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今までも、これからも(舞台ハリー・ポッターと呪いの子)

舞台 ハリー・ポッターと呪いの子 見てきた。感想。ネタバレ多少含みます。


1、舞台としてのハリーポッター

私は舞台というものに今回初めて触れた。なので一般的な舞台がどのようなものか分からないし比較できないが、舞台ハリーポッターと呪いの子の演出はきっとここでしか見れないものだらけなんだろうなと思った。演出のひとつひとつ物語からそのまま出てきたみたいで、ずっとワクワクして興奮した。トランクはホグワーク特急の座席に早変わりするし、魔法の階段は縦横無尽に方向転換するし、ディメンターは目の前まで襲いかかってくるし…。映画とは違う、目の前で今まさに起こる魔法の連続だった。そこに力強い俳優陣の演技が加わり(生の声のパワーのすごいこと!!)、あっという間の4時間だった。今ここに魔法があると信じさせてくれる舞台装置と演出と演技に感動した。映画とは違う、舞台でしか味わえない体験だったと思う。ハリポタオタクはみんな行くべき。藤田悠さんのアルバスは小説で読んだアルバスのイメージまんまだった。若者らしいというか、ちょっとドライな感じ。でも不器用で向こう見ずで、どこか子どものころのハリーに似ている。あとエハラマサヒロさんのロンがロンすぎ。一番びっくりしたのは美山加恋さんの嘆きのマートル!すごい!何あれ!?映画からそのまま出てきたのか!?と思うくらいにマートルのまんま。後から調べて宇佐美いちかちゃんの声優と知り衝撃だった。(宇佐美いちかのことがとても、とても好きなので…。)本当にどの役者さんもみんなパワーがあって、小説との相違がない。すごいなあ。



2、ドラコとスコーピウス

劇中にドラコが、アストリアがスコーピウスを産んだ理由として「なぜならドラコ・マルフォイはずっと孤独だったから」と言うシーンがある。(台詞はうろ覚え)ここで謎プリあたりのボロボロのドラコを思い出して心臓が苦しくなった。家族はいなかったけど、愛と友情に恵まれたハリーと、家族はいたけど、自他共に愛と友情を支配と履き違えてしまったドラコとの対比が痛々しくて、辛かった。ドラコはハリーポッターシリーズを通して憎まれ役のライバルで、時には許せないような行為もしてきた。それも何度も。それでも、そこにあったのはドラコなりの「僕を見て」だったし、そういう点でドラコとハリーはとても近い存在だよなと改めて感じた。そんなドラコが家庭を築き、ハリーに会釈をしたシーンで終わる死の秘宝のラストに胸を熱くしたことも覚えている。だからこそ、今回の舞台でドラコがいかに孤独だったのか、そしてどれだけアストリアとスコーピウスに救われているのかが伝わってきてぼろぼろ泣いてしまった。スコーピウスとドラコが再会した際、「僕らもハグしとく?」と照れくさそうに言うスコーピウスと、それに応えてぎこちないハグをするドラコ。スコーピウスの話ぶりもあって会場は笑い声が多かったが、私はここで本当に…ドラコ…良かったね…と…。死の秘宝でナルシッサ、ルシウル、ドラコの三人が手を繋いでホグワークから逃げ出すシーンはとても印象的だ。残虐で冷淡に見えるマルフォイ家も大切な人を守りたいと強く思う、とても不器用で、そして温かい人間だと思う。だからこそ、ドラコの歪な幼少期の穴は大きいし、大人になってもその孤独を埋めきれていなかったのだろう。そんなドラコが、「たった一人の家族だ」「スコーピウスは私の息子だ」と憚ることなく言い、ぎこちなく、けれども力強くスコーピウスを抱きしめる姿を見て、本当によかったと強く思った。ドラコがやっと家族と一緒に幸せになるために、前を向いて進めるようになったことが、私はどうしようもなく嬉しかった。



3、ハリーポッターという物語

小学三年生のクリスマスプレゼントが『ハリーポッターと賢者の石』だった。その時、妹のプレゼントは当時人気だったアクアビーズアートだった。妹がピンクと白色の可愛らしいパッケージに大喜びする隣で、私は、不気味な表紙(と当時は思っていた)を苦々しく見つめていた。鈍器か?というほどに分厚い本を手に、なんだこの落差は!と大泣きしたことを今でもよく覚えている。けれど、「でもきっと面白いんじゃない?サンタさんの選ぶ本はいつも面白かったでしょ」と、そう母に宥められしぶしぶ読み始めたハリーポッターという物語に、ハリーポッターの世界に、読み終わるころには夢中になっていた。それから新刊が出るたびに夜通し読み耽り、映画が公開するたびに公開初日に見に行き、USJでホグズミードに行った時には感極まって号泣した。ハリーポッターは私をずっとずっと夢中にさせてくれる作品だった。呪いの子が出版された時も、小学生の頃のハリーとロンとハーマイオニーと冒険した少女の私が久しぶりに顔を出して、無我夢中になって読んだ。もう私は少女じゃないし、誕生日にホグワーツからの手紙を待つこともなくなったけれど、こうやってハリーポッターシリーズに大人になってからも触れていることを本当に本当に幸福に思う。何かを好きになることってすごいことだけど、ずっと好きでいさせてくれることってもっとすごいことだと思う。いろんな作品に触れていろんな好きができたけど、やっぱりハリーポッターって私の特別だ。私は確かにハリーと共に冒険をしてきたのだ。そして今日、アルバスとスコーピウスと一緒にまた新しい冒険ができたことを誇りに思う。「僕は一人で戦ったことは一度もない。今までも、これからも!」と叫ぶハリーの言葉は多分小学生の私にも届いたと思う。ハリーポッターシリーズは大好きな物語だ。今までも、これからも。

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