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lemonade

おそろいの靴
おそろいの靴下
おそろいのTシャツ
おそろいのパーカー
おそろいのボトム
おそろいの帽子
おそろいのイヤホン
おそろいのぬいぐるみ
おそろいの香り

あなたとのおそろいのものばかり増えていく。

洋服も靴も、毎日付けるイヤホンも
リビングにも、身体から包まれるような香りも。

ずっと、一緒にいる。

そんな風になってしまった。

逃げたくても逃げられない。
離れたくても離れられない。

大好きなあなたは
仕事でまた数ヶ月わたしの住む街から
離れて行ってしまった。

仕事を終えて帰ってきたこの1ヶ月ちょっとは
週に何回も会ってデートをして
身体を何度も何度も重ね合わせた。

趣味嗜好が似ているから
映画を見たり展示会に行ったり
一緒にいて話は尽きなくて
手を繋いで歩いて目を見て笑い合って
じゃれ合って抱きついて
街中でもキスをした。

あんなにも2人でたくさんの時間を過ごしたのに
いつも時間はあっという間で
離れていると時間が過ぎるのが遅くて
それが不思議で仕方なかった。

お互いがお互いを想い合っているのは明白なのに
どうして違う家に帰らなければならないのか。
それが理解できなかった。

バイバイをした瞬間に
デートの余韻に浸るのに
あなたに会いたいと思ってしまう。

どこまでもあなたに夢中で
どんどん惹かれていってしまう。

あなたの優しさと愛情に包まれる。

When life gives you lemons, make lemonade.

このことわざを前向きに捉えられるあなたが羨ましい。

わたしは自分が欠陥品だとしか思えないから
そんな風には思えない。

自分を守ることしか出来なくて
立ち向かおうとなんて思えない。

弱くて臆病なわたし。

そんなわたしだから
あなたの持つキラキラした眩しさに憧れる。

とても、とても魅力的な人。
だから、本当は女性と話すのも目を合わすのも嫌。

あなたの魅力に気付かないで。
わたしだけのものでいて。
わたしだけを好きでいて。

そんな独占欲に飲み込まれそうになる。


あぁ。自分の醜さに吐き気がする。



旅立つ前日
あなたは時間を作ってくれた。

1日あなたと過ごせるから
わたしの気分は落ち着いていた。

楽しい時間を過ごして愛し合って
蕩けるように愛を囁きあった。
寂しいとも伝えて受け止めてもらった。
笑顔に包まれて幸せだった。

今日は、泣かずに「いってらっしゃい」が
言えそう。そう思っていたのに、
どうしても泣いてしまった。

突然、涙が溢れてしまった。

寂しさなのか不安なのか恐怖なのか
訳が分からなかった。

ただ、ただ溢れてしまった。

あなたのいない日常を
またひとりで過ごすのか。

困らせたくないのに
頭では理解してるのに
どうしても我慢ができなくなってしまった。

泣きじゃくった顔で
「いってらっしゃい」
を、また、告げる。

いつになったら慣れるのかな。
いつになったらひとりで泣かずに済むのかな。

一線を超えずに付き合っていきたいのに
どろどろと境界線が曖昧になっていく。

ブレーキがかからない。
惹かれることを止めることができない。

もう二度と
愛に堕ちることはしないと思っていた。

そう自分に言い聞かせて誓っていた。

それでもまた自分から
ずぶずぶと愛に沈んでいこうとする姿は
愚かで滑稽に映るのかな。

自分の恥ずかしさをさらけ出して
愛してるを叫んで
わたしだけのものになってと
伝えることができたなら

わたしのこのぐちゃぐちゃな気持ちは
少しは楽になるのかな。

それとも
毎夜、ひとり枕を濡らすわたしを
抱きしめてくれるのは
守ってくれるの人は
どこかにいるのだろうか。


ぐるぐると今夜もひとり悩んで
答えのない世界で迷い続けるしかできないのだろうか。


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