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【名もなき偉人伝①】Wヘルメットのモンチッチ伝
■唐突にはじまる影響力半径5m程度の名もなき偉人伝
偉人が好きである。
それも、やれノーベル賞を受賞したとか〇〇で100人の命を救ったとか、そういう偉業を成し遂げた本当の偉人ではなく、身の回りで出会った名もなき人にスポットを当ててその功績?をたたえつつ偉人として語っていきたい。(つーか、そういう人しか知らないけど。汗)
以前にこんなことを書きましたわたくし。
このスギヤマさん(仮名)とまったく同じ時期の、同じ倉庫で働いていたころ、お客さんでめちゃくちゃな偉人がいた。
◆モンチッチと呼ばれていた男
偉人の正式な名前は知らない・・・というか色々インパクトがありすぎて忘れた。
その人はみんなからモンチッチと呼ばれていた。(もちろん陰で)
うろ覚えではあるけどこんな感じの見た目だった。もしかしたらコワそうな人に見えるかも知れないけども全然そんなことはなくて実際はむしろ逆である。
彼の特徴として箇条書きでまとめるならば
・ ど厚かましい
・ 図々しい
・ 自慢話ばかりする
・ 若い女性には露骨に態度が変わる
・ 超ヘビースモーカー
・ 来るのはいっつも昼時
こんな感じである。
どこをどう切り取ってもオレの嫌いな要素ばかり・・・というか嫌いな要素しかそこにはなかった。
ただし、モンチッチという呼び名および、会社の先輩が本当に心の底から憎らし気に『モンの野郎』と呼ぶのだけは好きだった。(本人全然関係ねーじゃねーか)
箇条書きしたうちの
>・ 来るのはいっつも昼時
というのは別にいいんじゃねーの?と思われた方、あなたの人生は幸いである。というかホワイト企業勤務である、というべきか。
倉庫業などの肉体労働的な仕事においてお昼休みというのは、超貴重な時間である。いえ、ワタシの仕事はいつでも息抜きできますが?という意見はとりあえず無視します。もちろんPCカタカタやってその合間にスマホ見て・・・なんてことが出来るわけもない時代でもある。
12時から13時までの60分
その間で食事を購入(もしくは飲食店まで移動)し食事を済ませ、寝たり、本を読むなどしなければならない
時は金なり
タイムイズマネー
そんな言葉がついつい頭によぎるそんな時間。
セールスの電話ですら『お昼どきに申し訳ありません』みたいに言ってくるそんな時間。(それはそれでイラつくけど)
そんな超貴重な時間に図々しくてど厚かましいモンの野郎はやってきて我々の血の一滴のような時間を奪っていくのである。
それも「お昼どきに悪いね」なんて殊勝な感じで来てくれたらまだ救われるけど、コイツは『おうおう、客だぞ!客が来たぞ!早く対応しろ早く』みたいな感じで来るので客とか抜きに真面目に殺意がわく。
>・ 自慢話ばかりする
これはバブルのときに自分はどれだけ金もらってたか、を毎回自慢していくことである。
『俺ぁよう、バブルのころはよう、日当1日10万もらってたんだぞ。1日よう、ちょこっと現場に2時間ぐらい顔出してよう、チョチョッと作業してよう、たちまち10万よ。だから月に5日も仕事したらその月はもう十分なのよう。ガハハハッ!』
と、やたらと勢いよくようよう言って大声で下品に笑うのだった。こちらはもう何回聞かされているか数えきれないのでまったく無というか、能面のような表情で聞いていた。(ふりをしていた)毎回聞かされる方はたまったもんじゃない。マジで。
それだけではない
>・ 女の子には態度が変わる
当時働いていた倉庫には事務に若い女性もいて、『えっ?なぜこんな薄暗く小汚い倉庫にこんな娘がッ?!』と思ってしまうようなかわいい女性だった。周囲にヨーダのような顔したジイサマや底意地の悪さが顔面に出ているようなバアサマしかいない中で、まさに『掃き溜めに鶴』というコトワザを地でいくような感じだった。今の芸能人でいえば誰に近いだろう。雰囲気的には足立梨花さんみたいな感じだろうか。(ブスじゃねーか!!という意見は一切受け付けません)
<参考>
その人に密かに思いを寄せていたオレではあったが、その思いは倉庫に来る職人や運送会社の運ちゃんたちも同じで、事務所の入口から割と離れた席に座っているのに『おーい、〇〇ちゃん、これもらったからあげるよ。おやつに食べて(ニチャア)』みたいに声をかけていくアグレッシブな人も少なくなかった。それを見る度にワケもなくイライラしたものである。
そして、それはこのモンの野郎も同じだった。
オレには「おう、客だゾ?本なんか読んでないで早く材料出してくれヨ!」(繰り返すけどお昼休みの時間である)みたいな態度のクセして(いま思い出してもイライラできるのがすげえ)その彼女に対してはもう満面の笑みで『おっ!いつも頑張ってるネ!大変だネ!どう最近?』みたいにクルッと態度が変わる。それはもう気持ちの悪いぐらいなイケボで。
