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ケニー・ドーハム「マタドール」(1969) Smile 苦笑?

まあ、どうでもいい詳細というか粗探しというか、今朝、SpotifyでJackie McLeanというサックスの大御所のPlaylistを流していたら、「あれ?」と思って何度も聴き返しても謎なこと発見。

サックスのアドリブソロが短いし、中途半端に終わってしまって、コーラスの残りをピアノがバッキングでつないでコーラスの終わりまで来てピアノ・ソロが始まっている。これって、ジャッキーさん、ソロの場所わからなくなってしまった?

何度か聴き返して、一応の仮説というか想像にたどりつく。

これ、コーラスの最後に余計な2小節がついてる紛らわしい曲(以下Ebキーですが)。

当然、あたまのメロディーのときは最後の2小節をやって、それぞれのアドリブに移るのだが、これって想像するにアドリブの段取りとしては、(1)このまま忠実にやる、(2)最後の2小節はぶいてよくある32小節としてアドリブする、さらには(3)32小節でアドリブやって自分のソロの最後のところは2小節くっつける(示し合わせるのが難しいから、事前に譜面で32x2コーラスで最後2小節とか書いてないと無理か)。こういう、最後におまけ小節あるスタンダード何曲かある。

ジャッキーさんの名誉のため何度か録音を聴いてみると以下が判明(おそらく)。

メロディー34小節の後で、トランペットのケニー・ドーハムがソロを始める。1コーラス目は最後の2小節を明らかに付けている。ピアノがそのお尻にガーンとコードで区切りを切ってくれている。これ、最初の4小節とかトニックのところで伸びやかに青空にむかって飛んでくようなフレーズがでて気持ちいいのですが、ドーハムさん、2コーラス目では「みんな大丈夫?これ最後に2小節つけて今2コーラス目だからね?」と言わんばかりに、5-8小節はメロディーを引用して注意喚起。

それでいい感じのセカンド・コーラスを展開していくのだが、3番めのコーラスに行くとき、あれ?いま2小節すっとばしちゃったんじゃないの?ソロだけ聴いているとそういう風に聴こえてしまう。耳がいい方、ベースラインとかピアノのコードとかここどう対応してたんでしょうか?まあ、曲のコード進行自体がそんなにメリハリあるわけじゃないので、時にめぐってくるディミニッシュみたいな響きくらいしかソロ位置判断の手がかりがわからないんですが。まあ、それでどうにか3コーラス終わって、それっぽい終わりの2小節の後にジャッキー・マクリーン登場。

この人の荒削りながらも、どしってしていて、どこかもの悲しくて、音を溜め込んでから出してくるリズム感のソロはいいですね。時々、ピーと港の汽笛みたい?にジャンプしてヒットする高い音もいい。

1コーラスを、いい感じのジャッキー節で語り始めたな、いいな、と思っていたら、あれ?いま最後の2小節飛ばしてセカンド・コーラス行っちゃった?それでもカッコいいフレーズでセカンド・コーラスを展開、と思ったら、セカンド・コーラスの後半の頭あたりで、「オレのソロこれで終わりね~」みたいな感じでフェードアウト。それをピアニストがバッキングでつないで後半終了させて、ちゃんと最後の2小節もつけてからまずはメロディを引用して立て直してから自分のソロを始めている。

これって、事故?ジャッキーとしては、ドーハムさんよ、あなたのソロからなんだか段取りがよくわからなくなってしまったんで、このテイク無しねみたいな感じの途中ギブアップなのではないでしょうか?やりなおそうよ、というような。最初は、プロでもアドリブ中どこやってるかわからないくなる現象があるのかなと一瞬思ったが、やはり彼らは僕らみたいな一般人ではないので、アドリブで語るときはコード進行のどこにいるかわかってると思う。ジャッキーさん、すみませんでした、あなたがソロの場所わからなくなって中途でやめちゃったと一瞬思ってしまいました。

さらなる謎は、なぜこの録音をレコードに入れているか。ほかにちゃんと段取りできたテイクはなかったのか?段取り悪かったがこのテイク、アドリブの出来が特別に良かった?この点については、同アルバムにはいっている別のスタンダードのBeautiful Loveのジャッキーのソロは、サックスに30kgくらいの重りをつけて吹いているかのような彼がくりだす重たいリズムに、時折いれる早吹きがきまっていて、ものすごくいい。このSmileは?、当然、それなりにかっこよくいいんですが、段取りミスったのに採用するほどではなかったのではという気もする。

チャーリー・チャップリン作曲のこの曲、悲しいときも笑顔で、という唄なので、想像するに、演奏者たちは、あれっ段取りうまくいかなかったねとSmileならぬ「苦笑」して、でもけっこういいソロの展開もあったよな、ピアノ・ソロいい感じだから採用!となったのかな。ちょっと間違ってもSmile!

唄のようにSmile even though it's breaking と、ピアノのボビー・ティモンズに笑いかけているジャッキーを思い浮かべてしまう。

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