ゲイとしての自分でいられる場所【🦴肋骨パキ男さんインタビュー】
Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『肋骨パキ男 の パキラジ』を配信する🦴肋骨パキ男さんにフォーカスします。
肋骨パキ男さんは、「見た目は子ども 頭脳はアダルト」というキャッチフレーズで、ゲイであることをRadiotalkでオープンにして配信している30代の配信者。
中学の技術の授業でラジオを作ったことをきっかけにラジオにハマり、大学生のときから自分でラジオ番組を作り始めたそうです。
Radiotalkでは2021年10月から配信を開始。2022年3月には『🌈LGBTQレンボーランド🌈虹色組初企画!』というライブ配信を企画して、大きな注目を集めました。
「ラジオトークアンバサダー」になってみたいと話す、肋骨パキ男さん。そのクリエイティビティや行動力の原点にあるものは一体何なのかを探りました。
(取材・文/ねむみえり)
授業で作ったラジオをきっかけにラジオの魅力に気付く
ーー「肋骨パキ男」というお名前がすごくキャッチーですが、どのようにつけましたか?
パキ男:自分って、昔すごいガリガリだったんです。友達に「骨と皮しかないよね〜」って言われてて、肋骨パキっちゃいそうだし、「肋骨パキ男」にしました。
ーーRadiotalkを始める前に、何か別の形で配信はしていましたか?
パキ男:配信はしてないんですけど、ラジオは昔からすごく好きだったので、自分で番組を作っていました。
ーーラジオを好きになったきっかけは?
パキ男:中学校の技術の授業でラジオを作ったのがきっかけです。特に好きだった番組は、福山雅治がやっていた『福山雅治のオールナイトニッポンサタデースペシャル・魂のラジオ』です。中学生の青春真っ只中の男子からしたら、刺激的で引き込まれる内容だったんですよ。
ーーその福山さんのラジオが好きで、自分もパーソナリティになりたいと。
パキ男:そうです。大学のときに、パソコンが手に入ったから、自分でラジオを作っていました。
そのときの出来事や感じたことをありのまま収録したり、そのとき流行っていた曲や旅のテーマにした曲を挿入したりすると、あとで聴いたときに、当時のことがフラッシュバックされて、タイムスリップする感覚になるんですよね。
ラジオは、写真のアルバムには載せられない、思い出の出来事や当時の声や感情を込めることができるので好きなんです。卒業アルバムとかよくありますが、卒業ラジオを広めていきたいですね。
“収録場所”はウォークインクローゼット
ーーRadiotalkで配信を始めたきっかけは?
パキ男:スピカハイボール🦍🦍🦍さんという配信者さんがRadiotalkを教えてくれたのがきっかけです。
彼女は僕の彼氏の同級生で、偶然会社で再会したことをきっかけに家に遊びに来るようになったんです。それで彼女と色々話していたら、彼女がラジオをやってることを知って、その話題に僕がすごく食いついたんです。そうしたら、自分でラジオを発信する手段としてPodcastもあるけど、Radiotalkっていう気軽にできるアプリがあるよって紹介してくれたんです。
ーー収録トークの構成がとてもしっかりしてますね。
パキ男:大学生のときにラジオを作っていた際のスクリプトが残っていたので、それをそのまま利用してます。僕自身、型があるほうが考えやすくて好きですし、褒めてもらうことも結構多くて、リスナーもこの方が聴きやすいのかなって勝手に思ってて、ずっとこの構成でやってます。
ーーRadiotalkの収録トークの上限12分という制限はいかがですか?
パキ男:すごく気に入ってます。最初から、自分でラジオをやるなら15分ぐらいかなって思ってたんです。Radiotalkは12分っていう限られた時間になっていたので、そこに収めるように考えるのが好きだなって。あと、収録している場所が狭いウォークインクローゼットなので、12分が限界ですね(笑)
ーー本当にウォークインクローゼットで収録されているんですね。
パキ男:彼氏の荷物が多くて、体育座りするぐらいしかスペースがないんですけど、音質が良くなるので。声が大きかったり、歌ったり踊ったりすることもあるので、ご近所迷惑にならないかも、という意図もあったりします。
ーーRadiotalkでは、ゲイというご自身のセクシャリティをそのまま出して配信をされていますが、そこに音声配信という形式は関係していますか?
パキ男:そうですね。顔出ししなくていいから身バレしないっていう安心感があります。彼氏との同棲のことや、自分のタイプの男性について、思いっきり話せるので、Radiotalkはゲイである自分のままでいられる場所にしました。
注目を集めたライブ配信『🌈LGBTQレンボーランド🌈虹色組初企画!』
ーー『🌈LGBTQレンボーランド🌈虹色組初企画!』は素晴らしいライブ配信でした。「虹色組」はどのように生まれましたか?
