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Gと帝王切開前夜と白米

長いようで短かった妊娠期間もとうとう終わり、明日いよいよ我が子に会える。頑なに逆子から治ることのなかった我が子よ。
君のおかげで母は腹を切る。

今日は朝から入院して、色々と説明を受け、あとはのんびり過ごした。誰かの赤ちゃんの声がどこかから聞こえて和む。

大きなお腹のまま寝転がる最後の日。仰向けだとお腹が重くて苦しいので、横を向いて寝る。
ずーっと、赤ちゃんと二人の身体だったから、明日から自分一人の身体になるなんて、自由に動いていいなんて、(実際には麻酔や痛みですぐ動けないのだが)なんだか不思議だ。

帝王切開前前夜

家で過ごす最後の日となった昨日は「楽しかった夫との二人暮らしも終わりか、、、」などと2年以上に渡る様々な思い出に浸りかけていたのだけど、夜中に部屋の奥の暗がりに蠢く黒い影を発見して状況は一変した。

やっぱり、網戸とはいえ窓を開けっぱなしにしておくと入ってきてしまうものですね…

幸い、退治をお願いできる夫が仕事から帰ってくる1時間前くらいだったので、取り敢えず夫にLINEでSOSを送った後、該当の部屋を締め切っててゴキブリムエンダーを5回くらいプッシュ。うん、取り敢えずお風呂入るか。

お風呂から上がると帰り道の夫から「えー倒しといて〜」と無慈悲なLINEで送られていた。前回、同じ虫が出た時にもドアを閉めて放置していたら「せめて殺して動きを封じてほしい」と言われたのだった。

「まじ無理」と思ったけど、これから母になるにあたって虫と闘う能力も必要かと思い直した。意を決してもう一度ドアを開けると、、、、い、いない、、、、

やっぱりあの影は黒い虫だったんだ、、、、

夫が帰ってきたら「ごめん、お風呂入ってたらいなくなってた(てへぺろ)」って言おう。きっと探せばすぐ見つか

ぎゃーーーーーーーーーーーっ

ドアを開けた私の足元で、ひっくり返っておりました。

私は1人で叫びながら妊婦とは思えないスピードで洗面所まで後退した。うん、取り敢えず髪を乾かそう。

とかなんとか言っているうちに夫が帰ってきた。部屋のドアを開けて「おーいるいる」とゴキジェットをプシューっとかける。(我が家には様々な虫対策スプレーが常備されている)

ムエンダーによって瀕死状態にはなっていた様子。トドメはさせなかったけど動きは封じた私のファインプレーを褒めてほしい。

夫は「ムエンダー効くんだね」と嬉しそうに話していた。私の武勇には言及なし。

そんな夫はLINEを見て車を飛ばして帰ってきてくれたらしい…安全運転は心がけてほしいが、なんだかんだ夫ラブである。

ベッドでこちらに背を向けて寝る夫の背中を見ながら、「こうやってゆっくり一緒に寝るのもしばらくはできないだろうな」とちょっとだけ感傷に浸ることはできた。

帝王切開前夜

話はずれたが、今日は入院日。帝王切開前夜。

夫との二人暮らしを振り返った後は、妊娠生活に思いを巡らせてみる。

満員電車では必死にお腹を庇ったし、目の前の人にタバコを吸われそうになった時は「やめてください」って言ったし、頑張りすぎないで休んだりサボることも自分に許した。

出生前診断をするか迷った時も、もし重度の障害が見つかって中絶したらと頭をよぎった瞬間涙が出てきた。それが答えだと思った。無責任と言われるかもしれないけど、私はこの子の心臓を止めることはできない。診断は受けなかった。

お腹に宿すことで女性は母性を育むというけれど、そういった自分の中から湧き上がる衝動のひとつひとつが母性ってものだったのかな。

一方で、正直自分より大切と思える生命がこの世に誕生するとはまだ信じることができない。
赤ちゃんはお腹の中でうにょうにょ動いて、私とは別の意思があるようだけど、まだ私と一心同体で身体の一部という感覚が強い。私の身体を二人で共有してる感じ。

帝王切開前最後の晩餐。ここから明日まで絶食。

白米多めの病院食をもりもり食べながら、赤ちゃんと一緒に食べる最後の食事だなと思った。

お魚も野菜も、意外とこんな少なくていいんだな。逆に炭水化物は多め。
我が家はおかず多すぎてたのかも。

今まで私と食べたご飯、美味しかったかい?
後半は甘いもの食べすぎちゃってごめんね。

明日、私から分離されて世界に解き放たれる小さな娘。
この子はどんな人生を歩むんだろう。仲良くなれるのかな。

楽しみ半分、緊張半分。

十月十日、自分じゃない生命体と暮らした自分にお疲れ様と言ってあげたい。
そして明日からほんとのほんとにお母さん。

どんな自分になるのか、どんな感情が湧き上がるのか、見当もつかない。

まだまだ虫を倒す強さもないけど、おかずも作りすぎちゃう母だけど、これからどうぞよろしくね。

サムネは、こっちを見てにっこりしているように見える赤ちゃん。

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