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「その日、私が生きた証」を残す音声配信【しゅねさんインタビュー】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『しゅね's up』を配信するしゅねさんにフォーカスします。

しゅねさんは、埼玉育ちで東京を拠点とする現役ヘアメイクであり、メイクアップ講師です。自身の店を持つフリーランスとして、芸能人などを担当することも多数。配信スタートは2020年9月で、「メイクアップによって心の幸せ度が上がること」を目的に、収録トークと生配信を続けています。

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異色の経歴も印象的な彼女が、音声配信にこだわる理由、大切にするものと目指すものとは。仕事観と直結するという、生の声をじっくり聞きました。

(取材/文:鼻毛の森

自衛官からヘアメイクに転身

──ヘアメイクのお仕事はいつからされていますか?

しゅね:23歳のときからです。高校卒業から3年間、自衛官として従事していたのですが、21歳で退職して、フリーランスのヘアメイクとして活動を始めました。

──自衛官としても活躍されていたとは!

しゅね:航空自衛隊の厚生員という職種で銀行業務的なことを担っていました。当然、自衛官としての厳しい訓練もみっちり受けました。

──自衛官になった経緯も気になります。

しゅね:私が通っていた高校は、自主自立を校風としていて。制服がなく、校則もなく、勉強さえしていればあとは自由だったんです。でもそのぶん、協調性があまりにもないなという自覚があって。「同じ釜の飯を食べるという経験がしたいんです」と、入隊試験で面接官に素直に伝えました。

ただ、ストレスからか、入隊後は肌荒れがとにかくひどくなっちゃって。周りが男性だらけでその直し方もわからないし、給料を化粧品やスキンケア用品につぎ込んでも解決しないし……。結局「これはダメだ、彼氏できない」と思って、辞めました(笑)

──そして自衛官からヘアメイクとは、すごい転身ですね。

しゅね:当初は、化粧品やスキンケア用品を勧めるデパートの美容部員になりたかったんですよ。学生の間に販売員のアルバイトも経験していて。

でも、「このお客さんには合わないかもしれないなぁ」と思いながら、お店で扱える中で高い商品を売ることに疑問があって。言われるがままに散財したかつての自分を重ねてしまったんですよね。そこで、美容師の専門学校で国家資格を取得したんです。

さらに美容学校では学べないメイクの勉強のために別の学校にも通って、フリーランスのヘアメイクとしてデビューしました。管理美容師の免許も取得して、美容師免許を持つ人を雇えるようになったので、2008年から自分で予約制のお店を構え、思いっきりお客様の悩みに寄り添っています。

──現在はメイクアップ講師としてもご活躍ですね。

しゅね:「女子を元気にしたい」というのが私のヘアメイクとしてのモチベーションなのですが、いちヘアメイクとしてだと、いちどに元気にできるお客様の数がどうしても限られてしまって。より多くの人に「正しいメイクで気持ちをメンテナンスしましょう」と伝えるには、講師活動という手段が最適だったんです。

顔と心の繋がりって深くて。例えば、見た目がキレイになるだけで、女性も男性も気持ちがポジティブになれたりするじゃないですか。心理系カウンセラーの資格も武器にして、「きれいになって明るくなれば人間関係も好転するよ」ということが広めたいなと。おかげさまでいろいろお声がけをいただいて、さまざまな場所で講演させていただいています。

──セクシー女優さんのヘアメイクとしてもご活躍されています。

しゅね:一時所属していたメイク事務所に、タレントさんや夜の街のお姉さんの宣材写真を撮影するスタジオがあったんですよ。

その中にセクシー女優希望の女の子がいて。私が担当して撮影をして面接に挑んだんですが、「この写真と同じメイクで撮影に来てくれるなら、専属契約します」という連絡があったそうなんです。これをきっかけに、現場にも立ち会うことになりました。

──現場に足を踏み入れた印象はいかがでしたか。

しゅね:プロの仕事現場でしたね。私が思っていた業界のイメージと全然違いました。「この業界で一番になりたい!」と燃えていたり、かたや兄弟の学費や奨学金の返済を目標にしていたりと、聞けばどの子もきちんと悩み、考えていたんです。

もちろん私もプロとして、どんな現場にも行くのですが、「セクシー女優さんに元気に活躍してほしい」という思いが強くて。フリーとして活動するいまも、引き続き関わらせてもらっています。

配信のコンセプトは「別世界の印象を変えたい」

──Radiotalkを始めたきっかけは?

