数ある
男は真っ白い紙に何らかの線を引いた。数ある選択肢の中から何らかの線を引いた。さらに数ある選択肢の中から何らかの線を引いた。さらに数ある選択肢の中から何らかの線を引いた。
繰り返していると絵ができた。数ある選択肢の中から何らかの線の組み合わせを選んだら、素晴らしい絵ができた。今まで誰も見たことがないほどの素晴らしい絵ができた。男はその絵は人類史上最高の絵だと思った。その絵をコンクールに出そうか、売ろうか、飾ろうか、プレゼントしようか迷った。
「私は数ある選択肢の中から何をすればいいのだろう?」
男は決めた。
「こんな素晴らしい絵は誰にも見せたくない。本当に素晴らしいものは自分だけで独占していたい」
男は絵を燃やした。そしてまた何らかの線を引き始めた。
この世界はある美術館に飾られていた。多くの者がこの世界を鑑賞していた。この世界を描いた者は、この世界を自分だけで独占したいとは思わなかった。
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