パキ男:ゲイを公表してライブ配信を行っていたら、「僕もゲイなんです」って絢斗が僕のライブ配信に遊びに来てくれて、仲良くなったんです。
絢斗は色んなライブ配信に遊びに行くのが好きで、その繋がりでどんどんLGBTQの仲間が増えていったみたいなんです。その仲間を絢斗が「虹色組」って呼び始めました。
ーー『🌈LGBTQレンボーランド🌈虹色組初企画!』を企画するきっかけは何かありましたか?
パキ男:「せっかく虹色組っていうのがあるんだから、何か企画してみなよ」って応援してくれるリスナーさんがいたからです。僕が中心になって構成とか方向性は考えて、絢斗は宣伝部長として、色んなライブ配信で企画の発信をしてくれました。
ーー企画を振り返っていかがですか?
この企画を通して、友達の幅がぐっと増えたんです。それまではゲイの人としかほとんど関わってなくて。レズビアンの友達とかもいなかったので、最初のLGBTQの説明をしないといけないときも、絢斗も自分もゲイだからGのことしか言えないよね、そんな具体的に説明できないよねって話をしていたんです。
でも、真咲さんが詳しく全部説明してくれたので、『🌈LGBTQレンボーランド🌈虹色組初企画!』は自分の中でのセクシャルマイノリティーの理解の幅が広がった場でもあったなと思いました。
ーーLGBTQについて説明をしていたのは、すごく丁寧だなと思いました。
パキ男:説明をしてくれた真咲さんは、僕はその時まで全然絡みはなかったんですよね。たまたま遊びに来てくれてて、絢斗が「真咲さんなら説明してくれるよ」って言ってたから、無茶振りで説明してくださいってスピーカーに上げたら、あんなに上手に話してくれたんです。
ライブ配信が終わってから絢斗と話してたのは、ああいう感じで色んなLGBTQの人とか応援してくれる人が集まって、雑談したり色んな話したりっていうのもよかったけど、ちゃんとその中に学びもあったライブ配信になったよねって。メリハリがあったりとか、しっかりとラジオ番組としての構成にはできたよねって言って、なので達成感はありました。
収録トークとライブ配信、それぞれの楽しさはあるけれど
ーー自分でライブ配信をしたり、ほかの配信者のライブ配信に遊びに行くときの楽しさとは別として、収録トークに力を入れている理由は?
パキ男:僕は昔からの夢だったパーソナリティとしての「肋骨パキ男」でいたいんです。パーソナリティとして、完成した番組が欲しいし、それを聴いてもらいたいというのがあるなと思います。
ただ僕はラジオを作りたいから、収録トークに力を入れるっていう、ただそれだけです。
でも、収録トークに関しては、Radiotalk内のリスナーからの反応がまだまだ少ないんですよね。どうやったらRadiotalk内でも収録トークの方も聴いてもらえるのかなって考えて、もっと面白い番組を作っていきたいなって思ってます。
ーーちなみに、Radiotalkでよく聴いている番組はありますか?
パキ男:やまたつさんの『でーじょぶ!なんとかなるラジオ』は聴いてますね。
あとは『🏳️🌈パンセクシャル・レイ🇯🇵のフランスよりボンジュール🇫🇷』を配信してるレイさんとは仲良しで、以前コラボさせてもらったこともあります。
セクシャリティもマイノリティっていう共通点もあって仲良くさせてもらってるんですけど、フランスに行ったら実際に会いたいなと思ってます。
ーー今までの収録トークの中でリアクションが大きかったものはありますか?
パキ男:カミングアウトの回が一番ですね。色んな人と話しても、その収録トークが一番ぐっときたとか考えさせられたとかっていう感想を多数いただきました。僕はそんなに反響あると思ってなかったし、むしろ他のやつで笑って欲しいなって思ったんですけど(笑)
ーーその収録トークは個人的にもすごく印象的でした。実際にカミングアウトしたときはどんな反応でしたか?
パキ男:そもそも、地元がすごく田舎で、ステレオタイプな家庭で育ったので、それが嫌で東京に行きたかったから、自分のことを全部伝えようと思ったんです。
ゲイの友達からは、カミングアウトしたときに、「つらかったね」とか「今まで気づいてあげれなくてごめんね」みたいなふうに言ってくれたと聞いていたので、自分も温かく受け入れてもらいたいと思っていました。
最初は姉に言ったんですが、「受け入れられない」ってキッパリ言われました。受け入れてもらえないことがとてもショックでしたね。それで、理解や共感は諦めて、どう思ってもいいけど、知っとくだけ知っといてもらえればいいやってなったんですよね。理解できない人もいるっていうのをゲイの人たちも理解しなきゃいけないのかなっていうように僕は考えています。
凹んだ経験を通して自分が本当にやりたかったことを再認識
ーーRadiotalkで配信を開始して半年ぐらいが経ちますが、印象的なことはありますか?