しゅね:ある日、ヘアメイクを担当するセクシー女優さんがRadiotalkを教えてくれて。彼女は好きなお笑い芸人さんの配信を聞くために入れていたそうなのですが、「そういえばしゅねさん、ラジオやりたいって言ってましたよね」と、Radiotalkでの配信を勧めてくれたんです。

──もともとラジオはお好きだった?

しゅね:はい。かねてからラジオ好きを公言していて。中学時代に伊集院光さんのラジオにハマってました。今日あったことを面白おかしくして、お便りを広げて、リスナーさんとみんなで笑い合ってくれる時間が、とにかく楽しかったんですよね。

私もあんな風にラジオで喋りたい、仕事にしたいっていう憧れは持ってましたね。学生時代の彼氏のお母さんから「声がいいから、ラジオやるなら応援するよ!」って言われて、その気になっていたのもあります(笑)

──配信のコンセプトはどのように考えましたか?

しゅね:セクシー女優さんが縁だったのもあって、まずは(AV)業界のことを話したいなと思いました。せっかく話すなら、裏方目線で「みんなそれぞれ一つのお仕事として頑張っているんだ」ってことを伝えて、かつて私が抱いた「別世界」の印象を変えたいなと。暗い話にせず、誰も傷つけず、明るく知ってもらいたいって考えて、私が好きな伊集院さんのように話そう、と意識しました。

それと、私の専門であるヘアメイクの話。ただ、私は道具に興味がないと言いますか、お化粧品は何でもいい派で、テクニックだけを伝えたい人なので。このあたりはなんとかネタが尽きないように、少しずつ出していっています(笑)

──どんなリスナーを想定していますか?

しゅね:講義と同じ感覚なんですが、お化粧に興味がある女性や外見を気にする男性、自分を何とかしたいと思ってる人に、まずは「何とかなる」と自信をつけてもらいたいと思いながら配信しています。

リスナーさんからは「作業中に心地いいトーンだから聞いてます」と、完全なラジオファン目線で声をいただくこともありますね。結構発声は聴きやすいようにと気をつけているので、嬉しいです。

──リスナーとの交流で番組名と配信者名が決まった、というエピソードが印象的です。

しゅね:番組開始当初は配信者名を決めていなくて、番組タイトルも「名前はまだない」だったんですよ。ただ、ライブ配信で「番組タイトルがちょっと……」と他のトーカーさんに指摘されまして、配信中に色々決めようという流れになって。

色々あって「なめくじ」でどうだってなったんですが、ドイツ在住のトーカーさんが「ドイツ語でなめくじって、かたつむりと同じ意味で、シュネッケンっていうんだよ。」と教えてくれて。3~4ケ月は「シュネッケン」を名乗ってました。ただ、この名前だと男性に間違われがちで。結局、平仮名表記で略した「しゅね」に落ち着きました。

──お名前から取ったわけではなかったのですね。

しゅね:はい。ドイツ語の「なめくじ」からです。本名は一切関係ないです(笑)

トークも設備も「裸」が大事

──普段はどんな環境で収録していますか?

しゅね:基本はスマホで“録って出し”ですね。

リスナーさんからマイクをいただいたのですが、やっぱり設備を整えるってフィルターはいらないというか。もともと便利なアプリですし、せっかくのiPhone据え付けのマイクも活かさないと、と思って(笑)

道具に興味のない性格ゆえ、ということもあるんですが、誰と繋がるのか、何を話すのかが大事なので、トークも設備も「裸」でありたいなと思っています。

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──配信ペースはどのくらいですか?

しゅね:今は収録トークもライブ配信も、週1~2回のペースです。ざっくりとした回数は決めつつも、本業がお客様に合わせる仕事なので。配信時間を決めるとストレスになりますし、どちらも不定期配信としていますね。

──トークネタはどのように決めていますか?

