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心の拠り所


あなたとは寒い寒い冬の日に出会った。

テレビの天気予報でも
今年1番の寒さであると報道されていて、
初めてのデートの日、会いに行くのを
躊躇ってしまうくらいの寒さだった。

今となってはそれも、
ふたりの笑い話になっている。


あの頃は特に、あなたと深い関係を
望むなんて思っていなかった。

それでも一緒にいる月日が増えていく度に
自然とあなたに寄りかかってしまう
わたしがいた。

お酒を飲むことが好きなわたしたち。

赤ワインと日本酒を好むわたし。

ワインと大好きなパンとおいしいサラダを
合わせて食事をするのが好きなの。
と、言ったら

あまりその組み合わせで食事はしたことがない。
と、言うので

わたしの好みのお酒とおつまみで
一緒にお酒と食事をする機会がとても増えた。

赤ワインよりは白ワインの方が飲むかな。
と、言うので
家の中に白ワインがすごく増えた。

ワインの試飲会に行って
あなたの好みのワインを選んでみる。

今まであまり飲んでこなかった
白ワインもロゼもたくさんの種類があって
あなたと一緒に飲むようになったおかげで
わたしも知らない世界がぶわっと広がって
すごくすごく楽しい。

そんなわたしの食に関するセンスや感性を
あなたはたくさん褒めてくれる。

わたしが作る料理もおいしいと喜んでくれる。

季節の食材を楽しむわたしのそばにいてくれる。

口いっぱい頬張って悶絶してくれるあなたを
愛おしいと思う。すごくすごく幸せな時間。

それでも、楽しいことばっかりじゃない。

心の弱いわたしは
身体の不調や仕事に追われてしまうと
心がもやもやと曇ってしまう。

連絡したいな。助けて欲しいな。
でも忙しかったら迷惑かな。困るよね。
いつも、甘えていいのか迷ってしまう。

そんな時、
あなたはいつも決まって連絡をくれる。
タイミングが良すぎていつも驚いてしまう。

そんな話をしたとき、
きっと何かを感じているんだと思う。
テレパシーみたいな。

あなたは笑って
冗談のようにそう言ってくれたけど
わたしにはそれが嬉しかった。
心が繋がっているみたいで。


生理で身体がしんどくなる時期、
仕事もお休みの予定で調整していたのに
欠勤者が出てしまい急遽仕事になってしまった。

自分でも働けるか身体が心配で
頭がぼーっとし始めてしまっていた。

身体はだるいのに、頭は重いのに
考え込んでしまうことが多くて
あぁ。眠れなさう。困ったな。
そんな風に思っていた。

そんな時もまた、あなたから連絡が届く。

すぐさま助けを求めてしまった。

頭がぼーっとするの。
お腹も痛くなってきてる。
でも明日仕事なの。怖い。

あなたにはわたしの女性疾患の話もしてあるから
甘えてしまった。

あなたはすぐに飛んできてくれる。

玄関にあなたを迎えに行ったら
寝てなきゃだめだよ。
そう言って抱きしめてくれた。

あなたに寄りかかって身体を預ける。

そのまま抱っこしてくれて
寝室まで連れて行ってくれる。

ベッドの上で抱きしめてもらいながら
お腹の上に手を置いてくれる。

すぐに身体がぽかぽかして眠りについた。
一緒に眠ってわたしが寝返りを打つ度に
「大丈夫?」と声をかけてくれる。
眠りが浅くなって痛みが増してくると
抱きしめてくれる腕に力が増して
ぎゅうっと抱きしめてくれた。

生理でしんどいときに
誰かに甘えるなんてしたことなかった。

顔色も身体もぼろぼろな姿を
異性になんて見せられるなんて思ってなかった。


あなたに自然と甘えられたのは
以前、あなたが
生理痛だけは分かってあげられないんだ。
経験してないからね。
でも、身体の様子と顔色を見るだけで
想像以上にきっと辛いことは見てわかるよ。

そう言ってくれたからだと思う。

はっきりと
“わからない”
と、言ってくれたこと。
不自然な優しさの言葉で寄り添う訳ではなくて
分からないなりに理解してくれようとする
その姿勢が嬉しかったから。

だから、甘えることができたんだと思う。


朝起きてぼーっとしていたら
白湯を作ってくれる。

コーヒーも紅茶も飲めなくなることを
覚えていてくれて嬉しくなった。

こんな姿でごめんね。
昨日、眠れなかったでしょう?
いつも、甘えてばっかりで…。

そう言うわたしに

そう?俺は心の拠り所にしてもらえていて
嬉しいけどなぁ。
と、笑っておでこに頬にキスをしてくれた。

俺の持っていない部分に
すごく惹かれているんだ。
わたしと過ごす時間が大切で
癒してもらっているよ。

そう言って頭を撫でてくれた。


わたしたちの関係が上手くいっているのは
距離感を大事にしているからだと思う。

1歩踏み間違えてしまったら
すぐにお互い気付いて謝り合える。

そしてそれをあなたは笑いに変えてくれる。

そんな空気感が絶妙なんだと思う。


今夜はどうする?また来ようか?一緒にいるよ?
わたしは首を横に振って
きっと平気。辛かったら連絡する。
でも、たぶん声は聞きたくなっちゃう。

自然に甘える言葉が出てきた。

あなたは笑顔になって
連絡待ってる。
そう言ってくれた。


元気になったらまた一緒に食事をしよう。
そのお誘いに
わたしは笑顔で頷く。

ひやおろし、買ったから一緒に飲もうね?
わたしが誘うと
あなたは大喜びの顔してくれた。

また、寒い冬の日におでんを食べよう。
そんな約束もした。


あなたと過ごす時間を大切にしていきたい。

楽しいことの共有はもちろん
辛いことも受け止めてくれる。

そんなあなたを、わたしも大事にしたい。
あなたがわたしを
大事に扱ってくれているように。

もう少しだけ、弱いふたりで寄り添い合わせて。

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