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【掌編小説】 のあ

最近
眠れない日が 
続いてる

わたしが
何に喜び

何を悲しみ

どんなことに
こころ動かされるのかを

あなたは
知っている?

付き合って
一年以上たつのに

まだ
お互いのこと
知らない事ばかり

わたしのこと
どう思ってる?

お互い
結婚も
意識する
年齢だが

核心に
触れる事なく

なぁなぁな
関係が続いている

付き合い始めた頃の
何でも楽しかった
新鮮さや
少しのぎこちなさは
もうないけど

会えない時に
すごく会いたくなって
胸がギュッてなるような
切なさが
増えてきているのは
わたしだけなのだろうか?

わたしって
こんなに
恋愛体質だったっけ?

自分でも
首を傾げたくなるくらいだ

感情を
可愛らしく
表現できるタイプでは
ないから

気持ちだけが
空回りして
彼には
伝わってないのかもしれない

結婚を
迫って
距離を置かれてしまうのも
怖い

年をとるにつれ
本音を
ぶつけられなく
なってしまうのは
なぜなんだろう

ただ
そばにいて
何をしても
しなくても
一緒にいれるだけで
いいと思えるのに

結婚
という
wordが
それを難しくさせる

好きだけで
突っ走れるほど
若くもないし

答えが
出ないまま
思いが
重くなっていく

久しぶりに
会う彼の
匂いに
心が落ち着く

やっぱり
好きだなって

抱かれて
繋がっていると
泣けるほど
愛しくなる

頭でいろいろ考えても

それを
一瞬でひっくり返すほどに
感情は激しく
動く

『なんで泣いてるの?』
彼に言われるまで
涙が流れてるのに
気づかなかった

『わかんない…
これから先も
ずっと一緒に
いれるのかなって』

頭を優しく
なでながら
『大丈夫
ちゃんと考えてる
大切に思ってるよ』

その言葉を
聞いたと同時に
もう涙が溢れて止まらない

男の人の前で
泣いたことなどない

ましてや
こんなに号泣するなんて

こんな
人には見せてこなかった弱さを
さらけ出せるのも

涙で
ぐちゃぐちゃに
崩れた
メイクにも

赤くなった
目や
鼻水で
ひどい顔してるだろう
わたしを

優しく
抱きしめてくれる人は
彼しかいないんだろうな

そう思えたら
結婚とか将来とか

なんだか
どうでもいいことにさえ
思えてくる

窓から差し込む光のように
わたしの心を
柔らかく温めてくれる

この瞬間が
少しでも
永く
続きますように

今夜は
彼の腕の中で
安心して
眠れそうな気がする



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