男子と女子であからさまに態度を変える人が嫌いなオレにとってはここの部分だけでもモンの野郎は十分過ぎるほど嫌うにふさわしい存在なのである。
中学の部活とかでもいるよね、女子が見てると急に張り切りだすやつ。
「あー朝練クソだりーわー」とか言ってタラタラ歩いてたのにさ、テニス部の女子が見てたら急に『おい!お前ら何やってんだ!予選まであと1週間じゃねーか!たるんでんぞ!!ヤマモトぉ!スギウラぁ!行くぞぉ!!』みたいにあからさまに女子たちに聞こえよがしに叫んでダッシュしだすの。嫌いだわー。「たるんでんのお前だよ!!」って何度ツッコミ入れようと思ったことか。
あ、話が『ズレて』しまいましたね。
ズレる・・・で思い出したが、そんな迷惑なことこの上ない彼の最大の特徴はアタマにあった。上記で紹介した箇条書きよりも明らかな特徴が。
モンチッチは、どんな鈍感な人でも一目で『ああ、あの人アレね』みたいになることが出来るぐらい、頭部に違和感のある人だった。
彼のそれは、カツラやヅラというのには余りにも乱暴で、毛糸のついたヘルメットと形容するしかないシロモノであり、本物のヘルメットの下にあるそれはヘルメット・オン・ヘルメットという感じであった。サーティワンアイスクリームのダブルみたいなイメージだろうか。
そのヘルメットの中身は一体どうなっているのか。
それしかアタマになかった
モンチッチのアタマがどうなっているのか
ハッキリいって若い美女の裸よりもそのときのオレは興味があった
◆こんなシステムを必死になって考えた(仕事中に)
具体的な作戦はこうだ。
モンの野郎は意地汚いので事務所のテーブルの上に好物であるカルビーかっぱえびせんをさりげなく置いておく。
そうするといつものように昼時にのこのこやってきたモンの野郎はすぐさまテーブルの上のカルビーかっぱえびせんを発見し、誰に断ることもせずいきなりサクサクと食べる。懐かしのCMではないが止められない止まらない状態になっておのずと自分の頭上の確認がおろそかになるはずだ。
そして重要なのはヤツの姿勢。
カルビーかっぱえびせんをサクサク食べるにはアタマを下げるであろう。
モンの野郎の後頭部はヘルメットのサイズが合わなくて常にカパカパしているので、そこにめがけて滑車からフックを慎重かつ大胆に下ろして、フチに引っかけてガッ!と一気に吊り上げる!
しかるのちにモンの野郎のアタマの中身を確認
・・・というカンペキなシナリオを考えていた。
そしてこれはモンチッチの頭文字Mを取り、この作戦は『M作戦』と名づけられた。
これらはもちろんすべて自分の中で、である。これを公言したらただのヤベぇやつである。(こうして書いてる時点ですでに十分ヤベぇ気もするけどとりあえず先に進みます)
幸いにも職場は建材を扱う倉庫である。倉庫には滑車もあったしフックもある。ロープもある。やろうと思えばすぐにでも実行可能だ。あとはオノレの決心一つである。
しかし・・・
一見カンペキすぎるこのM作戦には、どうしても越えなければならぬ問題があった
見事モンの野郎のブツが吊れて、本来の姿を確認できたとして『その後』である。
果たしてどんな空気になるだろうか
間違いなく『いたたまれない空気』になるだろう
テレビのドッキリみたいに、テッテレー♪みたいな音が流れて『はい大成功!♪』みたいな言葉で何となくうやむやにして終われたらそれに越したことはないが一般人には不可能であろう。
どうにかして事故を装って吊り上げたい。
「ああ、それだったら仕方ねえな」
先方にそう思ってもらわなければこの作戦は失敗だ。
いや、これはあくまでも避けようのない不慮の事故なんです!マジでボクはどうしようもなかったんです!(必死に笑いをこらえながら)
と、モンの野郎に精一杯アピールしたところで滑車とロープを手にして叫んでいる時点で、まあ恐らくは無理であろう。
そうこう思っているうちに、いたずらに時間だけは過ぎ、スギヤマさんの項でも書いたが倉庫の会社が不景気の影響で他の会社に吸収される形になり、オレはこの倉庫の仕事を辞めた。
そしてスギヤマさんと同じく、その後モンチッチとも二度と会うことはなかった。
今から思えば本当に惜しいことだった。
真実が知りたい
別にイルミナティとかフリーメーソンの陰謀論みたいな大げさなものではない
人はどこから来てどこに行くの、みたいな哲学的なものでもない
虚飾ではない本物を
本来のあるべき姿をこの目で確かめたかった
倉庫がなくなる
そんな未来が待っていると知ってたらね、もう滑車とかフックとか不慮の事故を装うとかめんどくせえこといわないで、もうね、彼のパッサパサの毛糸つきヘルメットの部分をガッ!とワシづかみにしてね、パカッと開けるぐらいの勢いでいっとくべきではなかったか・・・と。
後悔先に立たず
(いやマジで迷惑なヤツじゃねーか)
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