噴水

 公園には新しい噴水と古い噴水があった。どちらの噴水も水をたくさん噴き出していた。それを見ていた少女は思った。
「噴水は頑張って水を噴き出しているのだから、水を噴き出しているとき喜びを感じるようになればいいのに」
 そんな少女の思いが通じたのか、新しい噴水は水を噴き出しているとき喜びを感じるようになった。水を噴き出している十時から二十時までの間ずっと喜びを感じるようになった。そして二十時になって水が止まると何も感じなくなった。
 少女はそのことを知らなかった。
 一方、古い噴水は何も感じることはなかった。ただただ水を噴き出していた。
 新しい噴水は喜びを感じ、古い噴水は何も感じない。そんな日々が続いていったあるとき、大きな地震が起こった。それによりどちらの噴水も壊れて水を噴き出すことができなくなった。新しい噴水は何も感じなくなった。古い噴水も何も感じることはなかった。
 壊れた噴水を見た少女は悲しみ、涙を流した。
 少女は涙を流しているとき、新しい噴水が悲しみを感じているように思えた。涙が止まるまで、ずっと悲しみを感じているように思えた。古い噴水は何も感じることはなかった。

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