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離婚した

離婚した。

そもそも、自分が結婚すると思わなかったし、離婚するとも思わなかった。こんなはずじゃなかった人生のつもりて生きてたけど、さらに「まじかこんなの」がミルフィーユされた感じ。

職場の女の子に、「なんで離婚したんですか?」とまじまじと聞かれて、「なんだっけな」と戸惑った。

私は中学生の頃から自分の気持ちをネットに落としてきた。文章にしていた。

同じように、数年前までノートでも自分のことを書いてきた。

結婚していた頃のノートを読み返せない。

例えば、香水。あの人と買った。
例えば、洋服。あの人が何かのご機嫌取りで買ってきて、結局寸法が合わなくて裾を直した。
例えば、化粧品。あの人と挙げた結婚式でつけたデパコスのリップ。

結婚して離婚した。

およそ一年の間離婚したいと言われ続け、早く出ていってくれと言われたのち
出て行ったら出て行ったで、戻ってこいと言われ続け、なんとか離婚届を出したのが昨年末頃。

これでよかったのかわからなくなる日々。

全ての持ち物にあの人がいる。10年間一緒にいたあの人の顔や匂いや身体の形がある。

あの人に言われた全てを許せない。許せないから、ずっと怒っている。

心療内科に通っている。心臓がバクバクして毎日死にそうだ。

あの人が欲しいんじゃなくて、あの頃の、優しかった頃のあの人が欲しいだけ、

それは行き過ぎたわがままだって言うこと。

妻として見れなくなったと言われた。

好きで結婚した。観覧車。結婚してと言われた。いいよって言った。だって私は彼のことしか知らなかった。

何か違和感があってもまあそう言うものかと思ってた。

離婚して欲しいと言われ続けた私は、なぜか彼に引き止められながら、ファミマのコーヒーを飲んで、夜の市役所に行った。

これから出すのは離婚届。夜の空気。見慣れた街。彼のために住んだ街。

窓口の男性はやけに慣れた手つきで私に説明をする。

「女の人の方が大変だから」と

夜の空気。冷たい風。一緒に行った定食屋。一緒に行ったブックオフ。

何度も待ち合わせをしたその駅で、私は彼の頭を撫でながら、「頑張ってね」って言った。

声もなく、目も合わさず、ただまっすぐに涙を堪える元夫の顔は、置いて行かれた子供のようで、

あの顔がずっと目の裏に焦げ付いていて、何か悪いことをしたんじゃないかって気持ちになる。

ずっとずっと離婚したいと言われ続け、生活費ももらえず、レスで、キスをすればレイプだと言った元夫に対して。

罪悪感を覚えては、必要ないと振り切っている。

呪いのように彼が身体中に住み着いて仕方がない。

割り切ろうとしてもできない。

彼と一緒にいた時間は、私が生きた時間に違いないのだから。

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