人生の引き算 cotreeのカウンセリングを受けた話

人生の「引き算」

こんな言葉が最後に自分の中から出てきた。

あれもこれもと自ら背負ったものが、いつしか自分を苦しめていたようだ。

コロナ禍の中、受験生の息子を抱え、今、我が家は厳戒態勢。
息子への感染リスクを下げるため、家族全員が人との接触を自粛中。

飲み会や食事会はもちろん、かれこれ10年以上続いていた同僚との週一のランチ会も、私だけ今年に入ってずっとお断りしている。
受験真っただ中の今は、友人にマスク越しで会うのすら控えており、仕事以外で誰かとおしゃべりすることが、めっきり減ってしまっている。

一方で、子供の送迎や仕事、家事に忙殺され、まとまった時間が取れない。どういうわけか自粛中なのに、自粛前より忙しい。

最近は、noteを書くこともSNSで誰かと話すことも、趣味も、以前ほど楽しめない。
心配事や不安、いろんな感情が頭の中、心の中でぐるぐると渦を巻いていて、書きたい言葉、言いたい言葉がうまく出てこない。
誰かに話したくても、書いて伝えたくても、心の交通整理ができなくて、言葉が大渋滞、一歩も前に進めなくなっていた。
もちろん、一つ一つを見れば楽しいことはあるのだけれど、それが終わるとまた心の渦に飲まれて落ち込んだ。

そんなとき、マリナ油森ちゃんが、cotreeのカウンセリングを受けられたというnoteを更新されていた。

心が元気でもカウンセリングを受けていいし、自分の現在地を確認するためだけでも、カウンセリングを受ける意味があるという。
受けてみたいな……でも、お金がかかるし……とためらっていたところ、

無償プログラムがあると教えてくれた。

「新型コロナメンタルサポートプログラム」
最大1万人を対象にオンラインカウンセリングが1回受けられるというもの。(内容は新型コロナに関するものに限らないそうです)

これはチャンスと、さっそく申し込んだ。

自分より年上の同性ほうが、今の自分の悩みをよく理解してくださりそうということで、60代の女性のカウンセラーさんにお願いした。

午前8時、パソコンの前に座る。
事前アンケートで悩みをお伝えしておいたので、話がとてもスムーズ。また、自分のことを真っ白の状態から話すのは苦手なので、一つ一つ質問していただいて、それに答える形を取っていただいた。

現在の自分のこと、家庭の状況、仕事の状況、夫婦関係など順を追って聞いてくださったので、とても話しやすい。
一通り話したところで、カウンセラーさんが問題を整理してくださった。
私がモヤモヤしている点は、次のとおり。

1 子供の将来
2 経済的不安
3 仕事の先行きの不安
4 私たち夫婦の健康状態
5 親世代の介護への不安
6 コロナ禍に対する先行きの不安

カウンセラーさんは、うなづきながら聞いてくださって、「とてもよくわかる」と共感してくださった。「ここまで、よく頑張って来られたと思う」とねぎらいの言葉をかけていただいたことで、少し気持ちが緩んだ。
そして、「みんな同じように抱えている問題」との指摘を受けた。
おっしゃるとおり、子供がいれば、いつまでたっても心配は尽きないし、親がいれば看取りの問題は発生する。自分も夫もいつかは老いて死ぬし、新型コロナの問題は、全世界の人が一様に不安を抱えている。

自分だけじゃないということは、きっと隣の人とも同じように悩みを共有できるということだ。外に向かって声を上げてみれば、悩みを打ち明け合って励まし合えるかもしれないと気づいた。

それから、もう一つが、私の個人の悩み。

1 楽しいと思っていたことが楽しめない
2 人の目が気になる、自信がない
3 認められたい、一番になりたい気持ちが強い
4 欠点を直したい

これについては、会話の中から一緒に問題の根っこを探してくださった。

1 楽しいと思っていたことが楽しめないことについて 

先に書いた、現実に起こっている家族や世の中の諸問題が、自分の心を大きく占領していて余裕がなくなっているのではないかという結論にすごく納得。
うすうす気づいてはいたのだけれど、こうしてはっきり言語化してくださって、「ああ、やっぱりそうか」と腹落ちした。
「これは自分の能力不足への言い訳で、本当はもっと頑張るべきではないか」「周りの人と比べると、私はまだまだ恵まれているのだから、こんなことを言ってはいけない」という思いがずっとあったんだけど、それが間違って考えで、自分を苦しめていただけと気づいた。
今は充電期間と思って、何もしないことを楽しんでほしい」という言葉に救われた。

