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あの子どこの子

「お前、どうしてここにいるんだ。」
「あの事件のことだよ。」
「あの事件か。俺の知っていることはもうないぞ。」
「お前が犯人だろ。」
「おいおい、何故、彼女を殺さなければならないだよ。」
「お前、あの事件の前、10年前のあのことで彼女と揉めていたんだってな。」
「誰から聞いた。」
「あいつだよ。」
「あいつか。余計なこと話しやがって。しかし、それだけじゃ俺が犯人ということにはならない。何か証拠でもあるのか。」
「これだよ。」
「何故それが証拠になる。」
「これのここにあれがついているだろう。検査すればすぐに分かる。」
「ふん。まさかにそれのそこにそれがついているとはな。いつから俺を疑っていた。」
「あのときだよ。」
「あのとき?」
「お前と、あそこで10年ぶりに再会したときさ。」
「ああ、あのときか。しかし、あのとき俺は何か変なことを言ったか。」
「あのことについてお前が知っていたということだよ。」
「おいおい、あの人に聞いただけかもしれないだろ?」
「いや、あの人は、絶対に言わない。『このことについては話したくない』と俺に言っていた。」
「そうか。失言だったな。」
「そして、巫女ときのこの件もお前が犯人だろ。」
「ふん。そうさ、巫女ときのことこねこの子とたけのこの件も俺がやった。」
「随分と簡単に認めるんだな。」
「ああ、こっちにはこれがあるからな。」
「隠し持っていやがったか。」
「俺が巫女ときのことこねこの子とたけのこの件についてのこのこと認める訳ないだろう?」
「そうだな。しかし、10年前のことがあったとはいえ、何も彼女を殺すことはなかったんじゃないか。」
「お前に何が分かる!10年前の一件で俺は、あれがこうしてああなって、そうしてどうしてかあれとそれとあれこれを失ったんだ。」
「しかし、お前には、あれとそれが…」
「うるさい!俺も最初はそう思った。しかし、あいつなんて言ったと思う。『あれがそうなのはお前がああだからだ』だって。」
「そうか。そうだったのか。しかし…どうやら時間が来たようだ。」
「この音は!クソ!時間稼ぎだったのか!」
「ああ、あのこともあるし、お前には同情する。しかし…」
目覚ましの音。ここで目を覚ます。
締切間近だが、何のアイデアも浮かばず、気づいたら寝てしまったらしい。
書き出そうとする。しかし、何も思い付かない。
何も思い浮かばないのでスマホでエゴサする。もしかしたら、作者の俺も知らない犯人を、誰か考察しているかもしれない。
「N氏 考察」で調べる。
一件のツイートが目に入る。
「N氏の作品初めて読んだ。全てを語らない語り口が想像の余地を残していて、考察しがいがあって面白い。」

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