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書いてきたもの13〜備忘録として〜

数年前、天狼院書店のライティング・ゼミを受けていました。
そのとき書いたものが散逸しないように、ここに残しておこうと思います。
気になるものがあれば、ぜひ読んでみてください。
(読むのにそれほど時間はかかりません)


22 オススメの「阿波おどり」あります

「初めて買ったCD(当時はレコードだったけど)は何ですか?」
と聞かれると、ちょっと恥ずかしい。
私が買った初めてのレコードは「よしこの」だからだ。

「よしこの」は、簡単にいえば、阿波おどりのメロディに歌詞がついている曲。「エライヤッチャ、エライヤッチャ、ヨイヨイヨイヨイ、踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損損♪」という阿波おどりの掛け声を、歌にして歌っている。

私が初めて買ったレコードは、まあいえば「阿波おどり」のレコードということだ。それほどに阿波おどりが好きだった。

多分、買ってもらったのは幼稚園に上がる前だった気がする。
覚えている光景がある。
阿波おどりが近づく夏の暑い日。
茶の間の窓を全開にして、外の風を部屋いっぱいに入れていた。当時はエアコンもない時代。室外機もなく、窓を全開にすれば、外から暑いながらも、ざわっと風が吹き込んで、体感温度を下げてくれた。
私は、母が手作りした肩のところを紐で留めただけの派手な花柄のサンドレスを着て、てんとう虫の形をした小さなレコードプレーヤーから流れる阿波おどりのリズムに合わせて、手を挙げ、腰をちょっと落として、見よう見まねで阿波おどりを踊っている。楽しかった。もうすぐ阿波おどりが始まって、両親が見に連れて行ってくれる。ワクワクしていた。
延々とレコードを回し続け、汗をかきかき、踊っていた。

徳島に生まれ育ったというと、「阿波おどり踊れますか?」と聞かれることがある。この質問、実は結構答えにくい。
阿波おどりの2拍子のリズムに乗ることは簡単だ。これはきっとDN Aに組み込まれていると思う。あの鉦の音を聞けば、今でも心がざわめくし、リズムに体が勝手に動く。
踊れるかと聞かれれば、答えはきっとノーだろう。
全国の皆さんが知っているような美しい踊りは、できない。

阿波おどりは、徳島の観光の目玉だ。実際、阿波おどりの4日間は、徳島市内の宿泊施設はどこも満室、徳島駅前には人が溢れる。
観光パンフレットを持ってそぞろ歩く人やスーツケースを下げた人が、ここそこにいる。
いつも閑散として眠っているような地方都市が、一気に目覚める一大イベントだ。
その賑わいが、祭りのボルテージを上げる。
煌々とライトで照らされた演舞場では、美しい有名連の踊りが披露される。
それは見ていて、気持ちのいい踊りだ。ショーとしても完璧。

でも、と思う。
でもそれだけじゃないんだよなって思うのだ。
阿波おどりの楽しさは、これだけじゃない。
あの子供の頃の夏の日の私のように、上手くもない、リズムにあっているかどうかもわからない、でもなんかめっちゃ楽しい、それも阿波おどりだと思うのだ。

そんな阿波おどりが、まだあったというお話。

踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損なのだ。

本編はこちら👇


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