2 自信がないこと
3 認められたいことについて

「人の目が気になるようになった、自信をなくしたと感じるような具体的な経験はありますか?」
若いころは、負けず嫌いでイノシシのように猪突猛進タイプだった。
希望の高校・大学に入って、安定した仕事に就くことが人生の目標だった。それに向かって一直線、そして、自分の頑張りで叶えてきた。
就職してから、おおざっぱで詰めが甘く、ケアレスミスが多い自分を見つけてしまった。
同時に、周りの人から、「あの人のここがダメだ」「この人のここが嫌い」「あんなふうに言われて傷ついた」という言葉が聞こえる。ダメな自分もそんなふうに言われないように、できない人のレッテルを貼られないように、誰かを傷つけないように自分の意見を押し込め、言動に気を付けた。やりたいことより失敗しないこと、嫌われないこと。それでもおおざっぱでミスの多い性格は変えられない。どんなに努力してもできないことが多くて、自分のできなかったこと、失敗ばかりが気になるようになった。
できる人になりたい、人を傷つけない人になりたい。そのためにもっと頑張って、人から認められる、役に立つことをしたい。
でも、できない。人と関わるのが怖くなった。

書くこともそう。書き始めたばかりのころ、ちょっと褒められたせいで、もっと上手に、もっと上を目指さなければと焦っている。

世の中には、できることとできないことの二つしかないんですよ
できないことは、できないとあきらめること。できることに目を向けて、努力するほうがいいとアドバイスをもらった。
その上で、「今は充電中ですから、そのままでいいのでは?
そうだった。今はほかにやるべきこと、考えることがたくさんあって、エネルギーがそっちに使われている状態だった。
心配事が多いと、どうしてもそれに釣られてできないことや欠点を探してしまのだそう。私の場合が正にそう。できないことや欠点ばかりに目が向いて、自分ができていること、やってきたこと、自分や周りの人の良いところに目が向かなくなっていた。

「そんなに何もかもの責任は取れないよ?」
最近夫によく言われる。
子供の将来、仕事のこと、何でもかんでも自分の過去の言動に原因を探すなと言われる。
カウンセラーさんからも同じように言われた。
同じことを言っても傷つく人がいれば、傷つかない人もいます。どう思うかは相手によります。この人を傷つけてやろうと思って言ってないのですから、それでいいんです
今までの子供への関わり方が悪かったのではないか、あの人へこう言ったから嫌われたかもしれないと悔いることが多かったが、それも考える必要がなかったということ。

4 欠点を直したい

欠点は、こうしてくよくよ考えること。もっと上を目指さなければと焦ること。時々悔しくて意地悪な気持ちになること。
全く直さなくていいです。誰にだって欠点はあるんです。そのままでいいんです。それより自分や周りの人、会社の良い所を探しましょう
この数か月、息子の受験を見てきて思う。
はっきりいって息子はあまり勉強ができない。学力の面から言えば行ける大学も少ない。
でも、彼の性格は親の目から見ても本当にすばらしい。優しくて、気立てが良くて、誰にでも分け隔てがなくて、気遣いができて、自分の意見がはっきり言える、本当に良い人間だ。そんな彼に学力偏差値だけで優劣をつけられるのが本当に悔しい。なんとか彼の良い面を最大限に生かした生き方を見つけてやれないのかと親として真剣に考える。今は、彼の良い性格が失われず、楽しく通い続けられる進学先が見つかることを願っている。
そういうことだ。人の良い面を見つけるということ。良い面を伸ばすということ。それは自分も同じ。

子供の将来に関しては、カウンセラーさんご自身の経験を踏まえて、次のようなアドバイスをいただいた。

1 親が楽しく生きていることを見せる
2 「何かあったら力になる」と言うことだけ伝えて、後は見守る
3 何かあったときに、対処できる心の余裕と経済的余裕を持っておく

わずか45分のカウンセリングだったけれど、話すことで整理され、見つけたものはたくさんあった。

1 受ける情報を減らすこと
2 そのままでいいということ
3 とにかく健康でいること(睡眠が大事)
4 やらなくていいことを一つずつやめていくこと

人生の引き算

自分を叱咤し、おしりをたたき続けることが、よりすごい人間になれる道だと信じていたけど、どうやらそうではなかった。
自分の肩に載せたもの、一つ一つは小さくても、それが積もり積もってすごく重たくなっていたようだ。気づけば載せなくていいものまでのっけて走っていたらしい。そりゃ、肩もこるし、余裕もなくなるわ。

私には「引き算」が必要。
何もしなくても、ほんの5分、10分の隙間で飲むお茶にほっとする。ぼんやり空を見上げて、いい天気だなと感じる。
そういう小さな幸せでいい。

十分に充電できれば、きっとまた自然に楽しめるようになりますよ。

言葉の渦の真ん中に、ぽっと希望の明かりがともった気がした。


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