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出版社への小説の「持ち込み」は嫌がられる?

文芸エージェントの仕事とは?

いつもお世話になっております。
今、****さんの「***」という原稿を弊社でお預りしています。
たいへんお忙しいと思いますが、ご興味をお持ちでしたら、
ご検討いただくことは可能ですか? 
お返事、お待ちしております。

 そんなメールを編集者さんに1本送るところから、私の「持ち込み」は始まります。編集者さんから「ぜひ送ってください」とお返事をいただくと、著者略歴と作品概要をまとめた企画提案書(A4で1枚程度)、サンプル原稿(または完成原稿)をメール添付で送ります。
 そこからは待つこと短くても数週間。「面白いので、上司に相談してみます!」「このあたり、もう少し修正していただけるなら企画会議にかけます」や「一度、著者さんにお会いさせてください」などのご連絡があれば、企画を実現に導けるよう動いていきます。このような出版社への作品の持ち込みは私の日常業務で、作家さんや編集者さんとも楽しく仕事をしています。

「小説の持ち込みはやめたほうがいい」理由

 ところが、SNSで小説家志望者や小説家による出版社への持ち込みに関する論争が起こったことがありました。きっかけは、とある人気作家さんによる<小説家のサバイバル本>において、作品を世に出すためのお勧めの方法として「持ち込み」が紹介されていたことです。「持ち込みは、忙しい編集者にとって迷惑なので止めた方がよい」「持ち込みより新人賞のほうが生き残る確率が高い」といった反対意見のほうが目立っていたように思います。

 マンガ家の場合は、出版社でも編集プロダクションでも、新人の持ち込み原稿を受け付けているところが多くあります。対して、小説の場合はほとんどありません。市場の狭さもさることながら、その場で結論を出しやすいマンガに対して、小説は編集者さんが検討するのに時間がかかります。
 また、新人賞などを受賞すると出版社のバックアックで、その後しばらく執筆の機会を与えていただけることが多いため、それが生き残る確率につながっている、ということも言えそうです。
 そうした意見はすべて一理ありますが、エージェントとして日常的に持ち込みをしている私としては、あまり出版業界の常識や同業者・執筆仲間たちの反応にとらわれずに、興味がある方は持ち込みに挑戦したらいいと思っています。

持ち込みは自信作にかぎる

 ただし、重要な前提があります。
 持ち込みをするなら、作品に自信がある場合のみ、だということ。
「ちょっと書いてみたけど、作品の評価が知りたい」「まだ本になるレベルじゃないとは思うんだけど、読んでみてほしい」のような動機でしたら、まずは新人賞や小説投稿サイトで腕試しをすることをお勧めします。
 忙しい編集者さんが持ち込みに対応してくれるのですから、「絶対に相手の時間を無駄にはしない」ぐらいの気持ちが持てる作品が望ましい。その気迫が編集者さんに伝われば、読んでくれるでしょう。気に入ったら、その作品は何らかの事情で採用されなかったとしても、「次の作品を読ませてほしい」「こんな作品を書いてほしい」といった次の展開へとつながる可能性はゼロではありません。

どうか基本的なマナーを忘れないでください

 自分のために時間を割いてくれることへのお礼や配慮の気持ちも忘れないでいてほしいと思います。それは、文芸作品の持ち込みにかぎらない、基本的な仕事のルールに近いものです。
 そのことさえ分かっていれば、編集者さんにとって何より重要なのは、作品が素晴らしいこと(願わくば、それが売れること)なので、嫌がらずに対応してくれると思います。
 そういう持ち込み方にはちょっとしたコツがあります。
 これから、売り込むのが下手な方にも参考になるように書いてみたいと思います。(続く)

*文芸作品の持ち込みに関するご質問があれば、コメント欄にて受け付けております。直接お返事をさせていただく場合、note記事にてご質問内容に触れる場合とあると思いますが、あらかじめご了承ください。

お読みいただき、ありがとうございました!