窓ガラス

 太郎の自宅と学校の間にある、とある家の、とある窓ガラスは太郎が何かを感じると太郎と全く同じことを感じていた。太郎がチョコレートを食べて甘さを感じるとその窓ガラスも全く同じ甘さを感じて、太郎が夜更かしをして眠くなると、その窓ガラスも全く同じく眠くなった。太郎はそのことを知らなかった。

 太郎は好きな娘ができた。それにより窓ガラスも好きな娘ができた。太郎はときめき、窓ガラスもときめいた。太郎はその娘に告白するために勇気を出して、窓ガラスも勇気を出した。太郎はその娘と付き合うことになり喜び、窓ガラスも喜んだ。

 あるとき太郎は、彼女のことを好きだった同級生に因縁をつけられケンカになった。太郎は怒り、窓ガラスも怒った。太郎が相手を殴り衝撃を感じ、窓ガラスも衝撃を感じた。太郎が相手に殴られ痛くなり、窓ガラスも痛くなった。太郎がさらに殴られ痛くなり、窓ガラスも痛くなった。太郎は連続で殴られてもう止めて欲しいと思い、窓ガラスももう止めて欲しいと思った。太郎がそれでもまだ殴られてとても痛くなり、窓ガラスもとても痛くなった。そのとき窓ガラスにひびが入った。太郎がとどめの一発を喰らって倒れたときには窓ガラスは割れてしまった。

 放課後、太郎は落ち込んで家へと向かった。その途中、民家の前にガラスの破片が散らばっているのを見て、不愉快になった。太郎は破片を避けて歩いていった。

 それにより窓ガラスは不愉快になった。

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