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長男はギフテッド⑥

担任との関係性の悪化は長男の行動に顕著に現れた。

授業中に勝手に廊下へ出る。机の周りにもちもタブレットPCでゲームをする。音楽室に移動しない。体操着を脱がない。テストを白紙で出す。クラスメイトの足を引っ掛けて転ばせる。

毎日のように受ける担任からの報告に、最初は平身低頭に対応した。新しい担任との関係構築を親が壊してはいけないと思ったからだ。しかしそんな努力は無意味だと気付くのに時間はかからなかった。

一度学校に来ていただけますか?と担任は言った。電話ばかりで一度も会ったことがなかったので、長男の事を相談するいい機会だと思った。担任もきっと同じ考えなのだろう。と、この時は疑っていなかった。

仕事を抜け自宅から教室へ着いたのは、約束の時間を2分ほど過ぎた頃だった。

いらっしゃらないのかと思いました。担任の一言目に嫌な予感がよぎった。遅刻を詫びつつ向かい合わせに並べられた席に着く。今日は前向きに問題の解決策を話し合いにきたのだ。

しかし担任の表情に笑みはなかった。これがお子さんの席です。見て頂いた方が早いと思って。指が示す先には、足元に散らばったプリントやノート、体操着。4年生にもなってこれなんですよ、と。

ああ、この先生は一緒に子どもの教育について話し合いたくて私を呼んだわけではないんだ。ただ見せつけてやりたい、思い知らせてやりたい、それだけだった。協調性がなく授業の進行を妨げる問題児。担任の長男への評価はすでに定まったようだった。

長男が授業中に失踪したと電話を受けたのはそれからしばらくしてからだった。電話口の担任の声に緊迫感はなく、うんざりした雰囲気を感じさせた。

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