【140文字に収まらなくて】救急外来と死と
■人の命の重さを思い知らされた救急外来
昼ごろ。
一本の電話が鳴る。父親が倒れて救急車で病院に搬送されたとの連絡がある。急きょ仕事を半休し病院に向かう。
父親が運ばれたのは救急外来だった。
とりあえずこれを読んで必要事項を記入してください、と看護師さんから言われて渡されたパンフレットと書類にボールペンで必要事項をカリカリと書く。
通路を挟み右斜め前にいるニッカポッカ姿の職人の男性はさっきからずっとうなだれており、時おり肩を震わせているのが少々気になっていた。「ん?もしかして泣いて…いる?」と。
だいたい書き終わりパンフレットをペラペラと眺めながら座って待ってると、そこに数人の警察関係者らしき人々が現れる。警官、鑑識風の人が混在していた。そしてそれとは対照的にニッカポッカ姿で泣きじゃくる職人の男性。「霊安室のご遺体をご確認いただけますか…」と警官から事務的に言われその男性はヒザから崩れ落ちる。
え・・・えっ、いまなんて?
霊安室・・・って言った・・・??
どうやら建築現場の事故で若い職人さんが亡くなったようで、ニッカポッカ姿の男性はその先輩にあたるような人らしかった。
そして、亡くなられた方の母親、奥様と思われるご遺族と、会社の社長と思しき男性が救急外来に駆けつけ警察関係者から改めて事務的に説明を受ける。「死亡診断書も発行されましたので今から霊安室の方で…」と言われた時、堰を切ったように涙と「ええ…ええ…そ、そんな…」声にならない声が出てへなへなとその場に崩れ落ちる。もしもこれが嘘であったらどんなに有難いことだろう。
警察関係者のその言葉を受けるやいなや、ご遺族の方に会社の社長が廊下で泣き叫びながら土下座する。
「本当に!本当に!!申し訳ございません!!!この度のことは、どんなことをしてもお詫びのしようがありませんッ・・・!!!!」
社長らしき男性は、ほぼ半狂乱というか声にならない声で叫んでいた。何度も何度も硬い廊下に額を打ち付けながら。
「もう!そんなことしないでください!却って辛くなりますから!!」
奥様らしき若い女性がそれを受けてさらに泣き叫ぶ。どんなにお詫びをされようが、どんなにお金を貰おうが、二度と帰っては来ないのだ。
本当に辛い。
死ぬって何だろう。
そう思わずにはいられなかった。
みんな人目をはばからず号泣していた。大の大人たちが、皆こんなに声をあげて泣いているのだ。
もしも、俺が死んだらこんなに泣いてくれる人はいるかな。
父親だけでなく母親も本当に良い年だし、そろそろ真剣に考えねばならない時期に差し掛かってきた。そうしたときに、絶対に訪れるその日に、果たして自分はどうなってしまうのか。その現実に耐えられるかどうかはっきり言って自信がない。それを回避するためには、親不孝と言われてもいい。
そんな答えのないことをグルグルと考えていると、目の前を憔悴しきった感じで皆さん霊安室へと向かっていく。
もしも、もしも警察官から俺の家族が死んだと突然告げられたら、あんなに気丈に振る舞えるだろうか。あのぐらいで耐えられるだろうか。すべて空っぽになるか、後を追ってしまうか、とにかく俺には自信がない。
『死』
それをやや身近に感じて思うのは、生きていることはそれだけで本当に尊いことなのだ、ということ
何を成し遂げたか、富も名誉も関係ない。生きていればすべて尊い
どうか頼むからみんな頑張って生きてください
すべては生きていればこそ
たとえ辛いことや苦しいことだって、生きていればこそ感じられる
何かを感じられるのは、生きている者の特権なのだから
生きろ
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