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秋刀魚

 ここ何日かでいっきに秋めいて、ナイアガラの滝のようにかいていた汗が華厳の滝程度になってきた。
華厳の滝でもすごい量だと思われるかもしれないが、ナイアガラの滝はレベルが違う。検索して写真を見比べて欲しい。
セミは路上に積み上がるように死んでいる。それに取って代わるように秋の虫の声が聞こえ出した。
そんな今日この頃サンマを食べました。
秋の刀の魚と書いてサンマ。刀とは名ばかりの30cmほどの大きさ、刀くらい大きければ食べ応えがあって良いのに、と思うほど美味しい。
彼女とスーパーに行った。夕飯の材料の買い出しである。
道中に何が食べたいか聞かれて、魚と答えたのだが、良い反応は帰ってこなかった。
魚というのはどうやら後始末や準備に手がかかるのだろうと、私はその受け答えから悟った。変なところで感受性が豊かなのがニシダ、そしてそこで意見を変えることもないのがニシダ。魚が良いと主張し続けて晩御飯を魚にしてもらった。
スーパーに入って魚の切り身なんかを眺めていると、その近くのコーナーにパックに入れられた秋刀魚が並んでいた。
彼女はどの秋刀魚が良いのか、一つずつパックを手に取って吟味していた。唇のあたりが黄色い方が良いとか目が濁っていないとか色々な検討材料があると私に教えてくれたのだが、死してなお美味いのか美味くないのか評価される理不尽をその身に受ける秋刀魚がどこか悲しい存在に思えてきた。

 秋刀魚を二尾買って帰り、家でいざ調理するというタイミングで秋刀魚はハラワタを取らずに食べられるという事実が不思議になってきた。
インターネットで何故なのか調べてみると秋刀魚には胃というものがないという事実を知った。
わたしはよくYouTubeで魚を捌く動画を見るのだが、鯛なんかであると胃から小さいイカや小魚がバンバン出てくる。かなり溶けてしまっているものは小型のプレデターのように見える。
秋刀魚にはそもそも胃がない。プランクトンと呼ばれるようなホコリのように小さい海中に漂う生き物を食べると数十分で排泄する。夜はプランクトンを食べないというストイックなモデルみたいな生活リズムらしく夜の間に獲った秋刀魚は内臓が空っぽなのだ。
儚い生き物だ。胃がないということは満腹感なんて感じないのかもしれない。最後の晩餐もない。内臓に何もない状態で網に捕まる。魚なんてセックスもしない。満腹もない。3大欲求なんて何も満たせない。と勝手に秋刀魚は睡眠なんてないと思っていたが、秋刀魚は寝てるらしい。明石家さんまさんのイメージで寝てないと思ったが泳ぎながら仲間と交代で寝てるらしい。勝手に秋刀魚の辛さのハードルを上げていただけでした。申し訳ありませんでした。

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