見出し画像

書評 長い江戸時代のおわり 池田信夫 與那覇潤

著名経済学者と歴史学者による対談本で、令和の日本と世界が抱えるさまざまな問題を議論している。コロナ禍においてさまざまな問題が出てきたが、この対談本の企画が進行する最中に、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発。世に出るタイミングが少しズレたとのこと。両者は以前にも、「日本史の終わり」という対談本を出し、当時は東日本大震災の翌年に出され、脱原発や維新ブームに沸いた世論を背景に、当時も議論していたように記憶している。「日本史の終わり」というのも、それまで良くも悪くも「平和」を享受してきた日本の有様が変化していくとのコンセプトだった。今回は、出版後に改元があったことや、先述のコロナやウクライナ情勢、またその後ますます台頭してきた中国の動向を踏まえて、ざっくばらんと言えば少し過ぎるかもしれないが、面白い見方をしていてやや楽しく読んだ。

前回の「日本史の終わり」と同様、「平和」を享受してきた日本の有様の変化がコンセプトで、今回は「江戸時代のおわり」と表現している。特に対談本の企画進行の最中に起こったウクライナ侵攻が、日本に与えた影響の大きさを指摘した箇所は印象に残った。橋下徹がこの問題に関して、ウクライナがロシアに降伏したほうが良い旨の発言に見られるいわゆる「平和ボケ」ぶりとそれに対する批判や、湾岸戦争時には見られた文化人や学者による反戦表明が今回は見られなかった点など、日本の世論の動向が変化していることを取り上げたところは、確かに頷ける部分があった。その意味では、日本の世論自体が、「江戸時代」的な感覚から抜け出しているのかもしれないと感じた。そのほかのグローバル化のなかでの企業の動きなど、日本のさまざまな事象に触れており、現在の動向を知るうえで一読の価値ありの1冊。

#書評 #池田信夫 #與那覇潤 #日本