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墨田区から発信。日本最大級の野球コミュニティへ

選手一人がグラウンドで輝くことは、その先にいる家族やファンなど何十人もの人生にプラスの影響を与えるもの。目の前にいる選手に最善を尽くし、最高のパフォーマンスを発揮できるよう支えることは、僕たち理学療法士の使命であり最高の仕事だと心から思います。

そう語ってくれたのは、墨田区を拠点に野球少年の育成、野球選手の競技力向上サポート、そしてトレーナーの育成まで、野球に関わる全ての人に向けたコミュニティを運営している増田稜輔さん。

今回の記事では、増田さんの事業に対する想いや今後の展望について深掘りした。
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ライタープロフィール
青木 蘭
神奈川県茅ヶ崎市出身。3歳のころ家族の影響でラグビーを始め、中学卒業と同時に地元を離れ島根県の石見智翠館高校に進学。全国大会2連覇、キャプテンとしてMVPを獲得。卒業後は慶應大学総合政策学部に進学。3年時には同大学初の女子ラグビーチームを創設。社会人2年目の9月に退職し、プロラグビー選手に転向。ラグビーを軸にフリーランスでライター、ラグビー教室、IT関連の業務委託、SNS運用代行、登録者数40万人越えYouTuberのマネジメントを経験。2023年鹿児島県と契約し、鹿児島国体代表として活動。女性アスリートの経済的自立支援、心と体の健康で豊かな「ウェルビーイング」な状態を目指すコミュニティオーナー。現在80名が在籍。年間50本以上の記事制作に携わり、2023年12月には花王「サクセス」のCMコピーライトを担当。




■どのような方がコミュニティに所属しているか

 このコミュニティは、選手と理学療法士をつなぐパイプ役を担っています。
理学療法士は、基本的に病院勤務でリハビリ指導や体の機能改善を促すケアなどが多く、患者さんの多くは高齢者の方です。そのため、スポーツに関わりたくても接点を持つ環境がないことが課題としてありました。このコミュニティに入ることで、選手やスポーツ関係者と関わる機会も増えています。
 私たち理学療法士がチームに関わることにより、選手の怪我を未然に防ぐことはもちろん、体を効率的に動かす手法を伝えることでパフォーマンスが上がったという声をいただきます。
 小学生のリトルリーグにも関わっていて、保護者の方からもお喜びの声をいただいています。競技レベルが上がると、我々のような専門家に関わる機会は増えますが、幼少期や小・中学生レベルだと専門的な知識を得る環境が整っていないことがほとんどです。しかしこの時期の子供たちこそ、スポーツへの取り組み方がとても大切で「一番大事な時期」です。また「リハビリ」に関わることの多い理学療法士にとっても、怪我を未然に防ぐ「予防」に携わることはスキルアップに繋がり、大きな価値があります。お互いにとっていい影響が出ていると感じます。

■リトルリーグに着目した理由

 1つは、リトルリーグに世界大会があることです。現在ご縁あって、世界一を経験したチームに関わっています。世界で戦う子どもたちに対して、私たちの知識を加えるとすごく良い化学反応が起こると感じました。「世界大会で優勝した日本のチームは、指導者が正しいトレーニング方法を学んでいる」「小学生でも理にかなったトレーニングをしている」ということを世界で証明できれば、正しい練習方法や練習環境が浸透し、野球界を変えることにつながるのではないかと思いました。
 2つ目は、理学療法士のリーグ参入例を増やすことです。現状リトルリーグに、理学療法士やトレーナーといった専門的な知識を持つ人材がチームに在籍する例は、とても少ないです。大事な幼少期の時期に大きな怪我をしてしまったり、間違った練習方法が浸透している現場を変えたいと強く思いました。

●苦悩

 やり始めた当初、事例がないこともあり周りの反応は半信半疑でした。私たちが選手たちにどんなサポートをするのか、チームの指導者や保護者にプレゼンした時も、すぐに結果が出るわけではないので色々なご意見がありました。すごくマイナスな印象があったと思うのですが、実際にトレーニングを実施している姿を指導者や保護者の方に見学していただいた際に「プロ野球選手がキャンプでやるトレーニングみたい!」と、興味を持っていただきました。次第にチーム全体としての士気が上がり、選手の動き自体も大きく変化したことで、今では定期的なトレーニングの依頼をいただいています。丁寧に説明し、真摯に目の前の選手を良くするためのアプローチを提供した結果が実を結んだと思います。

・小学生に対しての指導法で工夫していることは?

