生きること。つくること。 ー 和田 尚美ーvol.1
第三回は
龍とも親交の深い
ファッションデザイナーの
NAO 和田尚美さん。
麻という素材で、
女性が美しく・麗しく・気品ある輝きを放つ
そんな洋服づくりを探求しつづける
NAOさん。
その、こだわりとヒストリーを
2回に渡ってお届けします。
― 洋服をつくりはじめたきっかけは?
龍多美子(以下、龍):
まず、NAOさんが洋服をつくりはじめたきっかけ
ってお伺いしてもいいですか?
NAO:リカちゃん人形ですね。
きれいなハンカチをスカートにしたり、
毎日着替えを用意していました。
親は呆れていましたけど。笑
龍:それはおいくつから?
NAO:もう、5~6歳から針を持っていましたね。
龍:すごい!やっぱり違うんだね。
NAO:母親がずっとお洋服を作ってくれていたの。
スカートなんかをいつも作ってくれていて、
余った生地をもらってリカちゃんのお洋服を作りはじめて
でも、だんだん物足りないし
母親の作ってくれるお洋服が
「柄とかダサくない?」
と思いはじめて。笑
一緒に生地を買いに行くようになったのが10歳くらいかな。
龍:それでもまだ10歳なんだ!
NAO:母親が選ぶ可愛い柄の生地じゃなくて、
無地でラインだけ入っていたり、大人な感じのがほしくて!
お洋服は買ってくれないけど、
何故か生地はたくさん買ってくれたんですよね。
龍:じゃあ、10歳くらいの時から
もう自分の洋服を縫い始めたってことですか?
NAO:そう。
まずは、筒状の布にゴムを入れただけの
スカートから縫い始めて。
そこから自分のウエストに合わせて
ベルトをつけて、
ホックをつけて、
ファスナーも手縫いで。
龍:じゃあ、その頃はまだ手縫いで?
NAO:他の部分はミシンだったんですけど、
ファスナーはアタッチメントがある
っていうことを知らなくて。
母もまだそこまでのミシンは持っていなかったし、
「ファスナーはなんでこんなに上手くつかないんだろう」
とずっと疑問だったんですよ。
龍:なるほど。
NAO:「なんでだ?」って思っていたんですけど、
アタッチメントがあるってことを知り、
家にあるものとは違うミシンじゃないとダメっていうことで
小6のときはじめて
自分用のミシンを買ってもらったんです。
誕生日のプレゼントにすごいおねだりをして。
大学入るまでずっと使っていましたね、
そのミシンは未だに母が修理をしながら使っていますよ。笑
龍:それは本当にすごいねー。
NAO:大学生になるとプロ仕様のミシンに買い替えて。
お安い値段でお仕立てしたり、
芸能プロダクションの事務所で
スタイリングのアシスタントをしつつ
修行しました。
龍:自分のブランドを立ち上げたのはいつでした?
NAO:事業としては今10期目ですが、
22~23歳のころからやっていましたね。
セミプロみたいな感じで。
龍:自分の感覚で縫ったものを売る感じ?
NAO:そうですね。
お友達から「この生地で作って」と頼まれたら
一緒に生地を買いに行って、
デザインを相談しつつ、
お仕立て代だけいただく。
当時はそんなかたちでやっていました。
― 日常をスペシャルにする、洋服づくり
龍:「麻」を使って洋服を作りたい!
って今のスタイルが決まったのは、
いつ頃なんですか?
NAO:子供が生まれて、
しばらく子供服を作っていた時期があって、
子供も喜んで着てくれていたし大ブレイクしたんですよね。
ちょっと違うかなぁと思い始めたタイミングで、
ちょうどUNIQLOやしまむらのお洋服が流行ってきたし
この際、自分のお洋服を徹底的に作ろう!と
「日常をスペシャルに」
っていう感じのお洋服の方にシフトしていった感じですね。
龍:その時点で、素材はやっぱり麻だったんですか?
NAO:最初はポリエステルとかも色々使っていたんですけど、
私の手に沿わない感覚があって。
相性でしょうね、きっと。
そんな時に麻とかガーゼを触ってみて、
手に沿う感じと、触っていてすごく気持ちいいし、
ハサミを入れた時の「サクっ」という音が何とも快感で!
化学繊維の変な滑り感がないことが、
すごく私の身体と心にフィットしたというか。
本当に、私の手と一体になって作業ができて
出来上がってからもどんどん自分の理想のかたちになるし、
どんどん麻の魅力に惹かれていきましたね。
龍:デザインは今のかたちが長いんですよね。
NAO:そうですね。
10年くらい変わっていないですね。
ナチュラルブームの時に小花柄でスモック型のワンピースも作ってみて
お客様のウケも良かったんですが、私が納得いかなくて!
そもそも私に似合わない!小花柄が!笑
龍:わかる気がする。笑
NAO:そういうラインや柄がかわいく似合う方ももちろんいて
「お金はいただけるけど、自分のテンションが上がらないな」
っていうことに気がついて
今のスタイルになったのはちょうど10年前ですね。
「やっぱり自分がつくりたいもの!」っていう風に。
そこで、
今のデザイン
麻でいかに美しいラインを出すか
っていうことに特化してつくりはじめました。
龍:素材を200%活かす形じゃないですか、
これ以上麻に合うデザインはないってくらい。
寧ろ時代の方がNAOさんに近づいていく感じですね。
最近私がよくお客様に言うのは、
「これ1000年使えますからね!」って。
「孫どころじゃなく10代いけますから」って!
NAO:確かに!笑
来々々世くらいまで使えますね!
龍:やっぱり麻と絹って人類が初めて出逢った繊維で、
神からの贈り物だと私は思ってる。
特に麻はここにきて、
やっとその良さが認められてきているから。
NAOさんやっとこれから世間がついてくるんですよ!
NAO:ファストファッションでも麻がすごく多くなりましたし、
そこでどう抜けていくかも今後の課題でもあり。
ただ、自分のデザインっていうのはすごく私は気に入っているので。
作りはじめた頃よりどんどん自分のお洋服は好きになってきています。
つづきます。
NAO 和田尚美
1970年 徳島県生まれ。ファッションデザイナー。
ジバンシー作のオードリー・ヘプバーンのドレス姿に一目惚れし本格的に服づくりの道を志す。
日本で唯一の「服装学科」を持つ文化女子大学にて被服構成を基礎から学ぶ、卒業論文は「オードリー・ヘプバーンとファッション」。
大学卒業後は徳島に帰郷し家庭科教師として勤務するも、1995年に再び上京。アパレルの制作だけでなく販売に関しても学びを深める。
再び徳島に戻り、結婚・出産を機会に子供服の制作を始めると、評判を呼び店舗での委託販売やオーダー受注を展開。
子供たちの成長を機に、「自分が着たい服づくり」にシフトチェンジ。
現在まで、麻という素材を活かし、女性が美しく・麗しく・気品ある輝きを放つデザイン、シルエットの洋服づくりを日々探求している。
オフィシャルサイト:http://www.naturalnao.com/
オフィシャルブログ:https://ameblo.jp/audrey-naonao/