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離婚した③

今日、高校時の友達に会った。

子供を7月に産んだという。生後2ヶ月のその子は私の姉の子よりずっと大きかった。
友達はしばらく妊娠に気づかず、妊娠中も私と会ってはご飯を食べたり岩盤浴までしていた。

5月に会って「すぐに産む!」と笑顔で言われた時は、本当、笑ったものだ・

生理が全然来なくておかしいな、と思っていた頃、妊娠に気がついたという。高校時代、私がギターを弾いて歌っていた横でベースを弾いていた、マキシマムザホルモンが好きな可愛い友達。

今にもハイハイでもしそうなサイズのその子は、本当に大きくて丸くて、吊り目の友達には全然似てない瞳をしていた。まあるい瞳が印象的な、お父さん似なのだろう。

お父さんも高校時代の同級生なので知り合いではあるけれど、どこか見知らぬその顔がじっと私を見ると、なんだか照れ臭くなった。

本当は子供が欲しかったと、元夫に言われたことを思い出す。

離婚したい、家を出て行ってくれと言った夫は、言われた通り家を出て行った私の仕事帰り、その駅前で結婚指輪を持って、あの日高屋の前で、本当は子供が欲しかったんだと言った。

子供が欲しいって、私ずっと言ってたけどな。
なんで、私がいらないって言ってたみたいに、そんなことを言うんだろう。

混乱したのを覚えている。

そんな元夫は最近彼女ができたらしい。年上の外国人らしい。
私と結婚生活を送った部屋に、今、一緒にいるらしい。

スイッチの箱を捨てていいかどうか聞かれた。お金がない時、どうしてもスプラトゥーン2がしたくて悔しくてたまらなかった、そんなあとにヤマダで買った念願のスイッチ。

捨てていいよと返した。それから「勃ったの?!」と聞いてしまった。

どうやら勃ったらしい。

私じゃなきゃ勃たないと言っていた、あの10年の夫は死んだのか。

それもそうか、離婚したいと言ってからずっとレスだったし。

そんな報告を旧友にしたら、らしくないことを言ったねと笑ってくれた。

それもそうだね、私は元夫と行為をするまで処女だった。

私じゃなきゃ勃たないわきゃない。それがある限り、立つもんは立ちますよね。

悲しさはどの方角から来るのだろう、と言う人がいるけれど
悲しさというものはきっと矢のようなものではなくて
深海の水圧のようなものだから、身体中を締め付けてやまないのだと思う。

私が離婚したと聞いて、喜ぶ人はいっぱいいるだろうなと思う。
敵を作るタイプじゃないけれど、あなたが羨ましいと言われることはよくあったから。

全然羨ましくない私を知って嬉しくて漏らしておいてほしい。

情けないと思うことはあるけれど、昔からのことだからしょうがない。

悲しさはどの方角から来るのでしょう。

そうですね、プライドを捨てた時、晴れ渡る鋭利さが、いつもあなたや私を狙っていますよ。

仕事を教えてくれた人が言っていた。誇りを持ちなさいと。

私はなんだかひどく感銘を受けた。誇りを持とうと思った。
それ以上でも以下でもなく。どうしようもなく誰かと比べる私ではなく。

私が選んだことだから、どんだけ血みどろになっても、裸足でひたすらに走っていく。

それが悲しさと別れるための全速力だと思った。

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