的に発揮するために、
メンタル面が大切になってくるという理屈だ。

この日、鉄平さんは、

つま先、
ひざ頭、
おへそ、
胸の中心
あご、
額(ひたい)

これらを、
全て相手プレーヤー
向けて、

コンタクトの直前まで、
それを維持しなさい、
と言った。

特に、

額(ひたい)が、
コンタクトの直前に、
横を向いてしまうのがダメで、

コンタクトする時は、

タックルする側の
眉毛の眉尻側半分が、
相手の太ももの外側に
触れて、擦れて、初めて合格

これは、
自分の身体の芯で、
ボールキャリアーにヒットするための基本なんだ、

と言い、

選手を2人一組にさせ、
タックルする側の選手を四つん這いにさせ、

ボールキャリアー役の選手は、
四つん這いになったタックラーの
予め決めたタックルする側の肩に向かって、
ゆっくりと歩いて近づき、
そのまま太もも部分を、
タックラーの肩に当てる、

その時に、
タックラーは、
上に書いたとおり、

眼を見開き、
顔を横に向けず、

タックルする側の
眉毛の眉尻側半分が、
相手の太ももの外側に
触れて、擦れるようにする。

まずはこれを、

顔を横に向けず、
目をつぶらず、

できるようにしよう。

これができないと、
動いているボールキャリアーを、
自分の身体の芯で捉えることはできないよ。

なるほど。

ボールキャリアーに
自分の身体のどの部分を?
どのように当てるのか?

というところに、
タックルの基本中の基本があった訳だ。

コーチとして、
子どもたちにタックルの指導をする時、

”真っ直ぐ当たれ”
”つま先とひざを相手に向かって真っすぐに向けろ”

と指導していたが、
真っ直ぐ当たるために、

コンタクトの直前まで、

”顔が横を向かない”
”タックルする側の眉毛の眉尻側半分を、
相手の太ももの外側に
触れて、擦れるようにする”

と言うことは、
指導したことはなかったし、

導入の仕方も、
もっと雑で、
両ひざをついた状態ではあったが、
タックラーにタックルさせるところから
始めていた。

そして、
なかなかヒットできずに、
抱きつくようなタックルになってしまう選手に、

”もっとハードに、バシッとヒットしろ”

みたいなことばかり言っていた。

言うまでもなく、
その選手のタックルは、
なかなか改善されなかった。

私のタックルの指導は、
まだまだ甘かったわけだ。

前編の冒頭にも書いたが、

私も含めた小3クラスのコーチは、
”今取り組んでいる基礎的な練習メニューを
根気強く続けていくしかない”
と思っていたけど、

全然そんなことはなく、
自分たちの指導に、
まだまだ改善の余地があったということだ。

この日は上記の、
つま先から額まで真っ直ぐにした
状態でヒットすること以外に

タックルに入る前の準備動作についても
教えていただいた。

内容はこうだ。

1 手・腕の位置(構え)

脇を締めて、
パスキャッチの時のハンズアップのような感じ、
但し、ハンズアップほど手を前に出さず、
肘は90度くらいに曲げる。

2 「ボールキャリアーを追う」トラッキングの段階、
  タックルの射程圏内に入ったパドリングの段階、
  タックルに入る段階のそれぞれにおける上体の角度

トラッキングの段階では、
タックルの射程圏内までボールキャリアーとの距離を詰めることが
一番の目的なので、
一番スピードが出せる姿勢で走る、
つまり、
この段階では姿勢を低くしない、ということだ。

パドリングの段階では、
いつでもタックルに入れるよう、
上体を斜め45度に倒し、
1の手・腕の構えをする。

最後のヒットでは、
ヒットの瞬間に、
構えた手・腕を真っ直ぐ前方に突き出す。
※腕を横に広げるのはNG

なるほど。
ボールキャリアとの距離が
1~2エートル位で行っているタックル練習では
タックルできている選手が、

試合になると相手の上体に抱き着くような
タックルしかできなくなるのは、

こういう技術指導が足りなかったのだ。

単純に怖がってしまっているだけ、
自分の間合いは自分で見つけるしかない、

みたいに考えていた自分が恥ずかしい。


今回のコーチングセッションでは、

タックル指導において、

安易な精神論に頼らず、
必要な技術を確実に指導することの大切さを
痛感させられた。

鉄平さんが指導された内容は、

どれもプレーヤーとしての自分が、
何となくやっていたことではあったが

コーチとして、
タックルを一度もしたことがない選手に、
タックルを教えるときに、

その選手が無理なく、
段階を追って確実にタックルできるようになる
というレベルまで、

言語化し整理できていたかというと
全然できていなかった。

技術を指導するというのは、

単にその技術を自分ができる、
やり方を知っているというだけでは
到底足りていなくて、

その技術がどのような動作によって
構成されているのか?
その中で特にキーとなる動作は何なのか?

まずそれを理解した上で、

それをどういう順番で
どんなキーワードを使って伝え、
かつ、
練習メニューにまで
どうやって落とし込むのか?

ここまで考える必要があるということを
改めて感じた。

ラグビーの指導って、
大変だな

でも、
私はこういうことを考えるのは、
苦ではないし、
むしろ好きだ。

自分がコーチに向いているかは、
まだわからないけど

短い人生、
好きなことを、
突き詰めていこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?