歪で不気味でありふれた愛(母性)

映画 母性見た。湊かなえっぽさも、逆にぽくなさもあるなーって感じだった。視点が切り替わりまくるところはらしくて好きです。

1、ラストシーンの真意
なんで最後ルミ子はりっちゃんの部屋に入ったのか。
自分の息子のことも忘れた田所母からの「あなたは自慢の娘」を貰って、お義母さんに愛される義娘の私はクリアしたから、りっちゃんの部屋に入る=私がお義母さんの娘という表現かなと思ったけどちょっと腑に落ちない。
そもそも、妊娠した娘に「怖がらなくていいのよ…」と伝えるのも今までの行為と一貫性がない。ルミ子は「母のようになりたかった」のではなく「母に愛される娘の自分でいたかった」のだ。だから自分が妊娠した時に「ヤバイ!私は娘なのに!?!?」って怖くなったわけだし。でもこの「ヤバイ!おばあちゃんになっちゃうんだが!?」イベント発生時に、母と同じ行動をした真意が分からない。褒めてもらえる人がいない今、もうやることは祖母としての母の模倣しかなかったのかな…と思ったけど。…ルミ子この先もしかして、自殺しませんか?

2、無関係で無関係でない女子高生
そもそも自殺した女子高生は結局何だったの?
叙述トリック的な仕掛けかと思ったけど、自殺した女子高生=清佳でないことは相当序盤に感づくことだし、かといってその(実際に死んだ)女子高生について掘り下げられるわけでもないやんので一体なんだったの!?となった。そんな中で唯一女子高生と清佳に共通する言葉がある。それが「愛能う限り」だ。できる限り愛するって、一見すごく愛情深い言葉に思えるけど、これ実はすごく幼い考え方なんじゃないかな。子どものためにとか、たくさんのとかではなく、自分ができる限りって、それで子どもが満たされなくても自分はやるだけやったって肯定できちゃうわけだし、子育てとしては考えが幼すぎないか?と。結局自分の独りよがりの子育てをしたルミ子の母は、ルミ子自身の意思を尊重することもせず、(そもそも考えが違うことに気付いていない)自分と同じ考えのルミ子を肯定して育ててしまった。ルミ子はそのせいで大人になれず、いつまでもママ見て!をする子どもだったわけだし。そしてそれはルミ子も同じで、全然清佳に愛情を注げていないのに、本人は「愛能う限り育てた娘」と思ってるの、怖すぎる〜!!!本当は首絞めてるのに抱き締めたって都合よく改ざんして、娘の意思はほっといて自分は「愛能う限り育てた」って誇らしい顔をしている。子育てを娘のためでなく、愛能う限り子育てした自分(褒められたい)のためのものにしているのが人間として愚かすぎ、グロすぎ。そしてこういう親は、ルミ子の母、ルミ子、だけでなく、物語冒頭で自殺した女子高生の母親も同じだと。毒親見本市すぎる。
これ「愛能う限り」って言って、愛を歪な形でしか注がなかった母親ってそこいらに普通に平然といるんだよっていう意味かなと。怖いね。

3、カメラワーク
垂直水平構図と額縁構図が好きなのは分かったけどどういう意図なのかなー。垂直水平構図は遊びがない清佳の内面性の描写?額縁構図はこれは深読みしすぎだと思うけど、額縁=子宮の中みたいなニュアンス?メタファーも考えられるかな〜と。りっちゃんの部屋に入るところが特にだけど、産道に自ら入るルミ子というモチーフも考えられるのかなと思った。

4、JUJU
え!?!?!?!?JUJU!?!?!?!?ど、どういうこと!?!?!?!?怖すぎる!!!!!となったエンドロール。なんでここで「みなさん、感動物語でしたね(^_^)」みたいな主題歌流せるの!?!?と衝撃でした。あれ見た人みんなどんな気持ちで聞いたのか気になる。この映画にこの主題歌をあてがうのが私は怖すぎ歪すぎグロすぎ趣味悪すぎでウケちゃった。いやそりゃ、清佳が好きな時に好きな場所で咲けたらいいなと思いますけど、あのラストでそんな希望的観測持てるのすごない!?というか、その主題だとしたら全然伝わってないよ!!!!と思った。グラスに串問題の時点で清佳はもう十分に歪んでるので…。

5、母性とは
作中で「母性とは先天的なものではなくて、だんだん身に付いていくもの。なのにみんな初めから備わっているものだって決めつけてくるから、そこを大袈裟な言葉で誤魔化すんじゃないですか?」というような話があった。その後に「女には二種類ある。母と娘。」「私はどっちなんだろう。」との清佳の呟き。分かってんじゃん、自分の母親が母になれずずっと娘だったってこと…。私は子どもが親に愛されたいと思う気持ちが先天的な、動物としての本能だと思います。赤子は自分で何もできないんだから、愛されないと生きていけないわけだし。で、それを見てかわいいなぁ愛しいなぁと思う積み重ねで母性が育つんじゃないだろうか。

 

面白かったけどまだ釈然としないというか考察しきれてないところがあるから原作読みたいな。

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