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【リサーチ旅・神戸】ギネス公認 世界最高齢のジャズトリオと電話が繋がった日の緊張感

2年ほど前。ある音楽番組で兵庫のロケが決まり、リサーチを進めていた時の話です。

兵庫と言えば神戸。神戸の音楽と言えば、真っ先に浮かんだのがジャズでした。歴史あるジャズバーか、夜景の似合う港か、最後はそんなシーンで歌を撮影できたら最高だな、とクライマックスのシーンが浮かびました。リサーチする時はいつも「こうなったらいいな」というゴールを自分の中に思い浮かべて、そこに向かって調べていきます。偶然ではなく、必然に持っていく。つまりこの時点では、面白い画は想像できていても、取材対象は未定でした。

では、その神戸ジャズ界隈で最も画になる人物は誰か?もしも最高齢のジャズマンがいたら面白いだろうなと、また想像が膨らみました。ゴールが見えたので、いよいよGoogle先生の出番です。打ち込む検索キーワードは「神戸 ジャズ 最高齢」。するとヒットしたのが、ギネス公認 世界最高齢ジャズトリオ「ゴールデン・シニア・トリオ」の御三方でした。

なんと、最年長は御年92歳!?

果たして彼らは実在するのか?現役で活動中なのか?なんにせよ、まずは一度繋がらなくては。

幸運にも最年長92歳のリーダーの連絡先を入手することができました。電話番号を打ち込む瞬間も、着信音が鳴っている間も、自分の心臓の音がドクドク鳴っているのが分かるくらい緊張…ようやく繋がった瞬間、元気でハツラツとしたお声を聞くことができました。こちらの企画意図を話すと、幸いにも快く承諾してくれて、マネージャーさんともつながることができました。どこで演奏しようか?何を弾こうか?fly me to the moonがいいんじゃないか、話がふくらんでいく。少しずつ、希望が湧いてきました。

ただ本音を言えば、この小さな喜びや、わずかな希望を、誰かと共有したい気持ちもありました。「いい人見つけました!」とか「面白いロケになりそう!」とか話したい。でも、本決まりではない限り、誰にも話せないのが、私の仕事のちょっと辛い部分だったりします。嬉しさを表に出すこともできない。感情をぎゅっと自分の中で抑え込みます。だから、自問自答。あまりに順調に進みすぎていないか?とか、果たしてこの方向で合っているだろうか?とか。どうしたらもっと、番組が面白くなるか?そうやっていくと、よりいい方向性が見つかったりすることもあります。

今回に関して言えば、彼らで間違いないという確信がありました。私が取材した当時で、最年長は92歳のヴィブラフォン担当。84歳のピアノ担当。81歳のベース担当。終戦直後のジャズ黄金期から、米軍キャンプや映画・ドラマ音楽などで第一線で活躍してきた方々ばかり。2015 年 7 月にギネスブックに「世界最高齢のジャズバンド」として認定された、日本ジャズ界の重鎮トリオ!

掘れば掘るほど、興味の惹かれる情報が見つかっていきました。リサーチが進むにつれ、電車に乗っている時も、食事している時も、私は早くスタッフに情報を引き渡したくてウズウズ。小脇に爆弾を抱えたまま、日々を過ごす感覚でした。この焦りは心地よくもあり、自分一人で抱えるには荷が重い時もあり…精神状態が不安定です。それでも、撮影が叶って、放送まで終えると、「無事終わった…」と、ふっと解放された気分になります。放送後しばらくは彼らの情報から離れて、心が落ち着いてからお礼の連絡を入れたりしています。

あれから…「世界最高齢のジャズバンド」は、昨年解散コンサートを行ったと記事で知りました。彼らに出演して頂いて、出会えて、本当によかった!

昨日まで知らなかった人と繋がって、その人が今日一日、主人公になる日をセッティングする。それが私にとってのよろこびであり、リサーチの仕事を続ける理由です。


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