パキ男:コラボですね。『でーじょぶ!なんとかなるラジオ』のやまたつさんは、僕のRadiotalkでの初恋の男なんですよ(笑)。なのでよく絡みにいってたんですが、僕の絡みをうざいと思わないで接してくれて、コラボして収録までできたのは僕の中で1つすごく達成感がありました。
ーーRadiotalkでの初恋の人とコラボできるのは嬉しいですね。
パキ男:あれは何回聞いても、当時の収録を思い出して、めちゃテンション上がるんですよ。ゲイとしてストレートの人と関わるっていうのが、日常生活にはないのですが、Radiotalkではゲイとして絡めるからそれがすごく新鮮な経験です。Radiotalk内では、どんなセクシャリティの人でも偏見なく話してくれる人が多くて嬉しいですね。
ーー数字を気にして凹んだことがあったというお話しをしている回もありました。
パキ男:そうなんです。自分の誕生日の近くの1週間は毎日収録トークを配信していたんです。そのときに、1週間のうちにフォロワー100人達成と、Podcastのランキングで5位以内に入るっていう2つの目標を掲げてやってたんですけど、全然フォロワーも増えないし、ランキングもどんどん落ちていってしまって……。
自分の配信って面白くないのかな、自分の収録トークって求められてないのかなって思っちゃって凹んだんですけど、応援してくれる人がいるし、自分が話したいこともあったので、そういう数字を見るのはやめようって思うようになって、気にしないようになりました。
ーー自分が力を入れてやっていることが思うようにいかないと、もどかしさはありますよね。
パキ男:そこで、自分が音声配信をするときの目標が、何人とか何位みたいな数字じゃないっていうことを再認識したんです。自分がゲイとして話したいことを話す番組を作るっていうのが目標だからそれを大事にしようって。
でも、実は昨日たまたま、Apple Podcastのランキングを開いたら5位だったんです。しかも総合ランキングで。
(2022年4月19日取材)
ーーすごいですね!何か思い当たる出来事はありますか?
パキ男:Twitterのスペースで、色んなポッドキャスターさんと話す機会があったんです。パキ男が「この時間にスペースするのでもしよかったら集まってください、色んな人と話したいです」って企画して、2時間ぐらいスペースで話していたんですが、それを聴いてた人がフォローしてくれたのかなって思います。
自分らしくいられる場所を作り上げた
ーーRadiotalkでの「肋骨パキ男」というキャラクターと、日常での自分自身って結構違いますか?
パキ男:仕事のときの自分と、友達といるときの自分と、Radiotalkの中の「肋骨パキ男」の自分って結構違うなと思ったんですよね。
仕事のときはもう、人とのコミュニケーションも最低限で、プライベートのことも話さないようにしていて、ただ仕事してるだけなんです。友達といるときも、結構喋るんですけど、こんなオネエ言葉にはしてなくて。でも「肋骨パキ男」はちょっとキャラ作りもやっていて、普段よりも一段くらいテンションが上っています。
どれが本当の自分なんだろ?と思ったこともあります。でも仕事のときの自分は自分じゃないというふうには思っていなくて、仕事のときも、友達といるときも、「肋骨パキ男」のときも全部が自分自身って思ってます。
ーー「肋骨パキ男」という自分の側面はどのようなポジションにありますか?
パキ男:「肋骨パキ男」は、1人のエンターテイナーとしての自分かもしれません。ラジオのパーソナリティとして、人を楽しませる自分を出しているんだと思います。ただ、0から作り上げたキャラクターというよりかは、エンターテイメントの中で楽しむ自分自身なんだと思ってます。それは、自分の大好きなディズニーリゾートからの影響を受けていると感じますね。
ーー肋骨パキ男さんにとって、Radiotalkはどういう場所になっていますか?
パキ男:自分らしくいれる場所ですね。ありのままの自分を出せる場所。あと、僕は結構自分で何かを作り上げることが好きなので、そういうクリエイティブなこともできる場所だなって思ってます。
Radiotalkを通じて「肋骨パキ男」というエンターテイナーが生まれ、LINEスタンプなどのグッズやジングルも作ったり、イベントを企画したり、Radiotalkから自分が作りたいものが色々派生して生まれてるなって思ってます。
ーー今後Radiotalkを使ってやってみたいことはありますか?
パキ男:Radiotalkさんの色んなイベントには参加したいなと思っています。一番やりたいなって思うのが、ラジオトークアンバサダーなんですよね。僕を使って、Radiotalkをもっと広めるようなことができたらいいなって思うんです。僕ができるならね、オファー待ってますって。
ーーRadiotalkへの愛がすごく伝わってきます。
パキ男:めっちゃ愛してます(笑)Radiotalkでみんなでパキっちゃお!