 注意が散漫しやすくなる年頃なので、まずはいかに楽しくやってもらうかというところを一番大切にしています。難しい言葉だったりとか、感覚ではなくわかりやすい言葉を選んで伝えています。

・トレーニング内容は具体的にどんなことをしているか?

 トレーニングの内容は、基礎動作からスタートしていきます。
 例えば「正しくしゃがむ」動きを教えたり、腕立て伏せの要領で「腕で身体を支える動作」をしてみたり。「これって野球につながるトレーニングなのかな」と思われますが、癖のついていない幼少期の段階で「身体を正しく動かすこと」を身につけることは何よりも大切ですし、そこが今後の運動神経を上げるポイントだと思っています。
理学療法士が持っている知識の中で伝えられることが、大きな強みですね。


■墨田区から甲子園を目指して


 私は生まれも育ちも墨田区で、地元を盛り上げて、出身者が誇れる墨田区にしていきたいです。そして未来を担う子どもたちの可能性を広げられるような活動がしたいと思い、墨田区の小・中学生に対して野球に特化した「 アカデミートレーニング」をやっています。去年の12月に始めましたが、小学4年生から中1までの17名の選手が在籍しています。月・金・土に活動し、口コミでどんどんご縁が広がっています。地元でやる意義を感じていますね。

●アカデミーの具体的な目標は?

 一番に掲げてるのは、墨田区から甲子園に出場する選手を輩出することです。実際に選手と関わると、その熱量と可能性に心が動かされます。甲子園やプロに目を向けるとものすごく長い道のりに感じるのですが、野球をやっている以上、みんなが夢見る場所です。その夢を実現できるように、選手と一緒に活動していきたいと思っています。その大きな目標を達成できた時には、地元を盛り上げることにもつながりますし、多くの人にとっての幸せにもつながると思っています。

●その目標に向けての課題は?

 練習のやり方から考え方の部分まで、主体性を育てることが大事だと考えます。野球という競技の特性上、監督のサインでプレーを選択することが多く、このような環境が主体性を育むのに壁を作っていると感じます。「指示待ち」が癖になってしまい、社会に出てから壁にぶつかる選手が多い印象です。夢を叶えるために、自分は今何をしなければいけないのか。練習メニューひとつに置いても、この練習が試合中のプレーで、何に繋がっているのかをしっかりと伝え、納得した状態で取り組んでもらうようにしています。そうしたコミュニケーションが、自ら進んでトレーニングをする意欲につながると思いますし、人間形成の部分となる、自ら考える力や行動する「自主性」を高めると考えています。
 選手はもちろんのこと、野球経験のある理学療法士やトレーナーが自分の人生を主体的に動ける人を育てたいという思いもあるので、まずは代表の私から積極的に色々なことに向き合っていこうと思っています。

■コミュニティ代表としての想い


 活動5年目に入りましたが、これまでは仲間を増やすことや環境を整えることに注力しました。そして今年からが、いよいよ日本最大級の野球コミュニティにしていくことへの本格的なスタートだと本気で思っています。
 僕らのミッションは、「選手も理学療法士も安心して活躍できるグランドを整備すること」です。選手が活躍する場、理学療法士が働く場をグランドという言葉で表現をしています。安心という言葉は、選手にとってまず怪我を恐れずに安心して戦えること。怪我をしてしまっても、復帰まで伴走するプロがいることで、その環境を整えていきたいと考えています。そして、理学療法士やトレーナーが持つ優れた知識や経験を還元して、次世代に繋いでいける素晴らしい職業だと実感ができる場を提供したいです。そういう意味で安心という言葉を使っています。

Be a ENJIN.
野球界と理学療法士とつなぐ円陣に。
未来を変える原動力に。
みんなで肩組んでエンジンを組んでその輪を大きくしていく
僕らが中心となって野球界を変えていきたいと強く思っています。

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