書評 反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー ジェームズ・C・スコット、 立木 勝
反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー ジェームズ・C・スコット、 立木 勝
「国家形成にまつわる根本的な疑問は、ホモ・サピエンス・サピエンスがいったいどういう経緯でこんな暮らし方―作物化・家畜化された植物と動物、および人間による前例のない集住―をするようになったのかということだ。」で序章で始まる同書。
メソポタミア文明の初期国家の形成において農業が果たした役割、そのなかで城壁や文字が出現した点などを記し、人口の管理、逆に初期国家の脆弱さについて浮彫にする。その一方で、もう1つキーワードになるのが国家の外に暮らす「野蛮人」の存在。遊牧民としての「野蛮人」が果たした役割についても触れつつ、いかに現在の「国家形成」につながっていったかを明らかにしていこうとする。ややスケールが大きすぎるが、現在の混乱する時代を見ていくうえで、手掛かりになる部分がいろいろと出てくる感じがする。