でぃすぺるが好きすぎる!

前回の読書感想文から大分間が空いているけれど、『でぃすぺる』好きすぎて感想を書きたくなったので書きます。


僕みたいな何でもない人間が感想をネットに放流したとて何がどうなるというものも無いと思うけれど、もしかしたら。
もしかしたらこういう感想の一つ一つが作用して、ゆくゆくはアニメ化やらなんやらに繋がったりしないかなという気持ちから書くことを決めた。やらないよりはやる方がいいはず。

それと作品の良さを語りたいのに語り合う友達がいないってのもある。
ていうかこれが一番だな。



ネタバレはなるべくしないように配慮はしているつもりだけれど、つらつらと書いているのでネタバレあるかも。
まあどの程度がネタバレになるかは見る人によって違うと思うのでちょっとのネタバレも嫌な人は自衛をよろしくお願いします。



まずは著者である今村昌弘先生について軽く。
今村昌弘先生といえば剣崎比留子シリーズが有名かな。
デビュー作の『屍人荘の殺人』は映画化もしている。

映画の方は比留子さんのキャラクター観が解釈違いで観てないから分からないけれど、原作は超面白いです。
(宣伝用の映像を観て判断しただけなので、実際観てみたら好きだったりするかも)



屍人荘はまたの機会にして『でぃすぺる』の簡単なあらすじを。


『オカルト好きのユースケ、優等生のサツキ、転校生のミナの小学六年生三人組が町の七不思議を解き明かそうとする。
その七不思議にはサツキの従姉、マリ姉の死の謎が隠されていて……』


というもの。(伝わるか?)


これは余談だけれど僕は絶対あらすじを読んでから本を読むが、信じられないことにあらすじすら知りたくない人もいることを最近知った。
(ていうか弟がそうだった)

あらすじ読まないとどんな本か分からないじゃんと思うが余計な情報を入れずに驚きたいらしい。
うーん、本を読むのも十人十色だね。



話を戻して次はキャラクターについて。



三人組唯一の男子であるユースケは小学生ならではの鬱屈を抱えている。

学校の外で女子と一緒にいる所を同級生に見つかるのではないかと気にしたり、子供だから大人はまともに取り合ってはくれないんじゃないかと弱気になったりと、それが要所要所に見て取れる。

男性なら誰しもが経験してる(はず)と思っているんだけれど、女子と話してる所、女子遊んでいる所を見られるのが恥ずかしいって気持ち、あったよね?

そんな心理描写や情景描写がとてもリアルで、ユースケについ幼い自分を重ねてしまった。
あー、あるあるって感じで。



優等生のサツキは委員長を務めていたしっかり者。気が強く、ユースケとの推理勝負ではそれが顕著に見られる。
でも真面目一辺倒というわけではなく、謎の為なら心霊スポットに無断で侵入する事だって出来る。
それは従姉の不審死に対して向き合う心の強さから来るものであり、そこには誠実さを読み取れる。

親の教育方針でユースケ達とは別の中学校へ行くことが決まっていたりと彼女もまたユースケとは別種の鬱屈を抱えている。



転校生のミナはクラス内でも浮いている少女。
自己主張が控えめなおとなしい性格。
何を考えているのかよく分からないとクラスメイトにも噂されているが、根暗とか卑屈であるとかは無く、自分の意見はしっかりと持っている。

ユースケとサツキの推理勝負では中立の立場から両者の推理をジャッジする立場として活躍する。
彼女にも色々と家庭環境に難を抱えているが、ネタバレになるので此処では割愛。


と皆とても魅力的だ。この三人の掛け合いが読んでいて楽しい。
そして物語が進むにつれて三人とも精神的に成長していくのも良い。

他にも紹介したいキャラクターがいるがこれも割愛する。



次にストーリーについて。

小学生が七不思議を解明するというシンプルな道筋でありながらとても読み応えがある。

七不思議には謎が隠されていてそれらは当然全体を通して読んでも素晴らしいのだけれど、七不思議を個々の単話として読んでも出来が良い。

僕は怪談をよく聴くけれど、ネットに転がっている様なものでは比較にならない程ちゃんと怖い。

そこから本作を生半可な作品にはしないという今村先生の気概をひしひしと感じることが出来る。


新たな謎が次々と生まれ、その度に推理の内容も精査され変化していくため、多重推理ものを読んでいる様な感覚になれる。



最後に作中の大人がムカつくー!となるという感想を。
これが一番書きたかったことかもしれない。


『でぃすぺる』は子供vs七不思議でありながら、同時に子供vs大人を描いた作品でもある。(と思う)

作中に登場する大人は子供であるユースケ達を軽んじる。
ちゃんとしなさい、しっかりしなさいと一方的に言い聞かせる。本作にはそんな描写が多く見られる。
これは今村先生による意図的なものだと思う。


作中にてユースケが教師に対して「卑怯者」と罵るシーンがある。
これはまさにその通りだと思う。

大人はその立場を利用して子供を上手く丸め込もうとする。
子供の言うことにまともに取り合わない。
読んでいて大人って最悪だわ。とユースケ達に共感しながら読んでいた。


『でぃすぺる』はフィクションなので実際の所、子供がユースケ達程思慮深いかは分からないけれど子供も同じ人間だ。
みくびった見方は良くない。

そりゃまあ危ないことをしているのなら注意は必要かもしれないけれど、怒ったり、注意したりする際にリスペクトだけは忘れてはいけない。
(まあこれは大人子供関係なく誰に対してもそう)

これは読んでいて教訓にしようと、そう思いました。



他にも書きたいことはあるがこのくらいで。




長々と書いたがとにかくおすすめ。
これぞ今村昌弘先生!と言えるような、そんな作品です。

驚く展開と真相が待ち受けている。
僕はというとまんまと騙された。

『でぃすぺる』を読了済みの人がこの感想日記を読んだら「こいつちゃんと読んだか?」と思うかもしれない。
または読んでない人がこの感想を読んだ後に『でぃすぺる』読んだとしても抱くのはやはり「こいつちゃんと読んだか?」かもしれない。 

でもあえてそんな感想日記にしてみた。
この感想日記自体がミスリードになっているというわけです。



まあ騙されやすい僕のことは置いておいて、オカルトが好きでかつミステリーが好きなら本作品も絶対に好きなはず。

『でぃすぺる』の魅力が僕の拙い文章で伝わるのかは分からないけれど。
「とにかく面白いんだ!」と言いたいことだけ分かってもらえれば僕は満足です。
みんなも読もう。


今村先生。剣崎比留子シリーズの続編の方も何卒よろしくお願いします。


おわり。

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