とある理系の研究室9 研究室辞めるってよ。

某国立大学の理系の研究室の話。

そこそこの大学のそこそこの研究室。国内外の学会にもコンスタントに出ていて、論文もそれなりに出している。活気もそこそこ。古き良き時代の雰囲気を残している研究室。

研究室辞めちゃった学生の話。

辞めてしまう学生、割といる。

理由は色々だが辞める人はいる。私の研究室では3年間で2人いた。長い歴史の中でポツポツといたことはあったらしいのだが、3年で2人は最多ペースとのこと。考察(主観)してみる。

学業優秀でも辞めちゃう時は辞めちゃう

1人は私の一年後輩で、学業優秀。というか首席だった。なお、私の研究室は人気はイマイチだけど、飛び級とか、首席とかそういう尖った人材が来がちである。何がそんなに魅力なのか謎である。

そんな優秀な学生が研究室に来なくなった。なぜか。

何をすべきか、考えることが難しい

研究テーマは指導マスターのいないテーマを選択していた。そのため先生から直接指導を受けることになっていた(期待もされていた)。同じく指導マスターがいない状態で前年卒論を完了していた私がフォローすることになった。

とはいえ、先生は放任主義なので、あまりあれこれ指示を出さない。最初は論文調べたり、実験のトレーニングしてみたり、手探りながら学生が自分から自分のやるべきことを意識してアクションしないと進まない。またそういった能動的な姿勢が大事だと思っている節もある。やることを自分で考えなければいけない状況に対して、かなりストレスを感じていたようだ。

とりあえず、私は先行論文の和訳と過去実験のトレースをやってみたらと声をかけた。

さすがというべきか、和訳は一瞬で終わり、実験のトレースは添削が不要なレベルの学生実験レポート風の報告書が瞬く間に出来上がっていた。

ただ、そこまでだった。そこから先、何をすべきかはやはり指示をしないと先に進まなかった。

「勉強≠研究」の考えについていけない?

勉強と学問の違い、勉強と研究の違い、高校と大学の違い、、、など似たような議論は多種多様にあるが、なんとなくそんなようなことが頭をよぎる違和感もあった。

正解が無数にあるまたは、どれが正解か自分で決める、といった、これまでの勉強ではあり得ない、研究とか学問で初めて出てくる(?)状況に耐えられないと言う印象だった。

課題(試験問題)を出してきた先生に、見解(解答)を報告したら、「君はそれが正しいと思う?その根拠は?なるほどじゃあそれが正しいんじゃないかな。間違ってはないと思う。以上」と模範解答や一つの正解を明示してくれず、正しいのかきっちり白黒つける答え合わせができなくてイライラしている様子だった。

研究には模範解答がないから皆苦労してる

当たり前だが、答え合わせは自分でしていくしかない。結論の妥当性検証も自分でやる というのが研究なのだから。査読というのも答え合わせっちゃ答え合わせだが。

予備軍は結構いる

きちんと一つの答えがないと許せない、模範解答通りでないといけないという感覚の人は学部生の時点で一定数いる。当然のことながら相対的に成績優秀な人(真面目な人)に多い。この辺を叩きのめすために学部生時代に学生実験で理不尽な再レポの嵐を吹かせるのだが。どんなに正解と思われる考察を書いても必ず再レポ。間違っているのではなく、他の考察の可能性が無数にあって、完璧なレポートというのは存在し得ないことを体感させる。そして懸命な学生は悔し涙を流す。

結局どうなった

半年ほどで件の学生は研究室に来なくなった。文献調査などで卒論を終わらせることもできたが、それもすることなく大学を去ってしまった。


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