未完成

 ある者は大きな紙に絵を描いていた。空を描いて、大地を描いて、光を描いた。闇を描いて、海を描いて、草木を描いた。魚を描いて、鳥を描いて、太陽を描いた。星を描いて、銀河系を描いて、宇宙を描いた。

「ここから先は何を描こう? ぜんぜん思いつかない」

 その者は絵がまだまだ出来上がっていないことを知っていた。

「他のみんなはもっともっとその先を描いているだろう。でも提出日は明日だ。仕方ないけれども未完成のまま提出しよう」

 その者は絵の世界に時間を与えた。そして未完成のままの世界が動きだした。

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