見出し画像

書評 クロード・シモン フランドルへの道

ノーベル文学賞受賞者による作品で、翻訳は平岡篤頼。1960年代のフランスの「ヌーヴォーロマン」と呼ばれたこれまの枠組みにはなかった小説のうねりのなかから出てきた作品の1つである。

主人公の戦場での体験が小説の柱だが、時間としては一夜にすぎないなかに、さまざまなエピソードが盛り込まれて、次から次へと場面が変わっていくのが圧巻。しかも、読点が続き、人によっては読むことを途中で放棄してしまうのでは、という内容である。日本においては、読点が続く小説と言えば、金井美恵子が想起されるが、彼女はシモンの影響を受けているようだ。他方、翻訳の平岡はあとがきで、シモンの作品を翻訳したことについて、あとがきで「歯ごたえのある仕事を与えられたのは翻訳者冥利につきるといった気持ち」と記している。そして、シモンの作品を「知的遊びとか形式主義と断じるのは早計で、むしろ作品の内容そのものが、こうしてはてしない模索と問いかけの文体を生んだといっていい」と評している。

約300ページにわたる内容だが、俗にいう前衛的な取り組みに挑もうとした作品に時に触れてみるのは、決して悪くはない。

#書評 #フランス文学 #ヌーヴォーロマン #クロード・シモン