しゅね:思いついたら「出しちゃえ」って感じなので、あまり考えてないですし、メモ書きもしませんね。

編集についても、内容に関しては一切しませ。ただ、息を吸う音など、聞き苦しい音だけはカットするようにはしていますね。モデルさん達が絡む内容のエピソードを話す場合も、場所や人を特定されないために予約投稿で時間軸をずらすなど配慮しています。

──現在はライブ配信を積極的にされていますね。

しゅね:ライブ配信をする理由は、フリーランスでヘアメイク活動をする理由に通じるところがあって。

例えば「キレイになるテクニック」を、不特定多数の人がいつでも聞ける収録スタイルで伝えようとすると、どうしても万人向けになってしまうんです。なので、個別の相談に乗って、鏡の前で実践してもらう公開個別レッスンのかたちを取れるよう、同じような頻度でライブ配信を行っています。

心も体も「もっとわがままでいい」と伝えたい

──これまでの配信で、とくに印象に残っているものはありますか?

しゅね:実は最近、トークアプリでの個人的なやり取りで、一番送信してはいけない人に一番送信してはいけないメッセージを誤送信してしまったことがあって。ネガティブな感情に任せて、チャンネル開設1年にして「やっちまった」配信をしてしまったんです。

「滝川クリステルさんでいたかったのに!」と思いつつも、リスナーさんに甘えたくなってしまったんですよね。ただ、その時リスナーさんたちが、想像以上にあの手この手で励ましてくれて。みんなに元気を与えるために配信をやってきましたし、これからもその方向なのですが、こんなに元気を貰える場所なんだと再確認できました。

──「パパ活男性」への直撃取材は衝撃的でした。

しゅね:あの回は反響が凄くて、お便りもたくさんきましたね。

台本もなく、企画のつもりもなく、あのとき一番知りたいことを知るために突撃して。結果「くれない人はくれない」という残念な男性がたくさんいることを知ってしまうんですけど、だからこそパパ活を考えてしまう女の子たちには、「搾取されてほしくないな」という思いが沸いて、そのままの気持ちを配信しました。

──「自分を大切にして」というメッセージは、度々発信されていますね。

しゅね:自衛隊時代は「どうせ、自分なんて」という気持ちが強かった私ですが、そこから「逃げよう」と踏み出せたことで、今があると思っています。その経験から、多くの人に「心も体ももっとわがままでいい」と伝えられたらなと。

伝えた人たちがいつか、過去をネガティブに考えることがあっても「向き合ってくれる大人には出会えていた」と思い出してもらえたら嬉しいですね。「間違っていたかもしれないけど、よかったこともあったな」と思えるだけでも違うので、背中を押せる言葉を残していきたいと思っています。

「その日、私が生きた証」を残す音声配信

──2021年10月で、しゅねさんがRadiotalkで配信を始めて1年となりました。ここまでを振り返って、いかがですか。

しゅね:実際に1周年を振り返ってみて、当時の自分の考えや話したかったことが残っていることってすごく大事だなと実感しました。

もしも万が一Radiotalkが無くなるとしたら、過去のアーカイブを10万払ってでも買い取りたいぐらい。これまで配信してきたトークは、自分のなかで大切な財産になっています。

友達とのライブ配信も「何年後かに聴きながら飲みたいな」とか、考えますね。音声の情報量ってやっぱりすごいので、私の中で音声のメディアの大切さが増しています。

──いま、しゅねさんにとって、リスナーはどんな存在ですか?

しゅね:有難いというか、凄いなと思える存在ですね。

私は「聴かれる」ことを目的とした配信はしないと決めていて、余計な愛想をふりまくことは避けているんです。それでも時間を割いてくれるリスナーさんって、やっぱり凄いと思います。

──今後、Radiotalkではどのように活動していきたいですか?

しゅね:しっかり続ける中で、もっと自分を知ってもらいたいですね。私のプライベートとかではなく、人間として共感してもらえた私が話すことで、自分が関わる人たちの本当の姿を、偏見なく知ってもらえたらと思っていますので。

今年8月から、10代をターゲットに、Radiotalkきっかけで集まった仲間と4人で「まるはち放送部(オンエアー)」という番組も始めました。こちらはメンバーの一人がしっかり編集もして作り込む番組なので、私の、SEなどがない質素な番組との違いも含めて楽しんでほしいですね。

──しゅねさんにとって、Radiotalkとはどんな存在ですか?

しゅね:強いて言えば、ポジティブな自分の「墓場」ですかね(笑)お墓は守らなきゃいけない、大切なものという意味を込めて。なにより日付も残るので、「その日、私が生きた証」という意味も込めて。

内容や声、気持ちなど、変わらないものも、変わるものも、どんどん残していきたいです。もしも、私のことを振り返りたい人が現れたら、その人たちに過去のトークを聴いてもらえたら最高ですね。

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