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書評 社会はなぜ左と右にわかれるのかジョナサン・ハイト

米国の大統領選はバイデン勝利に終わったが、米国内のみならず、これを評する日本の言論界、というよりネット界隈においても、大雑把ながらいわゆる「左」と「右」の人たちからの言説が、乱れ飛んだ。

左右をめぐる考察を記した本は、これまでも数多出されているが、この本の面白いところは、「道徳心理学」という観点から切り込んでいるところだ。自分が手にした本は14年の初版から、もう9刷を重ねている。「左」と「右」というわかりやすい政治のスタンスについて、なぜそうなるのかを幅広い視点から探っている。道徳のほか、生物学、心理学、哲学、社会学、宗教、政治、経営と、多岐にわたっている。

少々長いのだが、最初から読むのは大変という人には、まず第12章を読むことを進めたい。この中に出てくるアメリカのリベラル、およびリバタリアンの道徳マトリックスの部分が、アメリカの現状を見るうえで非常にわかりやすく、役に立つ。やや、粗いかなという印象がないわけではないが、混迷だの分断だのというキーワードに踊らされる前に、なぜ「左」「右」に属する人たちが、自分たちの正しさを強固に主張したがるのが、おぼろげながらわかってくる。「左」、「右」を理解するのに役立つ1冊である。

#書評 #アメリカ大統領選 #道徳心理学 #左右